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戦艦越後物語  作者: 陸奥
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第一章 第五節・『楓の提案』

「……朝、かぁ……」

 窓から差し込むオレンジ色の光……それが日の出の光だと、枕元の時計は教えていた。時間は5時の少し前を指している。

 一応、最低でも7時には起きることになっているが、起床する時間は各指揮官の判断に委ねられているので、ちょうどいい頃合い……という前に自分が指示すべき人員がいないのだからちょうどいいもなにもないのだが、とりあえず起きることにする。

 『越後』では現在、節水命令が下されているため洗顔と歯磨きはコップ一杯分の水ですませた後、寝間着代わりに使っている浴衣から第一種軍装に着替えるのだが……これがどうにもやりづらい。

 未だに女の体というものに慣れていないのと、下着に女物の下着ではなく(さらし)を使っているという点が大半を占めている。何故女物の……あー、いわゆるブラジャーとかを着ないのかというと、俺の拘りというかプライドというか……もう着たら負け、という感じだ。

 今でこそ女の体だけど、俺は男だ。もし着けようものなら変態じゃないかという意識が俺の中にはあり、そもそも着たくなんかない。

 沸々とわき上がる不満や文句に眉を寄せつつ、俺は服装を整える。ベルトを締め、紺のジャケットを羽織って前のホックを閉じ、短靴を履き、革製手袋をはめ、髪を邪魔なので一本に結う……そのうち切ろうかな。最後に軍帽をかぶって終わり。

 艦内では基本、短剣は着けない。ほかにはポケットにハンカチなどの小物を入れ、鏡で全体を確認して―――あ、ホックかけ間違えてた―――準備は完了、まだ5時は過ぎていない……少し舷窓から外を覗いてみる。

 『越後』の入港から一夜が明けたわけだが、未だあちらは厳戒体制のままだ。『山城』に至っては全火器をこちらに指向している。35.6cmが12門、15cm7門、12.7cmが4門だったっけか、機銃は忘れた。

 ……改めて見ると、かなりおっかないなぁ。よく昨日は平気で寝られたものだ。

 時計を見ると、ちょうど針が5時を指した……そろそろ行くか。


 部屋を出て士官室へ向かう。艦長室を使ってはいるものの正式な艦長ではないこともあって、俺は士官室で食事を取ることにしている。本当は艦長室で一人黙々と食べるそうだが、ちょっとそれは勘弁してもらいたかったのでいろいろと理由をこじつけた訳だ。一人が嫌なら他の士官たちと同様、士官寝室に寝泊まりすればいい……そう思うだろう、俺もそう思った。だがいつの間にかこうなってしまっていたわけだ……どうしてこうなった。

