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奥編 moglie 46:狐の加護 La protezione da volpe

前回: “冒険者の集う街„ で宿泊する所を見つけた。

 ちょっと城壁の外でテント村を見て回ってたら、急に周囲が真っ暗になる。

 もう慣れて来たけど、いつも突然だから心の準備が――常に備えするのが冒険者と言われてしまえば、返答のしようがない。


 いつものように、生命の腕輪の効果音エッフェット・ソノーロが鳴り響き、仮想画面スケルモ・ヴィルトゥアーレに表示が現れる。

 “インスタンス:狐の加護„ 


 周囲は深い森の中、日の光が差し込む。下生えが深い。

 静かな空間の中、草々の騒ぐ音。獣が何かを追い掛けている。

 追うのはコヨーテの群、五~六頭。

 こちらも移動しながら、様子を伺う。

 追われるのは、小さな獣。激しく方向を変えながら、追手の攻撃を躱す。

 一瞬停止して、敵に火魔法を浴びせている。

 おーぃ、コヨーテは火属性だぞ~

水の壁(ムーロ・ディ・フォコ)!」 

 逃げている方を助けるのが今度のテーマだと思い、追手の行動を制限する。

 小さな獣がこちらを盾代りに使うように跳び込んで来る。

 背中の毛が薄黄色、腹側が白、三角に立った耳、ふさふさの尻尾

 見紛うことのない狐!

 一匹の狐がコヨーテから追い回されている。

 こいつ、火魔法しか使えないな。コヨーテに手子摺るはずだ。

 

 狐と共に移動しながらコヨーテを牽制する。

水の加護ダ・インドッサーレ・アクア! 水の加護プロテツィオーネ・ディ・アクア!」

 とりあえず狐さんに支援魔法を掛ける。これで何とかなるでしょ。

 火魔法使っちゃダメよ。

降雨(ピオッジャ)!」

 コヨーテの動きを抑えるために水を散らす。

 狐さんは素早さを生かして敵を撹乱する。

氷の矢フレッチ・ディ・ギアッチョ! 水球剤ポツィオーネ・ディ・アクア!」

 脚止めし、殲滅に掛かる。レベルが高いのか、結構手強い。

 最後は接近戦で、ダガーの一撃で止めを差す。

 狐さんも頑張ったみたいだ。


 コヨーテを仕留め終わると同時に、今度は、空中から攻撃して来る。

 狐さんは、炎を散らして迎え撃つ。

 大きな目、曲がった鋭い嘴、薄茶の羽毛、背中は黒い縞模様。

 フクロウの群が襲って来る。

 火魔法は効いているみたいだから、たぶん風属性

「石の連弾アタッコ・ディ・ピエトレ!」

 飛んでる一羽を叩き落す。よっし、風に間違いない。

地の加護プロテツィオーネ・ディ・テッラ! 地纏いダ・インドッサーレ・テッラ!」

 空中的には地震(テッレモート)などは効かないので、少し戦い難い。スリングショットを多用する。

 狐さん、火魔法が効くので有利に戦っているようだ。

 何だか知らない火魔法使う。炎がランダムな位置に次々に現れる。狐火かぃ?

地の槍ランチァ・ディ・テッラ!」

 良し問題ない。勝てる!

 

 フクロウは数を減らすと不利と悟ったか、引き上げて行く。

 やれやれ……何とか追い払った。

 狐さんが、ちょこちょこと前に来て、頭を何度も下げる。

「おや? お礼してくれるのかぃ?」

 こくこく

「えと、何で追われていたの?」

 首を傾げる。

「何か悪いことしてないか?」

 きょとんとした目でこっちを見ている。

 まぁいいか、可愛いし

「えと――一緒に来るかい?」

 スカウトしてみる。

 “こんこん„

 嬉しそうに肩に乗って来る。

「じゃぁ今日からパートナーだね」

 甘えるように頭を擦り付ける。


 生命の腕輪の効果音エッフェット・ソノーロが鳴り響き、仮想画面スケルモ・ヴィルトゥアーレに表示が現れる。

 “インスタンス・クリア:狐の加護„ 


 周囲が暗くなり、再び明るくなった時は、街の近く。

 パートナーを獲得できるインスタンスもあるのか、戦力アップになるので、まぁいいか。

 でもこの子、どんな能力なんだろ?

 とりあえず部屋に戻ろう。狐さんはちゃっかり肩に乗ったままだ。

 

 リビングに戻ってみんなに紹介する。

「おや? なんだその狐は?」

「アルフィ、変な奴を連れて来たな」

 みんなから妙な目で見られた。

「えっと、インスタンスをクリアしたら付いて来たんだよね。ほらみんなに挨拶して!」

 こくこくこく

「わ、お辞儀してる。可愛いぃ~」

「新しいパートナーか、良いんじゃないか?」

「仲間が増えたということだ。俺は歓迎するぞ」

「名前は?」

「まだ付けてないんだよね~、どうしよう。まさか “玉藻„ とか付けられないよね」

「それは怪物に育ちそうだな」

「正体不明ですからねぇ~」

「ふむ。狐に関する花の名前などはどうだろう?」

「そうですねぇ~、蘭菊なんて云いますね」

「そうか、それじゃ、毛並が黄色だから、 “黄蘭(きらん)„ にしようかな」

 狐さんを見たら、尻尾を振っている。

「よろしくね!」

 コーリが不思議そうに見ている。

「ねぇ、今この子尻尾が沢山あるように見えたんだけど」

「そうか? わたしには一本しか見えないぞ」

「俺にも、一本しか見えないな」

「気にしすぎかもしれませんね」

「まさかと思うけど、キミ多尾狐じゃないよね?」

 “こん!„

 騙されたような気がする。

次回 「奥編 47:運命は突然 Le fata」

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