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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十八章:傭兵団の章二
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59・顛末

 その夜、セイネリアは幹部会議を夕食後にして、今回の件についての顛末を伝える事にした。ただエル、カリン、クリムゾンはいいとして、今回はかなり動いてもらったからエデンスも呼んだのだが、彼は報告だけならと辞退した。仕事を命じられるのなら会議にも出るが団の動向に関わる気はないという事らしい。


 最初は団総出での報復行動の結果報告――何人殺して何人逃がしたか、それを淡々とカリンが読み上げて行くところから始まり、その後クリムゾンとエルが自分の担当した状況を報告する。

 それが終わってから最後、セイネリアの報告となったのだが、勿論内容はセイネリアが単身で動いた事についてとなる。


「リオを攫ってこちらを呼び出した連中――その中ではアルワナ神官とマクデータ神官、それと手紙を寄こしたキオット・ラグ・カルゾは逃がした」

「わざとですね?」


 そう確認してきたのはクリムゾンだ。


「あぁ、そいつらは殺すと面倒だったし、利用出来そうだったからな。……とりあえず、逃げた神官2人はそれぞれ神殿に問い合わせて名前は特定してある。キオットは解放するときに脅してあるが、なかなか面白い立場の人間で使えそうだ」


 三十月神教が魔法使い達が作ったのものであるなら、各神殿の一番偉い奴は魔法ギルドと繋がっている筈――だからセイネリアは、自分の名前でアルワナとマクデータ神殿のトップに親書を送ってみた。思った通り、黒の剣の主としてセイネリアの名は彼等に伝わっているらしく、それには本人達から直の返事が来た。基本的には謝罪と、神官の命を取らなかった事に対する礼、それから二度とこちらにかかわらせないと約束する内容だったが、これで彼等につながりを作れた事は大きい。ある意味貸しを作れた訳だから、今後何かを頼む事も出来るだろう。


「後、前に言ってある通り連中は2つの派閥に別れていて、今言った暴走した馬鹿連中の派閥と別にもう一つ、恨みはあくまで俺だけで俺だけをターゲットにするという派閥があった。そしてそっちが今回の件の首謀者がいた方となる」


 そこで報告を聞いていた者達の表情――特にエルの顔色が変わった。


「首謀者の名はボーテ・ルオー。アッテラ神官だ。前回のキドラサン領の仕事で、セウルズの弟子だった人物だな。奴自身は単純に師の仇を取るだけのつもりだった」


 カリンとクリムゾンはボーテを実際見て、キドラサン領の問題にもかかわっているから事情を分かっているためそれだけで察する。だから一人事情の分からないエルが顔を顰めて聞いてくる。


「……キドラサンの仕事で、お前、セウルズってのに何をしたんだ?」


 それには手短に答えておく。


「セウルズは現在、領主争いに敗れた長子を連れて領地を出て生活している。ただし、長子もセウルズも死んだ事にしてある」

「それ……お前が殺した事になってるのか?」

「いや、セウルズは長子とその母親を殺して、その罪で自殺した事にした」

「じゃぁなんでお前を恨んでるんだ?」

「俺がセウルズを長子に会わせるために連れていったからだな。止められなかった俺の責任だと、そう考える事自体はおかしくないだろ」

「逆恨みみたいなモンじゃないか」

「俺しか恨めなかったんだろ。別にそれはそれでいいさ」

「だけどよ……」


 言いかけたエルだったが、セイネリアが彼を軽く睨めば口を閉ざした。


「ボーテは俺と戦ってセウルズの仇を取るつもりだった。だから戦いに応じて殺した。これで一応、今回こちらに手を出してきた連中は首謀者が死んで組織も瓦解した事になる。ちなみに現場にはボーテの協力者のアッテラ神官が3人いたが、今回の件を口外せずに以後は手を引く事を約束して解放した」

「それだけで、生かして解放したのですか?」


 クリムゾンは顔には出さないがそう言って不満を露わにした。


「あくまでボーテに協力していただけで恨みはないというのと、少々こちらにも協力してもらう事を約束させたからな。……まぁ、見せしめにする分なら十分殺したし、後は生かしておいてもいいさ。生き残った者はウチの恐ろしさを広めてくれるだけで、更なる復讐なんて考えもしないだろうしな。あぁあと、グクーネズ卿と、他に貴族で奴らに協力していたのが確定してる連中に関しては、このまま無傷では済まさないから安心しろ」


 セイネリアがそれで話を締めれば、それぞれが一度息をついた。


「これで全部終わったって事か?」


 だが不機嫌そうにそう聞いてきたエルに、セイネリアは答えた。


「今回動いてた連中についてはな。ただ少しついでの仕事が出来た」

「ついでの仕事?」

「あぁ、そもそもは単純に仇を取る事しか考えていなかったボーテに、俺の周りにいやがらせをして俺にダメージを与えるように吹き込んだ奴がいる、どうやらそいつはボーセリングの犬らしい」


 エルが息をのむ。クリムゾンでさえ眉を寄せた。カリンも偽名を語った男がボーセリングの犬だという事は分かっていてもそいつが何をしたのかまでは教えていなかったため、そこで表情が変わる。


「なのであの狸親父にも痛い目を見てもらう事にした。カリン、お前の部下を使ってやってもらう事がある。クリムゾン、あの狸親父のところへ行く時にはお前もついてこい」


 クリムゾンとカリンが了承を返して頭を下げる。

 そこでじっとこちらを睨むエルと目があったから、セイネリアは彼にも言っておく。


「今回は完全に裏工作と騙し合いだ、お前に向いた仕事じゃない。お前は普段通りの仕事をしてくれればいい」


 そうすればエルは眉は寄せたものの視線を外して、そうだな、と呟いた。

 それで会議は終わる。終わったと同時にエルは部屋から出て行った。


やっと次回からボーセリング卿を追い詰めに行きます。

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