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奥編 moglie 22:海月の恩返し(その1)Il ritorno da medusa:primo

コーリと二人で依頼(クエスト)のようです。

「コーリ、今日はお使いの依頼(クエスト)だよ!」

「はーぃ、ご一緒させていただきます」

 町の北西側、歩きで一日行程位の所に牧場がある。今日はそこに届け物をする。

 冒険者ギルドで、箱のようなものと郵便(ポスタ)を預かって出発する。

「地味な依頼(クエスト)だけど、色々やってた方が良いと思う」

「いえいえ、こういうのも楽しいです」

 整備されたとはとても言えない赤土と砂の混じる道をお喋りしながら進む。

 と、いきなり周囲が真っ暗になる。出発したばかりなのこれかぃ!

「何ですか、これ?」

「インスタンスだね」

「あたしって初めてですぅ~」

 二人して暗闇に引きずり込まれる。


 明るくなると同時に、生命の腕輪の効果音《エッフェット・ソノーロ》が響く!

 “ワイド・インスタンス:海月(くらげ)の恩返し„

 えっ! ワイドかぃ! これは面倒になりそうだ。


「暑いですぅ~」

 周囲は真夏だ。

 暑い! あつい!! 熱い!!!

 ここはどこだ?

 どこまでも続く森の中、潮風を感じるので海が近いのかもしれない。

 にしても暑さが我慢できない!

「石の連弾《アタッコ・ディ・ピエトレ》!」

 コーリ何を? と思ったら

「ぐゎぁっ!」

 全身黒ずくめの男が木の繁みから落ちてきた。

 何だこいつは! 男の襟首をがっちり掴んで問い詰める。

「何でボクたちを付け狙ってたのかな? 

「くっ、気づかれていたか。このわしの隠遁の術を見破るとは、なかなかできる!」

「別に、見破ったわけじゃないんですけど」

「へっ?」

「暑さのストレスを呪文で発散させようとしたら、落ちてきたの」

「どうみても悪人だから、締め上げてみよう」

 とりあえず縛り上げて尋問に掛かる。

「さぁ、ネタは上がってますよ。白状しなさい!」

 いや、そんなに杖でシバかんでも

「そのようなことで、わしが口を割ると思っているのか? 次は、逆さ吊りにムチか、それとも三角木馬に滑車か? 石に座らせそろばんを膝に置き、石を抱かせる石責めか? そんなものには屈せぬぞっ!」

「妙に詳しいな」

「こう見えても組織では拷問愛好会の会長を務めておるっ!」

 おぃ!

「しばらく凍ってもらいましょう」

「そうだね。暑いし」

「氷の壁《ムーロ・ディ・ギアッチョ》!」

「氷の柱《コロンナ・ディ・ギアッチョ》!」

 

 氷が溶けた処で尋問を再開する。

「涼しくなったと思うけど、ボクたちに白状する気になったかな?」

「会長さんは、今度は熱くなりたいのですか?」

「わっわかった。白状する」

 意外と根性のない会長さんだ。


 ある組織上層部の命令でこの辺り一帯を警戒していた

 怪し気な二人が現れたので行動を監視し始めたところだった。

 この近くの島に財宝が隠されているという噂があるので、それを狙っているのかと思った。

 機会(オッポルトゥニタ)があれば始末しても良いと言われていた。


「なるほどねぇ」

「財宝というなら行くしかないですね。生活水準向上にも役立ちます」

 コーリは意外に行動派(アッティーヴォ)?

 とりあえず会長さんを蓑虫状態にして海の方へ向かうことにする。

 放置したから仲間が助けるかもしれないけど、まぁいい。始末する気分にもならない。


 ザザザァ~ ザザザザザァーン

 寄せては返す波の音

 青い空とどこまでも続く砂浜

 遠くに白帆を上げた船が行き交う。

 沖に一つの島が見える。

 聞き込みをしたところ、この島は昔から “神宿る島„ として信仰を集め、海難除けの祈願が行われたという。

 確かに財宝が隠されていたとしてもおかしくはない。

 しかし、この島は六芒星(エサグランマ)の形をしていて、近くでは全く魔法が使えない。しかも全体は絶壁になっており、上陸できる所は一ヵ所しかなく、その上付近の海流は激しく入り組んでおり、船で近付くことも難しい。

