表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の主  作者: 沙々音 凛
第十九章:傭兵団の章三
990/1189

28・国境の丘2

「怪しい奴のチェックと、行き来した人数くらいは把握したいだろうしな」

「その通りです。最初は砦経由を蛮族側が怖がりましたが、昼に門を開けっぱなしにするようにしていたら来るようになりました」


 セイネリアの言葉にザラッツは嬉々として答える。新規領としていろいろやることは山積みだろうが、ザラッツの顔は明るかった。


「谷の方から危険を冒してこっそり入る必要がないなら、慣れたら楽な方から来るようになるだろ」

「えぇ、特に荷物を持っている時は谷を回ってくるのは大変ですからね」


 よく目を凝らせば、遠くに丘を越えてくる道があって、そこに人影が見える。おそらくこちらに来ようとしているどこかの部族の者なのだろう。それが一人や二人ではなく、途切れ途切れの列を作っているところからして、相当数の蛮族がナスロウ領に毎日やってきているのだというのが分かる。


「毎日あれくらいの蛮族がやってくるのか?」


 セイネリアが聞けば、それに答えたのはアジェリアンだった。


「あぁ。だが毎日あれだけの人数が領内に入って住み着く訳じゃないぞ。単に今は朝だからこちらに来る人間が圧倒的に多いだけだ。昼過ぎになると帰る者、つまり領内から出ていく人間の方が多くなる」

「つまり、大半は取引しにナスロウ領にやってくるだけか」

「そういうことだ。勿論、冒険者になりたくてやってくる連中も前より増えたそうだが」

「なにせ前と違って堂々とクリュース内に入れる訳だしな」

「あぁ、だから雇った蛮族出身の冒険者達に、そういう連中のサポートをやらせてる。こっちからやってくる連中はラギ族の村を通ってきてないからな、なんの準備もなしで来て困ってる者も多い」

「だろうな」


 今まではクリュース国内にこっそり蛮族が入ってくるなら、ラギ族の村から谷を抜けてやってくるのが定番だったというのはカリンも聞いていた。だから以前はラギ族の村で、クリュースで暮らしていくための準備を整えていったそうだが、その村を通らないとなると確かにナスロウ領の方で代わりに準備の手伝いをしてやる必要がある。


「蛮族出の冒険者を雇って、冒険者になりにきた蛮族達の指導をせるというのはアジェリアンの提案です」


 そこでさらっとザラッツが言えば、アジェリアンはちょっと恥ずかしそうに視線を逸らす。それを見てザラッツは満足そうに笑う。

 そうして笑みを収めてから、ザラッツはセイネリアとアジェリアンの二人を見て言った。


「説明はこれくらいにして、ここまで来たのですから実際に砦に行きましょう。ここからなら少し走らせてもいいですし、そんなに掛かりません」


 上機嫌で彼が指さしたのは草地の先であるから、確かに森の中と違って馬を走らせることも出来るだろう。だがそれに、険しい顔をしてアジェリアンが反論した。


駈歩かけあしまでせず速歩はやあしで十分です。何かあって馬から振り落とされたらどうするおつもりですか」

「アジェリアン、忘れているようだが私も騎士なんだが……」

「立場からして慎重にすべきです、それに何かあった時に走らせるため、馬の体力は温存しておくべきです」


 いつもは真面目不愛想なザラッツが、それで少し拗ねたような顔をしつつ肩を上げる。アジェリアンはそれを睨む。そんなやりとりが自然に出来るくらい、この2人はいつもこんな調子なのだろう。


「さすがの俺も落馬のフォローは出来ないからな、話してる暇があるならさっさと移動したほうがいい、そうすれば馬を急がせる必要もなくなる」


 セイネリアのその言葉で、2人は同時に馬首を砦方面へ向けた。長年の付き合いという訳でもないのにこの2人は本当に恐ろしく気が合うのだと思う。

 そこでカリンはセイネリアの顔を見てみたのだが……やはり、彼の表情から何かの感情は感じられなかった。


ここら辺はアジェリアンとザラッツのやりとりの様子の話。2話使うつもりはなかったんですが(==;;

次回はセイネリアサイドの話、砦へ向かう前にちょっとしたハプニング。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