旦那編 marito 42:希望を越えて Oltre alla speranza
前回: “希望の町„ から次の街へ旅立つ。
朝、目覚めると……何だか暖かい。
“なー„ 何だか鳴いてる声が聞こえる。
お腹の辺りがモゾモゾするので、捕まえると、猫が紛れ込んでいた。
全体が薄茶の短い毛並で黒い斑点がある。尻尾の先が黒と薄茶の段々、これは可愛い。
大きさは四十センチくらい。子猫にしては大きいな。
しようがないので、テントから這いずり出て猫を抱き上げる。
パートナーに出来るのかな。元気に育ってくれるなら、これから先を思えば居ても悪くないと思う。
みんな起き出して来ている。朝食の準備中、ちょうど良かった。
「えっと、この猫誰か知らない?」
“なー„ 大人しく抱かれたまま鳴いている。
「まぁー可愛いネコちゃん、よしよし」
エドが頭を撫でると、目を細めて喜んでる。懐いたようだ。
「良く分からんが、猫にしては少し大きすぎるのぅ」
はるっちが覗き込むと不思議そうに見返す。
「確かに手足もがっちりしてますし、猫ではありませんな」ポロロン♪
「ワイには大型猫科の子供に見えるわ」
“なー„ 身体を動かすから、地面に降ろすとその辺で遊び始めた。
「あの……ことねさん」
サブの幻影がおずおずと話し掛けて来る。
「何や? 腕輪はん、どうかしたんか?」
「なーに?」
「あの……ことねさんの幻影で猫と話せません?」
「えっ? そんなことできるん?」
「みんな育ってますし、十分出来ると思います」
幻影を呼び出す。
何だか少し大きくなっているような気がする。
小鳥さん、色綺麗なんだよね。
頭が黒くて、頬の辺りとお腹が白くて、お腹の中心線に幅広の黒い線が入ってる。背中は前側が緑っぽい羽で後ろ側青っぽい羽になっている。
「ことね。その鳥はシジュウカラじゃぞ」
「え、これシジュウカラなの?」
「ことねは、動物について知識ないのぅ。少し学んだ方がいいぞ」
深く反省、シジュウカラに向かって話すと言葉にはならないけど、なんとなく意志は伝わる。
とても面倒だったけど、小鳥さんを介して猫さんと話してみる。
「どうじゃった?」
はるっちの質問に応える。みんなも聞きたいだろうしね。
「えっとね。何だか家族と逸れたらしい。おかあさんと兄弟と一緒に居たんだけど、遊んでいたら誰も居なくなったって言ってる。昨夜は寂しくなって、わたしのテントに潜りこんだみたい」
「ことねさん、動物に懐かれてるわ~。いいじゃない、連れて行きましょうよ」
エドはいつも優しいね。
「そうしようかな」
一緒に来るかい? って聞いてみたら、“なー„ と嬉しそうに返された。
「付いて来るって言ってる」
「ほほぅ、新しいパートナーですな」ポロロン♪
「パートナーってどこか違うの?」
「パートナーとはのぅ、キャラクタと同じ扱いじゃ。装備のように生命の腕輪には入らない。いつも傍に居る特別なキャラクタじゃの。中には騎乗できるものもあるらしい。この子はどうじゃろうか?」
「大きくなったら乗せてくれるかもね」
生命の腕輪で確認したら、パートナー登録がされていた。“一緒に来る„ って言った時点でパートナーとして認められたのかも
「名前はどうしようか?」
「ことねはんのパートナーなんやから、ことねはんが決めればいいと思うわ」
「そうよ。自分のパートナーだから責任持って付けないと」
「ふむぅ……斑点があるから、“まだら„ とか」
「止めておいた方がいいぞ。だいたい成長すると斑点が消えたりするからのぅ」
“な~„ 子猫も不満そうだ。
うぅむ、悩むなぁ。
「ベスにしようか? どうかな?」
“なー!„ 今度は嬉しそうに鳴く。
「決まりやな。腕輪はん、どうやろか?」
「いい名前だと思います。ベスさんよろしくね」
“なー!„
「叙事詩に華が添えられますな」ポロロン♪
仲間がひとつ増えて、賑やかになったパーティで北へ向かう。
森を抜けると開けた草原に出る。
モンスターもほとんど出現せずに快適な旅だ。
所々に休憩所があり、安心して休める。
しばらくじっとしていると小鳥たちが近くに寄って来くるので、パン屑をあげると嬉しそうに啄む。
ベス、鳥を追い回しちゃダメだよ。
野宿も問題ない。アイテム類を補給できる簡易宿泊所みたいな所もあった。
道が石畳に変わる。道幅は四メートルくらいであまり変わらないが、両側は背の高い松の木になる。
何だか日本で見る松とは違って、七メートル以上あるだろうか、下の方には枝がなく上の方だけ傘のように枝が伸び、葉がもこもこと付いている。
松毬が両手一杯くらいの大きさがある。こんな松は現実でもあるんだろうな。
そして、石畳の道が続く先に、かなり大きな街が見えて来る。
建国2年唱月28日(28/Coro/Auc.02)
目的地 “冒険者の集う街„ に着く。
次回 「奥編 40:魔女に捧ぐ Un dedica a strega」




