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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十八章:傭兵団の章二
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15・報告の中

「って感じで、怪しい奴には何か落とすようにしたら、さっさと追い払えるようにはなったんだがね」


 エデンスの報告を聞いて、セイネリアは考える。

 エルはいないが、エデンスが報告しておきたいという事で今日は訓練場に出る前に彼の話を聞いていた。彼はあの会議の後、言われた通り仕事に出るパーティについていっては周囲を警戒してくれたのだが、思った通りほぼ毎回怪しい連中を見つけたらしい。

 最初は指示通りそれをカリンに報告して出発を中止したり、街を出るまで飛ばしたりしていたそうだが、さすがにキリがなくてその怪しい連中に嫌がらせをしてみる事にした。主に彼等の上にゴミを落としたり、ニワトリや砂や石を落としたりというものだ。

 最初は連中も別の場所へ移動したりして粘っていたのだが、ゼル傭兵団に『ウチのクーア神官が見ていた』という手紙を出して暫くすればこちらの傭兵団にクーア神官がいるというのが噂で広まったようで、以後はちょっと嫌がらせをしてやるだけですぐ逃げていなくなるようになったという。


「見てるぞ、という脅しで大人しく退くようにはなったか。それで実際現場の方では問題は出ていないか?」


 最初からつけるのを諦めたとしても、あとで現地にやってきては意味がない。


「そこは皆注意するようにしてるのがいいのか、今んとこ現場での実際の被害は出てないそうだ。ま、向こうも現地に来てからこっちのパーティーを見つけるとなれば結構リスクが高いし、嫌がらせするにしても準備し難いからな」


 つまり今のところはまだそこで執着する程の連中ではないというところか。それとも上から指示があったか。現状嫌がらせ連中の動きはいかにも素人という者ばかりだから、セイネリアでさえまだ予想が絞りにくい。


「それで、実際つけてこようとした連中だが、毎回同じ奴という訳ではないんだろ?」

「あー……」


 それにエデンスは頭を掻いて少し言葉を濁した。


「同じ奴もいた、が……基本は毎回違う奴だ。随分あちこちから恨まれてるな、なんて言ってる場合じゃなく……やっぱり、恨みを持つ連中同士で繋がってるって方がしっくりくるな」

「あぁ、それはまず確定と思っていい」


 だが今のところそれをまとめている首謀者は掴めていない。とりあえずカリンの配下を使ってこちらに恨みがありそうな人物周りを見張らせているが、特に怪しい動きはない。あるいは監視対象者には現状居場所が分からない者も多いから、その中の誰かなのかもしれない。


「とにかく今は少しでも手がかりになりそうな情報を集めるしかない」

「そうだな。俺は引き続き今みたいな対処を続ける感じで……と」


 そこでエデンスが会話を中断して廊下へ続くドアを見た。セイネリアも気づいて同じ方へ目を向ける。

 足音が聞こえる。それは明らかに急いでいて足音というより木がきしむ音なのだが、それがかなりの勢いでこちらに近づいてくる。ちなみにこの階は足音を立てない者でも歩けば音が鳴るように廊下には木を張ってある。だからその人物は基本的には足音を立てない上に、体重も軽めというのが分かる。

 それが誰かも大体わかっていたから、セイネリアはその音が止まった途端に入っていいと声を掛けれた。そうすればすぐドアが開いて、思った通りの顔が姿を現した。


「ボス、エル様に何かありました」


 彼女はカリンの配下、情報屋の方の新人ラディアだ。彼女の仕事は見張りにつかせた情報屋連中からの呼び出し石による連絡の見張り役だから、普通なら最初はまずカリンに報告する筈だった。それが直接セイネリアの元にくるなら――彼女が報告を言い終わる前にセイネリアは立ち上がっていた。


「エルの引かれ石は?」


 すぐにラディアは石を差し出す、それを受け取ってセイネリアはエデンスを見た。


「エデンス、転送だ。まずはここから東の大通りに出る手前辺りに飛ばしてくれ。場所が確定していないから一緒に来てくれたほうがいい」


 エルはアッテラ大神殿に向かっていた筈、だからそこまでの道順で襲撃者が狙いそうな辺りを指定する。勿論引かれ石の指す方向もあっていて、あとはついてから石の指す方向をエデンスに見てもらえばいい。


「分かったよ」


 セイネリアはエデンスの肩に触れる、それと同時にクーア神官は呪文を唱えた。


って事で次回はエル側の話に戻ります。

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