旦那編 marito 31:遺跡 Le rovine
「やっと着いたな」
ディアの声にみんなが頷く。
結構時間が掛かった。すでに第六昼刻
宵闇が迫りつつある時間、遺跡は不気味だ。
彼方此方に石積みの壁があり、途中で折れた石柱が立ち並ぶ。
いろいろな石像が並び、破壊されたものもある。広さは確認できない程だ。
「今日、調査するのは無理だな。野宿して調査は明朝からにしよう」
ディアの指示で、急いで野宿の準備をする。
「ワイの勘やが、何か嫌な感じがする。今日の見張りは無理をしても人数を増やした方がええんやなかろうか?」
珍しくサブが提案する。インスタンスもあったし、消耗で対処が遅れるのを気にしているのだろう。
「確かにのぅ、月もほとんど朔じゃ。灯りは望めん」
不安を感じるのはみんな同じのようだ。
「小拙が起きている時は、軽い音楽を流すとしましょう。気持ちが落ち着くと思います」ポロロン♪
「よし! それでは今夜は二直にしよう。ことねはダメージが残ってると思うので、第五・六夜刻担当で、残りで第二から第六を半分ずつだ」
「いや、もう大丈夫だけど」
「ことね! こういう時は好意を受けるものじゃ。無理をしても何にもならんぞ」
はるっちに指摘されて、素直に受け入れる。
「ことね」
ディアの声に目覚める。
「あ、見張りの時間? ありがとう」
何とか眠気を覚ましてテントから這い出す。
静かな竪琴の旋律が流れている。
「おはようございます。体調は如何ですか?」
「身体は心配ないよ!」
笑顔で応えて置く。
「状況はどう?」
「確かにおかしい。像が増えたり減ったりするのは間違いないし、怪し気な音がする」
「夜の調査は危なそう」
「もちろんそうだ。明るくなってから調査するが、バラバラに行動するのは危険だから、まとまって行く予定だ」
遺跡は暗闇が拡がり、ゴトッゴトッと石が動くような音がする。
空には黄色い風の主星と二つの伴星が強く輝く。
そうか夜が明ければ唱月、一年最後の月だ。
第六夜刻、はるっちとサブはまだ休んでいるが、明るくなったら出来るだけ早く行動するというディアの考えで、日の出前から朝食の準備だ。
ジョルジュも手伝ってくれる。あまり得意じゃないらしいけど、冒険に付き合うためには戦い以外にもいろんなとをする必要があるというのは理解してくれた。今回は、ディアにもいろいろ学んでいるらしい。彼は前向きだな。
朝食はパンとスープにお茶、あまりたくさん食べるのは咄嗟の判断が遅れる。
サブ――君の食欲には負けるよ。
ディアの考え通り、五人まとまって行動する。先頭にディア、続いてはるっちとサブ、後方にわたしとジョルジュ、特に後方からの奇襲に注意を払う。
念のため、ジョルジュには防御の歌を歌って貰う。
「やっぱり妙な雰囲気じゃのぅ」
「ワイには明確にモンスターな感じがする。石像に化けるモンスターとか――」
「ガーゴイルだな。有名なモンスターだ。いきなり襲って来るから注意だ」
「属性は何だろう?」
「風属性だと思う」
「地結界! とりあえず結界を張って置くのじゃ」
ディアの話を聞いて、はるっちの地魔法で薄黄色の光が夫々を取り囲む。
「それにしても出ないやんか、ちょち突いてみるか!」
「サブ、藪から蛇が出るよ」
「まさか~、そんなことはあらへん」
サブの魔法職用杖で近くの石像を突っついた途端、鼠色で風雨に汚れていた石像が、羽と角を持ったガーゴイルに変身する。
「嘘や!」
「お主は当たりを引き過ぎる。少しは控えんかぃ」
「はるっちさん、角は止めてや!」
はるっちの持つ和本から逃げるサブ、お前ら、ギャグは止めい!
空中から真直ぐ突っ込んで来るガーゴイルをディアの鎚鉾が弾く。
短剣で切り付け、地の球を零距離で叩き付ける。
モンスターは黄色の光を放ちながら消えて行く。
しかし、一匹の動きに反応したのか、石像が次々にガーゴイルに変身して行く。本性を現したと言うべきか
「サブ、お主はいつも余計なことをするのぅ」
「はるっちさん、堪忍やで~」
漫才する二人は意外に余裕がありそうだ。
「じゃれるのは片付けてからにしよう!」
ディアの声に、ジョルジュの歌が攻撃型に変わる。
「戦いの歌!」
「「砂塵!」」
はるっちとサブの声が重なる。
次回 「旦那編 32:遺跡の亡霊 Fantasma delle rovine」