 稀に潮が止まることがあり、その時にしか上陸できないが、その日を見分けるのは難しい。

 うーむ、手強そうだ。

「祈願する人ってどうやって上陸してたんでしょうね?」

「潮が止まる時を預言する人が居たらしい。その人の死後は後継ぎが居なくて、現在上陸不可能とか」

「なかなか厳しい設定ですね」

「でも、ここに行かないと、インスタンス・クリアにはならないと思うんだ。何か方法があるとは思う」


「や、これなにー」

「気持ちわるーい!」

 浜辺で子供たちが数人集まって歓声を上げている。

「ぶにょぶにょだぁ~」

 子供たちははしゃぎながら、砂の上に転がった海月(くらげ)を突っついている。

 両手で持ちきれないくらい大きなミズクラゲ

 ほっとく気にもなれないな。と思ってたら、コーリが突進して行く。

「そこの子供たち、話を聞きなさい! 動物をいぢめちゃダメでしょ。それに海月(くらげ)は祟るっていうんだから」

 子供たちがバカにしたような目をして反撃して来る。

「何、おばさん!」

「年増は黙っていて!」

 ピキッ!

 あ、コーリ、抑えて!!

「雷迅(トゥオーノ)!」

 子供たちは全員気絶した。


「すみません。つい前後見境なく…‥」

「まぁ、始末した訳じゃないから、大丈夫でしょ」

 子供たちが居なくなった後には、海岸に横たわる一匹の海月(くらげ)

「砂まみれになってるけど、生きてるかな?」

 ぴくっ! ぴぴぴぴぴっ! ぴっ!

「クラゲさん、気がついたみたいね。どうしてこんなことになったの?」

 ぴっ! ぴっぴぴっっ!

「ふーん、潮に流されてここに打ち上げられたの」

 おぃコーリ! 海月(くらげ)の言葉が分かるんかぃ?

「分かりますよ。それくらい。常識です!」

 心読まれた?

「顔見てれば分かりますよ」

 コーリ恐るべし!

「大変だったわね。怪我とかない?」

 ぴっぴっぴ

「まだ、なにかあるの? ふんふん、海月(くらげ)は……祟らない!」

 ぴぴーっ!

 コーリのニードロップが海月(くらげ)の頭を直撃する。

「わかってるわよ、そんなこと。助かったんだからいいじゃない」

 こくこくこくこく


 なんとか海に戻してやると、海月(くらげ)らしく波間に漂い始める。

 ぴーぴぴっぴっ!

「えっ、なーにクラちゃん」

 おぃ、名前付けたんかぃ!

 ぴっぴぴぴぴぴっ!

「助けてもらったから、恩返ししてくれるらしいです」

 こくこくこく

「でも、何かあるかな? 海月(くらげ)の酢物は好きだけど」

 ぷるぷるぷるっ!

「コーリ、ちょっと島について知らないか聞いてみてくれない?」

「えーっと、クラちゃんね。この辺に住んでるのよね。“神宿る島„ について何か知らない?」

 ぴぴぴぴぴっ!

「“神宿る島„ は潮の流れが速くって、簡単には行けない」

 ぴっぴぴっぴっぴ

「でも、明日の夜は珍しくの潮が止る日」

 ぴっ、ぴぴぴぴぴっ

「正確な時刻は当日にしか分からない。止まっている時間は一刻くらい」

 ぴぴっぴ、ぴぴぴ

「ふんふん、この辺のクラゲには顔が利くから……運んでくれる」

 ぴっ!

「胸を張るのは良いけど、なーに?」

 ぴぴっ! ぴぴぴぴ、ぴっ!

「三代前からこの辺の海月(くらげ)を取り仕切っている?」

 ぴぴっ!

「名門だってことは分かったわ! 頼りにしてるわ」

 ぴーっ!

 コーリ有能過ぎ……

次回 「奥編 23:海月の恩返し(その2)Il ritorno da medusa:secondo」

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