 さあ、今日の朝食は何だろうか……。欠伸を噛み殺しながらひとまず、今後の事は忘れて俺は暢気に朝食のメニューを夢想するのであった。


 ……さて、朝飯を済ませた後は、士官全員が会議室へと移動した。その場ではまず、今朝までに新たに分かったことを各々の臨時に受け持っている部署から報告する。

「現在乗艦中の通信班、敵信傍受班の者達を動員し日本政府や陸海軍の通信を傍受した結果分かった事なのですが……」

 昨晩から今朝までのわずかな変化も逃さず各々が報告する中、その中でも一番重要な情報は通信科を統率している、草加少佐の口から発せられた。

「昨夜から未明にかけ、本艦から半径50km以内の全都市にて戒厳令が敷かれた模様です」

 戒厳令……と言う事は、

「現在本艦が停泊中の横須賀は勿論、東京、横浜、厚木、千葉、館山、相模原、多摩辺りまで、ということですか」

 結構これって、ヤバい状況なんじゃないか? だって、戒厳令という事は工員も作業を中止してるかもしれないし……。

「日本の経済は勿論だが、『翔鶴』や『祥鳳』、その他艦艇の工期に影響が出る可能性もあるな……」

 黒石中佐が、俺の思いを代弁するかのように呟いた。

「はい、また米英の大使館も何か異常が起きたことには気づいているはずです。これがどのような影響を与えるかは、現時点で全く予想がつきません。さらに―――」

 草加少佐が言葉を切った。何だ、まだあるのかと、部屋中の視線が少佐に集中する。が、俺はその後の事は耳に入らず考えに没頭してしまっていた。

「呉や佐世保、また支那戦線からも戦艦、空母に回航命令が発令された模様です。呉からは戦艦『陸奥』が―――

(なんてこった……竣工が遅れたりなんかしたら、航空隊や艦の訓練にどれだけの影響が出るんだ……歴史をいい方向へ持っていくどころか、むしろ悪化させてるじゃないか!)

―――他に、有明湾から回航途中と思われる『伊勢』、『日向』など……

―――日本海軍のほぼ全戦力が集結中という事か……

(もう一刻の猶予もない。昨夜、早川中佐達から上申された案を基にした案を皆に提案して『越後』を固め、一刻も早く日本政府に接触して戒厳令を解いてもらわないと……)

―――まだ、遅くはない。全てが終わったわけではないし、始まってすらいない。大佐、昨晩お話しした案を……

(俺の打てる手は、これだけしかない……!)

―――大佐、天霧大佐!」

「は、はい!?」

 しまった、考えに集中してて話を聞いてなかった!

「えー……と」

 いつの間にか、周りの視線が俺に集中していた。

 と、とりあえず……、

「―――昨晩、早川中佐を始めとする中佐階級の方々から上申された中佐級合意案を基に、今後の『越後』が取る道を私なりに考えてみた私案があります。お目通し願いたい」

 外面は平静を取り繕いながら事前に刷っておいた書類を、早川中佐から順に一部ずつ回してもらう。昨日、布団に潜った後に文書を作成しなければならないという事に思い至った俺は、大急ぎで室内に備え付けてあったPCで文章を起こし、艦長室にあった印刷機で刷ったのだ……おかげで、寝たのは午前2時を回っていたと思う。

「……なんですと!?」

 突然、渡井中尉の声が会議室に響き渡った。

 予想はしていたもののやはり、俺の案はなかなか受け入れがたいようだ……特に、彼をはじめとする若い連中には。いや、俺の方が年下なんですけれどもね?



 楓が早川から受け取った合意案を基とした案。

 その内容の幾つかを、具体的な例として挙げると……、


1、『越後』は日本政府と速やかに連絡体制を確立。

2、『越後』は日本政府と交渉し、自らの生存権を確保する。

 1、『越後』は現在乗艦中の乗員を、帰順後も引き続き乗艦出来るよう日本政府と交渉する。

 2、『越後』は日本政府と交渉するに当たり、以下の条件の履行を求める。

  1、日本政府は『越後』と交渉中、同艦に対していかなる手出しもしてはならない。

  2、日本政府は『越後』と交渉中、同艦に対して指揮官を含め10名まで監視の兵を駐在させることを可とす。

  3、『越後』は日本政府と交渉中、可能な限り相手に刺激を与えぬよう努める。

3、『越後』は日本政府との交渉成立後、大日本帝国に帰順する。

 1、『越後』は日本政府との交渉成立後、持てる資料のすべてを日本政府に公開する。

  1、日本政府は『越後』から入手した資料を、事前に取り決められた場合などの例外を除いて第三者に漏洩してはならない。

 2、『越後』は日本政府に帰順後、戦争回避、大陸戦線の早期終結への道を模索、和平へ向けて行動する。

  1、『越後』は戦争の回避、ないし早期の終戦を図ることが困難と判断した場合、日本政府と協同し戦災者の削減に努める。

  2、日本政府は『越後』の帰順後、太平洋戦線の勃発回避、及び現在継続中の大陸戦線の早期終結、出来れば本年度中に終結できるよう行動する。

4、『越後』は万一、日本政府との交渉が決裂した場合、速やかに横須賀を脱出。欧米を目指し戦争の回避、ないし早期の終戦を図る。

5、『越後』は日本政府が攻撃してきた場合、全ての交渉を中断し横須賀より脱出する。白兵戦を除き交戦は極力避けるものとする。

 1、『越後』は横須賀脱出が困難な場合は、乗員脱出後速やかに艦内に注水、また弾火薬庫に点火し自沈を図る。

6、『越後』に乗艦中の全乗員に対し、先の資料映像を公開すると同時に、資料室を開放する。


 以上、6項目他を骨子としたものだ。

 基本的に日本政府に帰順する方向の考えは合意案どおりなのだが、交渉が決裂した場合は交戦せずに脱出し、欧米を目指して早期の終戦を図るというのは楓の考えだ。その場合は日本やドイツの弱点を詳細に教えることで、枢軸側を短期間にかつ徹底的に痛めつけることになるが、それでも日本、ドイツに対する無差別爆撃を回避できたならそれだけでも数万人の人名が助かる。

 また、脱出出来ない際に自沈するのは、交渉が決裂し『越後』が占拠されてしまった場合、艦内にある幾つもの未来の情報がどう使われてしまうか分からないためだ。万が一、原子爆弾や超音速機、ミサイルなどの情報がナチスドイツに伝わってしまったらドイツ、そして日本の降伏が長引き、両戦線における戦いはより悲惨なことになってしまう可能性がある。それを防ぐための措置だ。

 もし、楓が本当に『越後』の艦魂だとしたらそれは、自殺をしようとしているのと同じこと。しかしその実感がないために、楓はいとも容易くこの選択を選ぶことができたというわけだ。

 勿論、上記に紹介したもの以外にも、『越後』には外国人も乗艦しているため、彼らの立場や扱いに対しても言及したりしている。


 この辺りで話を戻そう。渡井中尉らが問題とするのは4項、そして最後の6項である。

 楓も4項は現実的ではないと考えてはいるが、6項だけは譲れないのだ。もし仮に交渉が成功した場合、現在乗艦している5,393名は、この時代において他にはいない“未来人”というかけがえのない仲間となる。だが、今の状況では出身、世界観もなにもかもがバラバラで仲間意識のへったくれもない。

 その仲間意識を醸成するために楓は、今までの世界観や価値観その他を吹っ飛ばす程の衝撃を与えたうえで、

『このままでは、日本は世界を敵に回して見るも無惨な状況に追い込まれる。そんな悲惨な未来を防ぐために我々『越後』乗員は、総員一致団結して歴史を変えようじゃないか』と、確固たる理由をつけることで艦全体の連帯感を作り出そうと考えたのだ。


 同時にこれは、高いリスクも孕んでいる。

 下手に知識、情報を与えることが、かえって乗員たちの結束を結ぶ妨げとなる可能性もある。それぞれの異なった意見が衝突し、最悪の場合には艦内で暴動が起きてしまう事態すら考えられるのだ。

「我々士官や、主要な准士官までという少数が知るというのならば私もまだ賛成致します。しかし、下士官、兵にまで情報を公開するというのは、いくら何でもやりすぎです! 兵達に余計な情報を与えては、ただでさえ寄せ集めの乗員たちが、各々で勝手に行動し取り返しのつかない事態に陥る可能性もあると思いますがッ!」

 渡井中尉たちの懸念はまさにここにある。士官などのまとめ役は200人ほどしか『越後』には乗っていない。それに対して下士官、兵は全体で3,000人を超えている。残りの約2,000人は民間人が大半なのだ。

 その3,000人ほどに反乱を起こされたら、士官たちにそれを留める術はない。数の暴力によって瞬く間に『越後』は占拠されてしまうだろう。渡井中尉たちが思い描く最悪の事態だ。

「……渡井中尉、あなた方の懸念も最もです。しかし、我々の部下たち……特に、生死をも共にした自らの部下が、そう簡単に反乱などを起こすとお思いですか?」

 もちろん、ハッタリである。しかし存外にこれが効いたらしい、中尉たちの表情が若干変わった。

「私の部下は、どういう訳かこの艦にはいません。しかし、他の方々は大なり小なり共に戦った部下がいるはずです。その部下たちを、信じられないと。そう中尉は仰る訳ですね」

「ッそ、それは……!」

 楓以外の士官たちには、それぞれ部下が数人から数百人の規模で存在する。特に黒石中佐が乗艦していた『武蔵』乗員は300人を超えており、単体のグループでは最大の規模を誇っている。渡井中尉は『早風』という駆逐艦のグループ約20人の中で最上級の士官である。

 それぞれが共に戦い、共に傷ついた戦友だ。渡井中尉もそんな仲間たちを信じられない訳では、もちろんない。中尉が心配しているのは他艦の乗員たちのことだった。

 見知らぬ彼らをいきなり信じろといわれても、無理というものだ。実を言うと、楓としても信じているという訳ではない。

 しかしながら、今この状況で信じる信じないの選択をする自由は、彼……いや、彼女にはない。自らの居場所をつくり、歴史を変えるという大仕事を成し遂げるために楓は、自身の良心の範囲内で―――場合によってはそれ以上の事も―――使える手段なら使える限り使おうとしていた。

 楓に今のところ、味方はいない。焦った彼女が出した中で最善の考えが、自身の案で『越後』を固め、日本政府に交渉を申し入れることだったのだ。落ち着いて考えれば他にもっといい考えも浮かんだかもしれない、だが時間と状況はそれを許さなかった。


 楓と渡井、二人がにらみ合い部屋を沈黙が支配する。しかし……、

「―――まあ、そこら辺にしておいてはどうかね。渡井中尉?」

 その沈黙を破ったのは、今まで会議に参加することなく、ただ眺めていた外国人。

 流暢な日本語で話す外国人の名は、マイケル・リチャードソン。元々はアメリカ海軍第七艦隊司令部勤務の少佐であり、『越後』におけるアメリカ系グループの最上位の士官でもある。

 いったん渡井から視線を外したリチャードソンは、真っ直ぐ楓を見据えた。

「アマギリ大佐、一つ確認したい事があります。この質問に対する答え如何で、今後の我々アメリカ軍人の身の振り方が決まると思ってください」

「……何でしょうか」

 そう言われては警戒せざるを得ない。周囲の士官たちが身を固くする中、楓はリチャードソンの質問を待つ。

「あなたは、ニッポンを第二次大戦における勝者にする考えがありますか?」

「……勝者、と一口に言われてもいろいろと考え方がある」

 楓は、軽く息を吐き言葉をつづけた。下手に考えることはせず、率直な自分の意見をぶつけるつもりで。

「純粋に相手を降伏させたものを勝者とする考え方もあるし、有利な条件で(いくさ)を終わらせた方を勝者とする考えもある。あなたが言う勝者が、今私が言った考え方に基づくものならば……答えは、Noです」

「―――フム。なるほど、よくわかりました」

 リチャードソンは、なにかを心得たかのように微笑み、こう言い放った。

「我々在日米軍所属の軍人は、戦争終結のその日までアマギリカエデ大佐の指揮下に入ることを、約束いたしましょう」

「……は?」

 その答えに、楓は驚く。今の答えの果たしてどこが良かったのだろうか? 正直、楓の心情としては『越後』の事や未来の情報を喋ってもいいから、さっさとステイツに帰れといった感じだった。

 今の時代、アメリカ人が『越後』にいても敵対してさっさと国に帰ろうとするだろう、くらいしか考えていなかった。それがまさか、一番最初に自分の提案に賛意を示したのが、そのアメリカ人なのだ。想定外にも程がある。

 混乱する楓をよそに、渡井が猛然とリチャードソンに食いかかる。

「貴様! アメリカ国民でありながら敵対国に組するとは、貴様には愛国心というものがないのかッ! 大佐も日本の敗北を認める発言をするなどと、決して見逃せる問題ではありませんぞ!」

