43 成長
アジトに帰った僕ら。メンバー全員が落ち込んだ表情で、誰もが一言も言葉を発しない。圧倒的力、努力が足りない…そんな次元の話ではない。人間が到達できない場所。
「無理だよ、こんなの。私達がいくら努力しても届かない。これが現実だよ。人間の勝てる相手じゃない。私、神殺し抜ける。」
一人の女子メンバーが泣きながら語り、脱退の意思を告げる。
「在りし本質は道となる。陽真がよく言ってた言葉だ。出会いや出来事は人の根本を作り、いずれ救い導くと。」
「泣いてる暇も絶望してる暇はねぇ、陽真が道を作ってくれたんだ。ここで我らが止まる時間はねぇ。私はしばらく一人で旅に出る。貴様らは歩みを止めるな。」
そう言ってボスは荷物を整え、一人でどこかへ行った。凪沙さんも一人でグリズリー師匠の所へ修行に行くと書き置きを残してアジトを抜けた。
それからみんなは死に物狂いで努力をした。しかし体が悲鳴を上げていた。輝さんが倒れ、サヤさん、傭推さん。次々に倒れていった。
僕達は人間なのだ無理をすれば体を壊すし病気にもなる。今までの修行もギリギリだったのだ。見るに見かねたハルさんが温泉に行かないかと提案をした。
みんな特に異論もなく運気アップの秘湯と呼ばれる山奥に向かった。山奥というだけあって木々が生い茂る獣道を進む。やがて硫黄の匂いと湯気の立ち込める秘湯に辿り着く。
「壁、脱衣場」
輝の言葉で温泉が二つに別れ、男子、と女子の更衣室が現れた。それぞれ裸になり温泉に浸かる。不思議なことに傷が治り疲れが吹き飛んだ。それに全身これまで感じたことのないほどの力が漲る。
「やっぱ温泉は良いな。疲れが吹き飛ぶぜ。ちょっと修行無茶し過ぎちまったな、大丈夫だと思ったんだけど。でもハル、サンキューな。助かったぜ。」
「可能と無理は違います。無理すると体に負担がかかるんです。もう無茶は止めて下さい。私は団員のみんなが無茶して傷つくのが見てられません。」
「わりーな、無理でも無茶でもしないと今は自分が許せないんだ。強くならなきゃいけないんだ。もう少し我慢してくれ。」
「…わかりました。サヤがそこまでの覚悟で言うのなら止めることは出来ません。今日は満月、ボスもこの月を見てるんですかね。」
「さあな、でも同じ月を見ているってのは風流で良いな。」
「そうですね。」
その頃男風呂の方では白馬は久しぶりに和やかな雰囲気に包まれていた。輝さんも傭推さんも元気になりお互いの筋肉を見せあって…白馬はちょっとブルーな気分になった。そしてアジトに帰って驚いたことに全員が治癒促進の能力を獲ていた。
それから半年が過ぎ、白馬は一人で神の先兵クラスなら倒せるようになった。ボスはまだ帰って来ていない。みんなが新たな能力や称号を獲て、更なる戦いが始まる。




