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旦那編 marito 13:希望の町 La città di speranza

叙事詩(サーガ)については、またいくつか出て来る予定です。

 みんなと別れて一人になった。

 これから新しい出発だ。住む所も確保しないとな。

 希望の町は、初めての村と比べると桁違いに大きい。また人も多い。

 町全体が赤味がかった日乾煉瓦の色に染められていて日本では余り見られない風景

 まずは冒険者ギルドで情報収集かとも思ったけど、移動中足元が寒かったので靴を探そう。


 装備屋は南門と西門の間、冒険者ギルドの北隣にある。

 色々な店が並んでいる。装飾品(アッチェソーリオ)も売っている。

 適当な店を選んでブーツを買うことにする。

 松葉色にしてもらった。しっかし色替えサービスがあるとは思わなかったなぁ


 冒険者ギルドの入口は南門の西側に在る。

 建物も立派な煉瓦造、何だか入るの躊躇うけど

 思い切って扉を開く。広いっ!

 冒険者ギルドの一階、床は煉瓦が敷き詰めてあり、確りしている。

 正面にカウンターがずらっと並んでいる。

 今は、第五昼刻くらい。人が少ないのは時刻帯のせいだろう。ピーク時には混み合うんだろうな。

 振り返ると壁は掲示板になっていて、メモ書きみたいなものがちらほら止めてある。

 依頼(クエスト)かな。

「冒険者の方ですか? こちらへどうぞ!」

 お姉さんに呼ばれてしまう。


「こちらは初めてでしょうか?」

「はい、先程この町に着いたばかりなので」

「分かりました。まず登録と郵便(ポスタ)の確認をします。腕輪をこちらへ」

 言われるままに左腕を差し出すと、何か四角い装置みたいなものを当てる。

「はぃ、これで登録は終わりました。ようこそ希望の町へ! 郵便(ポスタ)は来てないようですね」

「あの郵便(ポスタ)って何でしょう?」

「生命の腕輪に登録されている人に連絡するための手紙です。紙ではないですけど」

「何でそんなに面倒なことを?」

「えとですね。この世界では遠くにいる人と直接コンタクトする手段がありません。そのため連絡は郵便(レター)を送ることになります。冒険者ギルドはその郵便(ポスタ)を冒険者の方にお渡しする役目もあります」

「なるほど、そういうシステムになっているのですね」

「中には急ぐ郵便(ポスタ)もありますので、一日一度くらいはここで確認されることをお勧めいたします」

 結構役に立つかもしれない。現代のメールが便利過ぎるんだよね。

「この町での生活とか、スキルを勉強したいとか、色々聞きたいのですが」

「奥に人生相談コーナーがありますので、そちらへ行ってみてはどうでしょう?」

 ほぅほぅ、なかなか整ってるな。とりあえず話を聞いてもらおう。


 “人生相談所„ と大きな矢印があるので、そちらへ進んだのだけど、ガランとして誰もいない。

 奥に大きな看板があり、お姉さんがひとり座っているので、恐る恐る声を掛ける。

「あの、こんにちはです」

「はい、こんにちは。ここでは色々な方々の多種多様なご相談に応じさせていただいております。希望の町は初めてでしょうか?(見ない顔だな)」

「先程、この町に着いたばかりなのですが」

「略綬を拝見させていただいた所では、始めたばかりのようですね。(げっ!初心者かぃ)」

 何か変な声が聞こえた――気がする。

「それで、この町について、いくつか聞きたいことがあって」

「はい分かりました。どうぞ何なりとご質問下さい。(また面倒なんだよなー、初心者は適当に追い払わないと)」

「何か心の声が聞こえたような気がするんですが」

「え、何でしょう。気のせいではないですか?(ちっ! 勘の良い奴だな)」

 ここは何か変だな。バグか?

「宿泊出来る所はあります?」

「ピンからキリまであります。初心者の方はあまり所持金がないと思うので安めの所をお勧めします。(貧乏人は安宿で我慢しろってことだよ!)」

「スキルを学べる所とかは?」

「それは、人それぞれの素質と能力によりますので、ご自分で良い所を探すのが一番かと(それくらい、自分で探せや!)」

 人生相談、役に立たん!


 まぁしょうがないので、酒場に行って何か飲もう。

 それほどお金に困っている訳じゃないしね。

 酒場は冒険者ギルドと反対側、東門に近い所に在る。

 適当な処に入ると、結構人が居る。

 明るいうちから飲むなよ~

 みんなこの世界の住民なんだな。

 日も高いうちからアルコールって気にもならないので紅茶を頼む。

 と、そのとき酒場の端にある舞台(パルコシェーニコ)に一人のお兄さんが登壇する。

 吟遊詩人(メネストレッロ)? 

 お兄さんは竪琴(アルパ)旋律()に乗せて語り始める。


  昔、昔

  天地(あめつち)が定まりし頃

  ひとりの男ありけり

  その人、強く、凛々しく

  この地を駆け抜ける

  道を啓き、町を建て

  まつろわぬ魔物どもを、切伏せ

  従わぬ者たちを、平伏(ひれふ)させ

  規則のりと導きを定め

  人々を安寧となす

  全てをやり終えた、そのとき

  北の果て、竜の山へ向かう

  幾多の竜を屠り、深奥に達す

  紫の竜現れ、彼の人と対峙す

  幾合となく、(やいば)切り裂けども

  竜、爪を振い、火を吐く

  戦い幾日幾夜と続く

  終に竜倒れ、その(つるぎ)を捧ぐ

  竜の剣を得し、その人

  力強くみことのり

  世界始まりし


 初めて聞く叙事詩(サーガ)、こんなものなのか

 建国譚と言った感じだ。

 事実ではないと思うけど、形を変えて伝わっているのだろうか?


 叙事詩(サーガ)を堪能したけど、とりあえず今日の宿を探すことにする。

 吟遊詩人(メネストレッロ)、良いなぁ

 あーやって歴史を語り継ぐわけか

 で、道を歩いていると

 ポロロン♪

 何やら音が

「まこと恐縮なれど、そこな冒険者のお方」

 嫌な予感が

次回、12/26 02:00 「旦那編 14:吟遊詩人 menestrello」予定です。

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