 激昂する渡井に対してリチャードソンは涼しげに答える。

「勿論、私にも愛国心はあるとも。だが大佐のプランに沿って行動すれば、本大戦における数々の悲劇が回避される可能性が高い。もちろんニッポンが善戦する分、太平洋戦域における合衆国の戦死者の数は増すだろう……しかし、私の考えが正しければ合衆国は必ず名誉ある勝利を手にすることが出来る。それにワタライ中尉、君は考え違いを一つしているようだ。アマギリ大佐は日本が敗北するとは一言も言っていない、その意味をもう一度考え直してみたらどうかね?」

「何だとォ貴様……ッ」

 それだけの言葉で納得する渡井達ではない。さらに数人の若手が立ち上がろうとするが、

「……今、議論すべきは、どちらが勝利するとか、愛国心がどうのといった問題ではないだろう! 諸君、天霧大佐の案に対しリチャードソン少佐、渡井中尉の他に意見のある者は?」

 早川がその流れを断ち切った。強引に議論を元に戻した後、意見を募るが誰もなにも言わない。

「では、渡井中尉の意見に賛同するものは?」

 渡井中尉他数人の尉官が立ち上がる、が過半数には程遠い。

「では、他に良案があるものは?」

 会議室を見まわすが、意見のある者は出てこない。

「では、天霧大佐発案の意見に賛同の者は?」

 ガタガタと椅子の音を鳴らして、中佐階級の者たちは勿論、室内の大半の者が立ち上がった……その数は余裕で過半数を超している。

「賛成多数で、天霧大佐の意見を採用とする。なお、天霧大佐を正式に本艦の代表とすべきだと本職は考えるが、どうか?」

 今度は大多数の拍手が鳴り渡った。

「……そういうわけで、大佐。今後とも本艦の代表として、よろしくお願いします」

「は、はぁ……ぇえ!?」

 かくして、『越後』の士官たちは一部にしこりを残したものの、一つにまとまったのだった。




 『越後』を睨むように砲門を向ける一隻の軍艦。

 その艦のちょうど真ん中あたりに、一人の女性が立っていた。勝ち気そうな顔つきに、一本にまとめられた長い髪。

 彼女の視線にはどこか苛立ちが込められているようにも感じられる。その視線の先にあるものは、この艦のあらゆる火器が指向している艦、『越後』。

 そんな彼女の傍らに突然、まばゆい光とともにこの場にはとてもそぐわない外見をした三人の少女が姿を現した。

「……偵察隊、ただ今戻りました!」

 彼女達の名は、多摩と鷺、そして鳩という。軽巡洋艦『多摩』、そして水雷艇『鷺』、『鳩』の艦魂だ。彼女たちが報告しようとしている人物もまた、艦魂である……。

「報告します。目標艦々内を捜索しましたが、目標艦の艦魂と思われる者を見つけだすことはできませんでした。艦内には人間の女性が多数おり、その数は1000人を超すと思われます。また、乗員の中には男女問わず我々の姿が見えていると思われる者が数人ほど認められたので、報告させていただきます」

「続けろ」

「ハッ!」

 多摩が1人ずつ外見などの特徴を報告する。そして最後の1人……、

「最後は、海軍大佐の階級章を付けた若い女です。名は、天霧楓。現在臨時に、『越後』の代表となっている者です」

 以上で報告を終わります、と多摩は締めくくった。

 少しの間、場に静寂が下りる。

「……どこに、隠れていやがるんだか」

「現在、入り込める場所は徹底的に捜索しましたが……足跡すら見当たりません」

 彼女は軽くため息をつく。

「わかった、お前らは艦に戻れ」

『ハッ!』

 素早く敬礼をし、光に包まれて消える三人。その残光を視界の片隅で捉えながら、彼女は『越後』を睨みつける。

「手間をかけさせやがって……見つけたらただじゃすまさねぇからなッ!」

 その言葉とともに彼女……戦艦『榛名』の艦魂、榛名も甲板から消え去った。



「うほぅ!?」

 会議から戻って寝室でまったりしていた俺だが、背筋にいきなりゾゾッと寒気が……なんかこう、嫌な予感がする、というか嫌な予感しかしないんだが。

 例えるなら、暴力的な幼馴染が襲いかかってくるあの時の前兆によく似ている……そんな訳ないな、多分気のせいだろう。

登場人物紹介



早川秀次(はやかわひでつぐ)

