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戦艦越後物語  作者: 陸奥
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序章『  の終焉』

 20XX年、日本の主要四島の内もっとも北に位置する島、北海道。そんな北の地の道南地方、函館市のとあるバス停にその青年はいた。青年の名は『駒場翔(こまばかける)』、普通の高校生である。

 本当は昭和に生まれてきたのではないかと周りから言われるほど好みが古く、妙なところで頑固な性格をした青年だった。

 そして今日は12月24日、そう世間一般で言うクリスマス・イブの真っ只中だ。翔の友人は恋人がいるものは共に過ごす予定の者が大半であり、学校から出るまでの間も廊下などでそういったカップルと思われる仲睦まじい男女の姿があったが、本人にはそういった話は一切なかった……いや、幼馴染みの女性が一人おり、よく話したり出かけたりもするために微妙に噂になったことはあるが、翔にとっての彼女は親友であると同時に恐怖の対象でもあるためマンガのような幼馴染みの関係になることは多分ないだろうと思っている。

 普段から浮いた話があまりなく堅物扱いされているが、本人は積極的に行動していると思っている始末だからまったくもって手に負えない青年である。

 その為、自覚のない翔はこの日が来なければいいと常日頃から思っていたのではあるが時を止めるような力もない翔が望んだところで時間が止まるわけもなく、とうとう来てしまったのだった……。



 朝から吹き荒む猛吹雪……視界は10mから15mがせいぜいだ。そんな天候でも自転車が禁止になっている冬期間、俺はバスを待ち続けなければならない。例えそれが交通渋滞や安全のためにバスが低速で運転するせいで30分……最悪の場合は1時間遅れになっても、だ。

 函館には市電もあるだろう、だって?路線がたくさんあった昔ならいざ知らず、今の市電は市内のごく限られた路線しか走っていないために俺達の家はバスに乗るか、歩いて帰るしかないのである……そう、俺達(・・)だ。

 隣には幼馴染みであり、代々武術家である家系に生まれ、今はマフラーと耳当てとフードで顔の半分が見えないが、洟水垂らしながら自分のコートの上に俺のコートを重ね着している鶴崎淑恵(つるざきよしえ)17歳が震えて立っている、おかげで俺はコートなしで学ランだけの状態で吹雪に耐えねばならない。

 ……やたらと長くなってしまったが、要するに俺が言いたいのはそこまで着込んでいるのにまだ震えるくらい寒いのかということだ。

「お前な、そこまで厚着して……あまつさえ、俺のコートまで着込んでおいてまだ寒いのか?あと洟水拭け」

「……翔、常々思っていたんだけどもう少し女性に対してのデリカシーというものを……ふ、ふぁ……くしゅ!」

「あ〜わかったわかった。取りあえずティッシュやるから、洟をかめ」

 隣で淑恵が渡されたティッシュで洟をかんでいる内に、バスがやっと来たようだ。

 いろいろと文句をたれている淑恵を無視して、俺はバスに乗り込んだ。だって寒いんだもの。


 こんばんは、駒場翔です。

 現在自分は、先ほど家に帰ってきたばかりですが再び猛吹雪の中を歩いております。

 そんな最悪の天候の中、何故また外にいるのかというと、

『ケーキの材料、買い忘れてきたのがあったからちょっとひとっ走り行ってきてくれない?』

 という母の一声のせいに他なりません。吹雪も弱くなっていたので愚かにも引き受けてしまった俺は、十数分後には再び猛威を振るい始めた吹雪の中でひたすら後悔していた。

(ああまったく、何でよりにもよって今日に限って俺は引き受けたんだ……そうだ、今日は厄日に違いない!)

「っと、すみません……あれ?」

 と、心中で愚痴をこぼしていた俺は、前から歩いてきたフードを深くかぶった女性にも気付かず肩がぶつかってしまった。すぐに謝って後ろを振り返ったが不思議なことにどこにも女性の姿は見えず、俺は疑問に思い首を傾げたが更に強くなってきた吹雪に慌てて意識を移し、顔を覆って走り始めた。

(こりゃ酷いな……早く買って帰ろう。そしてあったか〜いこたつで蜜柑を食おう)

 と、家に帰ってからの暖かいこたつの中を思い浮かべ顔を緩めたその瞬間。


―――スリップした大型クレーン車の車体が見えたと同時に眩いライトを感じた瞬間、身体に強い衝撃を感じたのを最後に俺の意識は途切れた。



 クレーン車は橋の上から川へと前半分がせり出し、後続の乗用車数台が玉突き事故を起こすというを大事故へと発展。すぐさま警察と消防が現場に駆けつけたが翔が事故の現場にいたということを見ていた目撃者がいなかったことから、翌日の両親からの捜索願が出されるまで翔が事故に巻き込まれたということを知るものは誰一人としていなかった。


 ……事故が起こった直後の現場に彼女はいた。視界が10m足らずしか見えないほどの吹雪の中、強風にあおられ一瞬だけ垣間見えた彼女の口元は静かに笑っているようにも見える。どこまでも普通の、しかしどこか気味が悪くなるような笑みを浮かべて……彼女の姿を見た者は、誰一人いない。

 皆さんはじめまして、前にあったことのある方はお久しぶりです。陸奥です。

 今回、やっと改訂版が出来上がりましたので掲載いたします。

 その第一陣となる序章から既に前回とは大きく異なっております。

 まず、


・翔を轢いた車両 前回、トラック→今回、大型クレーン車

・洟垂れ寒がり幼馴染み登場

・謎の女性登場


 ……等です。

 これからもいろいろな矛盾や、ご都合主義的な展開になってしまうかもしれませんが、出来うる限りリアルな戦記っぽいものにしていきたいと思います。

 ちなみにこの作品は、戦記には不要と思われるような要素も多々あるためにジャンルを戦記とはせず、その他に設定いたしました。

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