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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十九章:傭兵団の章三
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27・国境の丘1

 結局セイネリアは暫く窓の外の彼らを見ていたが自分も外に行こうとする事はなく、暫くしたらまたベッドに戻って使用人が起こしにくるまで寝ていた。

 カリンは大人しくセイネリアと一緒にまた寝たが、もとから眠りは浅い方であるし考えながらうとうとした程度だ。主も別に眠そうではなかったし、おそらく自分と同じようなもので熟睡していたというよりただ寝転がっていただけだろう。


 以前のセイネリアであれば、起きて気づいた時点でそのまま外の彼らのところへ行っただろうとカリンは思う。


 いかなかった理由は分からないが、カリンが『楽しそうですね』と言った時に返した主の声は、あまりにも平坦で感情がこもっていなかった。以前の主ならば皮肉げに笑うか、呆れるかくらいの反応はしていただろうに。だからあの時の主が何を思って窓の外の彼らを見ていたのか、カリンはそれが分からなくて、そしてどうにも引っかかっていた。




「もうすぐ森を抜ける、そうしたらすぐ国境だ」


 前を行くアジェリアンからそう声が掛かる。カリンが前を見れば、確かに木と木の合間に草原が見えた。


 国境を見に行くにあたって、面子はアジェリアンとザラッツ、セイネリア、カリンの4人だけでそれぞれ馬に乗っていく事になった。

 朝、館を出る時に用意された馬と、他に護衛兵がいない様子を見て察したセイネリアは呆れたようにザラッツに言っていた。


『見事なまでに最小人数だな』

『一応お忍びという事にしていますし、貴方がいればまず問題ないでしょう』


 ザラッツが嬉しそうに笑ってそう言い、アジェリアンは主のその発言に少し頭を押さえる。様子からしてそんなやりとりはよくある事なのだろう。


『確かに、それはそうですが……』

『この男がいる時でもないと、こんな身軽な人数であちこち行ったり出来ないだろう』


 どうやらザラッツはこの機会に、普段は気楽に見に行けないようなところを見て回ろうとしているようだった。当然カリンが気づいたのだからセイネリアもそれをわかっていない筈はないが、主は嫌味の一つも言わずに苦笑だけしてさっさと馬に乗っていた。

 そのあとも少しはしゃぎ気味のザラッツとそれを諫めつつも心配するアジェリアンのやりとりは続いていて、やっと出発してからも2人はまるで長くからの友人のようによく話していた。基本的にはアジェリアンが先頭を行って、その後にセイネリア、ザラッツ、カリンと続いていたから進んでいる最中に会話はほとんどなかったが、途中止まったところではずっと2人は話していた。勿論、そこからセイネリアに話を振ってくる事も多いのだが、主は基本聞かれた事に返事を返す程度であまり会話に入ろうとはしていなかった。

 もとから話をあまりしないセイネリアだからそれはおかしい事ではないのだが、やはりカリンとしては何か主の様子には違和感があった。

 ただ、主はそんなザラッツとアジェリアンのやり取りをずっと見ていた。茶化すこともなく、何も言わず、表情もなく……それが、カリンは気になった。


「問題はなさそうだな、出てきていいぞ」


 森を出る前に、アジェリアンとセイネリアだけが先に外の様子を見に行って戻ってくる。カリンはザラッツと共に待っていたが、ザラッツがアジェリアンを見る表情は信頼しきっていて、アジェリアンがこの短い間でザラッツにとってかけがえのない存在になったのが分かった。


 言われてザラッツがアジェリアンの方へ馬を歩かせたたのを見て、カリンもそれに続く。森を抜けた先は草原というより緑の丘で、ただその丘にはずっと柵が立っていた。


「国境の柵は一応前のままにはしてあります。ただ向こうにあった砦の門は基本常に開いていて、一応チェックはしますが誰でも行き来が出来るようにしてあります。ですから今は、向こうからこちらに入ってくる者は大抵そこから来ます」


 蛮族達がやってくる恐れのある国境、特に安易に入ってこれそうな箇所には大抵こうして柵が張ってある。乗り越えようとすれば出来る程度の高さしかないが、柵の上を何かが通過すれば知らせるように結界系の術が入っている。

 だからセイネリア達が前の仕事で蛮族のところへ行く時は柵のない谷の方から入ったのだが、今は安全な丘側からやってくるものが多いのだという。


ここはナスロウ領の現状と、ザラッツ&アジェリアンの仲よしぶりを見せるシーンですね、次回まで。

いや本当に穏やかで地味めのエピソードが続いてすみません。

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