38 感謝
山梨県の青木ケ原樹海へ柘榴がゲートを開き移動する。
「ここが青木ケ原…何だか思っていたのと違って綺麗な所ですね。神秘的と言うか」
「黒水、あんまりうろつくなよ。霧の迷宮にハマるぞ」
「この辺りは飢餓陽真さんの能力により迷いの森と化しています。一度迷うと簡単には出れませんよ」
「陽真さんって誰ですか?」
「陽真さんは元世界最強と呼ばれてましたが、今は世捨て人として青木ケ原の樹海を仕切っています」
「協力者みたいな関係性だと考えていただいて大丈夫ですよ」
ハルさんは優しく笑うと白馬が霧に迷わないように先導してくれた。
しばらく歩くと武家屋敷のような広い平屋が一軒。
玄関の呼び鈴を鳴らすと見るからにオタクと呼ぶに相応しい、痛シャツを着たふくよかな少年が引き戸を開ける。
「ど…どちら様ですか?」
「この方が陽真さんですか?」
「ちげーよ。陽真の奴、また拾ったのか」
「白馬さんも知っての通り、青木ケ原は自殺の名所と呼ばれています。」
「しかし陽真さんは自殺目的で来られた方を能力で招き入れ、心身を鍛えて諦めるのを諦めさせる変わった方なんですよ」
「も…もしかして神殺し御一行様ですか?」
「はい、二週間ほどお邪魔致します。」
「僕…僕の名前は梶原迅と申します。し…師匠を呼んできます」
しばらくすると和服を着崩した穏やかな表情の青年が日舞のような軽やかな足取りで僕らの直ぐ目の前に来ると華麗に会釈をした。
「初めましての子がいるね。私の名前は飢餓陽真、よろしくね。」
「僕の名前は黒水白馬です。こちらこそよろしくお願いします」
「白馬君か。そちらのお嬢さんもよろしくね」
陽真は片手を白馬に差し出し、もう片手を静香に差し出す。
「よろしくっす。柳原静香って言います」
握手をして、陽真さんは僕達に部屋を案内をしてくれた。
「空いてる部屋なら好きに使って下さい、それと今から畑の手伝いをお願いします。」
陽真さんはそう言って畑の方へ行った。
「どうして修行ではなく、畑仕事何ですか?畑仕事何てしてる場合じゃないですよね?」
「白馬君。働かざる者食うべからず、命を学ぶそれもまた修行だよ」
傭推さんはそう言って収穫の手伝いを始めた。
「若い子が畑を手伝ってくれるのは嬉しいよ。若い子からしたら、この場所は退屈な場所だと思う」
「でもね、僕は便利て言葉が嫌いでね。結局は人間が楽する為のプロセスにすぎない。」
「便利は進化してるが、それを使う人間は退化してるように感じるんだ。」
「苦労するからこその感動や喜び、僕はそれを皆にわかってほしい。」
「そうだ、今日は腕によりをかけて晩御飯を作るから期待しててね」
陽真さんは優しく笑うと
「ありがとう、美味しく食べるからね」
と野菜に感謝の言葉を述べた。