 役職:帝国海軍軍人、中佐

 出身:新潟県長岡市

 身長:177cm

 年齢:38歳

 性別:男性

 前役職:戦艦『土佐』副長

 家族構成:父、母、義理父、義理母、妻、息子3人、娘2人

 好きな物:白米・日本の城郭・戦車・軍艦・味噌汁・根拠のある非戦派

 嫌いな物:根拠のない非戦派・精神主義・全体主義・特攻・青汁


 異なる歴史を辿った世界から来た人物の一人。早期講和ない限り日本に勝ち目はない、との考えをもっており主に副長的立場から楓をサポートする『越後』の第2の長。

 生粋のエリートではあるが非常に柔軟な思考の持ち主であり、時として楓の意見とは真っ向から対立することもしばしば。大艦巨砲主義者ではあるが、同時に航空機の脅威も認識しており被弾時の応急処置に対して、我流ながらもよく勉強しており防御指揮官として艦の保全対策を日々模索している。



横川喜勝(よこかわよしかつ)

 役職:帝国海軍軍人、航海少佐

 出身:千葉県浦安市

 身長:181cm

 年齢:35歳

 性別:男性

 前役職:戦艦『天城』航海科所属

 家族構成:妻、息子、娘2人

 好きな物:家族・酒・煙草・軍艦・美味い料理・海

 嫌いな物:真面目すぎるやつ・変に理屈っぽいやつ・間諜スパイ・ムカデ


 気楽な性格をしており、開戦にはやはり反対しているがもはや手を打つには遅すぎる時期だと認識している。早川中佐や菜野大尉と同じく別の歴史からとんできた人間であり、実は三人は同じ艦隊で共に戦っていた。現場一筋で叩き上げられきた経験豊富な航海士官であり、ここぞ、という時には非常に頼りになる存在である。何かあっても何時までも引き摺らずスパッと切り替えることが出来る思考の持ち主。



草加拓海(くさかたくみ)

 役職:帝国海軍軍人、通信少佐

 出身:岩手県紫波町

 身長:176cm

 年齢:32歳

 性別:男性

 前役職:第一航空艦隊通信参謀

 家族構成:父・母・姉

 好きな物:バナナ・理想の未来・日本・海

 嫌いな物:誇りを失った未来の日本・泳ぎ

 日本という国に誇りを持っており日本の行く末を案じ日々案じている。以前は一航艦の通信参謀という重要なポストについており、『越後』転移後は通信のトップとして、様々な情報を収集し楓に伝えるというこれまた重要なポストについている。たまに何を考えているのかわからないときがあるが、某漫画と違い同士が多数いるため、そして諸々の理由などから核爆弾を作ろうなどという暴挙には今のところでていない。



 お久しぶりです〜、陸奥でございます。

 今回も四ヶ月空いてしまった……月二回更新の目標が安定して行えるようになるのが、はたしていつになることやら。

 やっぱり高校三年は忙しいですね、PCに触る暇がないです。

 暇を作り出す余裕がない……。しかもPCは壊れて修理に二ヶ月近くかかってるし……携帯だと書きにくくて進まないものでして。

 就職先に受かっても四月からさらに四ヶ月近く更新無理っぽいし、その後も暫くまともにネットへ繋げられる環境じゃないみたいだし、いつ終わるんだろう……。

 あ、細部はまだ詰めてませんが開戦から終戦、そして現代までの骨組みは出来てるんで投げ出すことはないです。というか、本編を書こうとしたら細かい設定ばかりが頭に浮かんだり、まだまだ先の話が浮かんだり……そりゃ進まんわな。


 これからの予定としては、九月二回更新(もう一話もすでに完成済み)、以降も二回を目標とし、三月は三〜四話を更新しておきたいです。

 この後となると、本気で更新困難となりますから……。(捕らぬ狸の皮算用とならないよう、鋭意努力します)


 では、次回の《戦艦越後物語》もどうぞよろしくお願いします!

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