奥編 moglie 35:火の山の魔女(その3)Strega in vulcano:terzo
前回:サラマンドラが現れた。
サラマンドラはのそりとこちらに向かって来る。
火精霊は見物かぃ? と思ったら、みんな同じ意見らしい。
「精霊さまは、ご見学か? 結構な身分だな」
「まぁ、そう言うな。ご案内役は気楽な仕事なのさ。下手に支援とかするなら、そちらを先に葬ることになるがな」
サヤもゲッツも、こわっ!
「ご心配には及びません。案内以外の役目は申し付かっておりません」
「そういうことにしておこうか」
「水の加護!」
「降雨! 水纏い!」
水魔法で火の勢いを削ぐ。
「気を付けろ! 尻尾の攻撃もあるぞ」
「承知!」
ゲッツが馬と共に突進し、蜥蜴を跳ね飛ばす。
「さすがに一撃とはいかんか」
その時、反撃の火炎ブレスがゲッツに向けて吐かれる。
「水の壁!」
水魔法で遮ったせいか、ゲッツにはまだ余裕がある。
「回復の霧!」
コーリの回復魔法の後も、煌めくような炎がゲッツの周囲にまとわり付く。
「ほぅ、火炎の追加効果か」
「治癒剤!」
状態異常回復の薬剤を投げ付ける。
瓶が破裂し、黄色の液体が飛散る。
「これくらいのデバフなら、俺は問題ない。大事な薬剤を無理に使うことはないぞ」
ゲッツの言葉だが、蜥蜴は弱った様子など全く見せない。
「コーリ、これは魔力薬剤をケチってる場合じゃないな」
「了解です。霜柱!」
コーリの魔法で一帯が霜で覆われる。
火蜥蜴は嫌がるように首を振る。足が冷たいかぃ?
「氷の矢!」
立て続けに氷魔法を戦いつけるが、敵は怯まない。本来なら氷結デバフが掛かってもいいんだけど、状態異常にも強いらしい。
「急降下!」
隼が襲い掛かる。相変わらずの破壊力だ。
「多連撃!」
「水の連弾!」
「氷の槍!」
「真一文字!」
集中攻撃と疲れを見せぬ隼の連続技に遂にサラマンドラが倒れる。
「ふむ、どうやら終了か? ドロップがないな」
「おもてなしの心が欠けているのかな?」
おーぃ煽るのはやめぃ~
「ご心配なく。最後にお渡しいたします」
案内の精霊は軽く頭を下げる。
「第一の関門は終了しました。さすがに強い方々ですね。第二関門を開きます」
声に合わせ、前方の道上に淡い光の円が現れる。
「先に行って待っております」
案内の精霊は光の円の中に消える。
「焦ることはないだろう。まずはダメージと装備の確認だ」
サヤの指示で不備を確認する。
急ぐことはない。みんなに水を配って一休みする。
「準備良ければ入ろう。今度は全員一緒に行けるな」
円の大きさは十分にある。
みんな一緒に飛び込む。
「 “炎の草原„ へ、ようこそ!」
精霊の声に迎えられた場所は――
一面に草々が拡がり、風にそよぐ緑の葉には赤い炎がまとわりつく。
「真直ぐお進みください。私は第三関門の入口でお待ちします」
「有難い。煩いのが傍に居ると良い気分ではないからな」
精霊は軽く笑って宙に浮き、そのまま飛び去って行く。
サヤが草叢に入ると、チカチカと赤い火が燃え、火の粉が散る。
「なるほど、歩くだけでダメージを受けるようだな」
「俺は騎乗のせいか、大丈夫のようだ。パートナーがダメージを受けているもかもしれんが」
「水魔法掛けたらどうなるんでしょうね? 降雨!」
水滴が草々に降りかかり、炎が小さくなる。
「効いているみたいです」
「水の球!」
炎は微かに燃える程度になる。水魔法の重ね掛けで抑えられそうだ。
結局、水撒きをしながら進むことになる。
地味にウザいフィールドだ。
「来たぞ!」
最初とは一回り大きい火の精霊たち、一体は一メートルくらいある。
空中から火の塊を降らせて来る。
「ゲッツ、離れるな! 近寄る敵だけを叩き落せ。後は遠距離で対処する」
「承知、近寄るやつだけを相手する。後は頼んだぞ!」
水の結界を掛けながら、遠距離攻撃で空中の敵を叩き落して行く。
ボクもスリングショットに魔法を合わせながら攻撃する。
こうなると、サヤの弓は強い。隼も無敵状態だ。
数を減らした火の精霊たちは、一ヵ所に集まり、一つの大きな炎となる。
「ほぅ、合体か。どこかで見たようだな」
ゲッツが笑って槍を構える。
「まとまって貰った方がやりやすい。螺旋!」
ゲッツの突進に合わせて、鷹が切り刻む。
その後も精霊たちの波状攻撃が続く。
同じように襲われたが、なんと風属性だ。
属性対策は十分にして来た。最初の群とあまり変わらず、撃退した。
最後の群は、火属性の精霊と風が混じって襲って来た。
空中を乱舞する隼が次々に敵を叩き落して行く。
隼は無属性なので、敵の属性に無関係に同じダメージを与える。
これは……サヤはこの依頼終わっても手放したくないだろうな。
フィールド奥には、案内役の火の精霊の姿がある。
「良くここまで来られました。では第二関門の最後のホストをご紹介します」
燃え盛る炎の中から三メートルほどある鳥が現れる。
「火の鳥か、少々役不足じゃないか?」
ゲッツが傲然と言い放つ。
「そうですね。水の加護!」
「水纏い!」
戦闘開始だ。
次回 「奥編 36:火の山の魔女(その4)Strega in vulcano:quarto」




