旦那編 marito 12:三郎哀話 La favola triste di Saburo
この人、何度も出て来る……ような気がします。
インスタンス終了と同時に、開始と同じように真っ暗になる。
明るくなった時には元の場所。太陽の角度からしてあまり時間が経っていない。インスタンスってそんなものなのか。
「おお、略綬が増えてるぞ!」
確かに新しい略綬が付加されている。青の諧調の縞模様、中央に可愛いスライムマーク。
思わぬ所で増えた。なるほどこうやって戦績が積み上がって行くのか、ある意味幸運だったかもしれない。
「何かレアがドロップしていないか見てみよう」
ディアの声にみんな腕輪で確認する。
「自分は、マスター・スライムのコアだ」
「拙も、マスター・スライムのコアじゃな」
「わたしは……水の指輪? なんだろうこれ?」
「装備品とは珍しい。ちょっと見せて」
リアに、展開されている画面を見せる。
「ふむ、見たことのない装備品だな。指輪というのだから装飾品の一種だと思う。青いマークが出てるから水属性で防御を向上させるのかもしれない」
「呪いのアイテムじゃないよね。一度装備したら外せないとか」
「そこまで心配することもあるまい。拙は装備を勧めるぞ」
「装飾品は割合自由に着脱できるから問題ないと思う」
「まぁ装備してみるか」
画面から装備を設定すると、左の中指に装備された。
一瞬青い結界が全身を包んで消えて行く。
「なかなか良さそうじゃな。それでサブには何が出たんじゃ?」
「ワイには水色のパンツが」
なんと装備品が!
「早速装備やな!」
「「「脱ぐな!」」」
三人の声が重なった。
「全く……女性の前でいきなり脱ぐなよ!」
「いや、パンツ代えるんなら脱がんと……」
「装備品なら、こうやれば代えられるだろ!」
ディアそんなに親切に教えんでもいいのに。
しかし水色のパンツか、性能だけはよさそうだ。
日も高いので、野宿地を探すために進むことにする。
サブは――行掛かり上置いて行くわけにもいかないか。
「しようがないのう。次の町まで一緒に行くとするか」
「自分もそう思う。放置しておくと暴走して通行の障害になる」
「ご一緒できる。ぐへへへへ……」
「セクハラしたら世界から退場させるからね!」
視線が怪しいので前を歩かせることにする。
「あの……ワイは魔法職なんやけど……何で先頭に?」
「後ろにしたら何をするか分からんだろう」
「心配するな。敵が出たらサブが喰われている間に逃げる作戦じゃ」
「厄除けにはなりそうね」
まぁそれから先はサブが喰われることもなく、日没までになんとか予定の野宿地に着いた。
周囲は石壁で、広さも十分。土も確り固めてある。安心感があるなぁ
「ディア、なかなか良い所ね。野宿には十分じゃない」
「あぁ、ゲーム序盤は無かったと聞いている」
「へぇ」
「冒険者たちが整備をしたらしい」
「後からやって来る者にはありがたいね」
「おーぃ、竃の準備も整ったぞ!」
はるっちの土魔法で確りと竃が出来上がってる。いつの間にこんなスキルを
サブは叱られながら夕食の準備をしている。意外にやれるのかもね。
で、夕食後のお茶の時間、見張の順序を決めようと思ったんだけど
「んで、何で自分たちをつけて来たん?」
ディア、目が笑ってない。
「ワイはな。衝撃的なことに出会って、落ち込んでおったんや」
「笑劇的?」
「いや、それは字が違う。それでや、お姉さん方に慰めて欲しかったんや!」
「何でまた?」
「ワイは、ワイは……」
サブの絶叫が響き渡る!
「腕輪はんに嫌われてしもた!」
「「「は?」」」
再び三人の声が重なった。
「ワイの腕輪はんは、優しゅうて優しゅうて、可愛ゆうて、可愛ゆうて、あの鈴を転がすような声でワイと話してくれていたのに……急に話してくれんようになったんや」
涙声で続ける。
「ワイは、ワイは……もう一度あの声が聞きとうて、毎日毎日話し掛けとるんやけど、一向に返事してくれんのや~~」
「えーっと、こいつ何言ってるんだ?」
「あれって仕様だよね」
「ちゃんと説明があったじゃろうに。何を聞いていたんじゃ」
ガックリと膝を追って絶望しているサブ、急に立ち上がって叫ぶ。
「ワイは、ワイは……諦めん! 腕輪はんがワイを認めてもう一度話してくれる日まで、諦めるわけにはいかんのや~!」
宵闇の中、サブの絶叫が再び響き渡って行く。
「何を言うとる!」
必殺の和本攻撃、クリティカル・ヒット!
「はるっちさん、角は止めてや~」
そうして、こうして、珍道中二日。どうやら目的地が見えて来る。
「見えたぞ! あれが希望の町だ」
砂漠の中に日乾煉瓦で囲まれた結構大きな町、初めての村とは全然違う。
所々に緑も見える。砂漠のオアシスという感じだ。
「おぉ、あれがそうか! 何だか円形のようじゃのぅ」
「ああ、希望の町は円形になっていて、中央に神殿がある。周囲には冒険者ギルドや色んな所がある。人も多いし賑やかな町だね」
「ワイも初めてや~、希望が持てるわ!」
旅の疲れもなんのその! 一気に町へなだれ込んだ。
建国2年祈月5日(5/Preghiera/Auc.2)第四昼刻、希望の町到着
南門から町へ入る。初めての村とは桁違いに大きな門だ。衛兵もいるけど、冒険者には優しい。直ぐに通してくれた。
南の通りで握手を交わす。やっと来た~
「さて、当初の目的は達成した」
ディアがみんなに話しかける。
「ここは人も多く、ギルドの依頼も多種多様。腕を磨くにはとても良い所と聞いている。みんな夫々職能も違うし、目指すものも違うと思う。だからここで一旦解散しよう。機会があればまた一緒に行動できるからな」
「ディアは鍛冶の師匠の所に行くんでしょ。わたしはここで自分の可能性を色々試してみたい」
「拙は決めた! このサブとやらと一緒に行動する」
「はるっちさん? 今なんと? ワイはここで色んなお姉さん方とお知り合いに……」
「ダメじゃ、ほっとくと堅気の女性に何をするか分からん。拙が少し鍛え直してやる!」
「それはないっす! はるっちさん」
「いいから来るのじゃ」
あ~、首根っ子掴まれて……ご愁傷さまです。
「やれやれね。しかしよく分からん男だった」
「あんな奴に限って長生きするもんだ。またどこかで会いそうな気がする」
「ディア、フラグ立てるの止めて欲しい」
次回は 12/19 02:00 「日常編 3:リアル・インベントリ Inventario reale」です。
一回分休憩させて下さい。以後は奥編が続きます。




