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黒の主  作者: 沙々音 凛
第三章:冒険者の章一
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25・騎士の笑み

 最初に気付いたのは前を行く騎士の馬が足を止めたせいだった。

 次に騎士が臨戦態勢に入ったのを見て、森の中の気配に気づきカリンは馬を走らせた。


「大丈夫です、貴女は逃げてください」


 カリンが近づいたのを見た騎士がそう言いながら馬を降りる。それでここをつっきるのではなく相手を倒すのだとわかったカリンは、自分も馬を降りて騎士の方に走った。それには、何故、と最初は声を上げた騎士だったが、戦闘が始まればそんな余裕はなくなる。

 相手は5人、装備はバラバラ、服はボロ……とくれば十中八九盗賊だ。

 主が出てくる気配がないという事は、彼は彼で別の者と戦っているか追っていると思っていい。なら早くそちらへ行かなくては――と既に戦闘を始めた騎士を目端に捉えながらカリンは思う。


「お嬢ちゃん、おとなしくしなっ」


 下卑たにやけ顔で襲ってきた男の短剣は左腕につけた盾で弾き、代わりにカリンの短剣が近づいた男の首元を滑るように一直線に走り抜ける。直後に散った血がカリンの肩にかかったが、気にする事なく今度は一度しゃがむと立ち上がる時の反動をつけて次の敵へと跳んだ。


「なんだこの女、ぁ、うぁぁっ」


 男が声を上げた時にはもうカリンは攻撃できる位置にいた。慌てて構えようとする男の顔を盾で殴りつけ、体勢を崩したその腹を蹴りあげた。さらにはそれで腹から身を折った男の背後に回り、腰に括り付けてあったロープを手に取る。あとは男が体勢を整えるより早くロープを絡ませて動きを封じ、その後縛りあげてからカリンは騎士の方に向き直る。それが、最後の男の断末魔の声と重なって――やはり騎士は敵を全員始末してしまったらしいとカリンは思った。


「見事な腕前ですね」


 返り血を鎧に浴びた姿でヘルムのバイザーを上げて笑った騎士ザラッツに、カリンは僅かに眉を寄せた。


「それは貴方にかける言葉でしょう。ただ、あっさり全員殺すのは困ります」

「貴女が一人確保したようでしたので安心して始末しただけですよ。一人いれば十分でしょう」


 騎士の笑顔が妙に気に障る。カリンとしては騎士の勢い的に全員殺しそうだったから急いで一人生きたまま確保したのだ、向こうが本気で一人でも残すつもりがあったかは怪しい。


「とにかくそいつにさっさとやつらの根城を吐かせましょう。おそらくセイネリア殿もそちらへ向かっていると思います」

「……えぇ、そうですね」


 裏のなさそうな笑み……は変わらないものの、何故だか気分の悪さを感じる笑みを浮かべたまま、ザラッツはバイザーを下げて顔を隠す。ただその際、小さく呟いた彼の声をカリンは確かに聞いた。


「助けなどいらないと思いますが……えぇ、そうでなければなりません」



軽く戦闘シーン。相手が雑魚過ぎてすぐ終わりましたが。

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