旦那編 marito 46:パーティ修行 Addestramento di partito
前回 「新年おめでとう!」
弓弦が唸り、地魔法が飛ぶ。回復・支援魔法がパーティ員に掛けられる。
風属性を持つモンスターが次々に撃ち落される。
ここは、プレイヤー内で “腕試しの荒野„ と呼ばれているフィールド、“冒険者の集う街„ に集まるものたちが臨時パーティを組んでレベルアップを図っている。
年が明けて絆月世界を支配する属性も変化する。これから三ヶ月は地属性だ。
今は、風属性の敵が出現するフィールドが一番人気だ。
「みんなお疲れさま、全員無事に終わって良かった。機会があれば、またよろしく」
臨時パーティを募集したリーダーが解散を告げる。
ドロップに関しては全く分からない。全て生命の腕輪に自動的に入るだけなので誰が何を獲得したのか、レアがドロップしたのかも分からない。臨時はこれでいいと思う。
「ベス、ご苦労さま。頑張ったね」
“なー„
ベスは臨時パーティでも人気者だ。みんなから可愛がられて愛嬌を振りまいている。
臨時パーティは通常五人だ。これ以上になると統制が難しくなるというのが理由だ。そのためか、パートナー持ちは歓迎される。
パートナーについても、色々教えて貰うことが出来た。
パートナーは信頼関係が強くなればなるほど、主人を守る意識が強くなるらしい。実際、鷹匠の人ともパーティを組んだが、鷹は主人に向かって来る敵を真っ先に攻撃する。そういう場面が度々あった。
ベスもわたしの傍に居ることが多いけど、甘えたいばかりじゃなかったのか、少し反省した。
拠点としている部屋に戻ると毎日リビングで反省会をしている。みんな色々情報を集めてるから有意義な時間だ。
「みんな臨時パーティの状況はどう?」
夕食後、みんな揃っている時に聞いてみる。
「そうじゃのぅ。経験値は稼げると思うし、勉強になるのは間違いない。パーティが違えばやり方も違うしのぅ」
「あたしは、結構色んなパーティ行ったけど、支援魔法が予想以上に大きいのに気付いたわ」
「エドはそんな感じだったんだ?」
「そうよ~。うちのパーティは、戦闘中には必ず支援魔法が掛かるし、竪琴の支援もあるでしょ。そのつもりでやってると感覚がずれるのよね。いつの間にか被害が出てることがあって怖いわ」
「吟遊詩人で臨時をやるものは少ないらしく。割と珍しがられます」ポロロン♪
「ワイは、周囲を考えないのが居て困った。特に脳筋が居るとやり難くてしかたなかったわ」
「ありますなぁ。一人で突っ走って、支援が足りんと喚く人が」ポロロン♪
みんなそれぞれに苦労があるようだ。
「話は変わるが、コインについてじゃ」
はるっちが話題を変える。
確かに “腕試しの荒野„ 付近では、戦闘中にコインがドロップする。
このコインを二十枚集めると特別なフィールドに入れる。
情報によれば、制限されたフィールドに敵が一定数出現して、それをクリアすると次のステップに進めるようになっているらしい。そして進むに従って強い敵が出て来る。どこまで進めるかで自分の現在の状況が分かるシステムになっている。
打ち切りは戦闘中でも可能とのこと。もちろん死亡は即退場、どこまで挑戦するか判断力が試される。
プレイヤーの間では、“腕試しの階段„ と呼ばれている。
「コインがあるなら、みなで挑戦してみたいのじゃが」
「みんなコインは溜まってるよね」
「問題ないわ。たくさんあるわよ」
「ワイも大丈夫や。知らん人間ばかりで少しストレス溜まっていたから、丁度ええわ!」
「久しぶりにみなさんのために弾けますな」ポロロン♪
翌朝第一昼刻に街を出発する。
みんなのコイン数を確認して、三回はチャレンジ出来ることが分かった。
とりあえず状況確認最優先で、稼げるかどうかは終わって判断することにした。
「でも、はるっち。何で臨時じゃなくて、身内パーティにしたの?」
目的地に向かって歩きながら尋ねる
「嫌な予感がしたのじゃ。臨時だと利害関係や実力差で、リーダーの判断ミスがあると思ったからのぅ」
なるほどなぁ~
「臨時パーティで、“階段、×階まで„ というのがあるのはそのせいか」
「それだけ退場する人が多かったんじゃないの? あたしはそう思うわ。ここは慎重に行かないと」
「ワイもそう思うわ。前の町とここの差が大きすぎる」
次回 「旦那編 47:腕試しの階段 Scale di abilità」




