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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十七章:傭兵団の章一
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43・望みとは

 長子サウディン軍を破ったあとシェナン村を拠点としていたゼーリエン軍は、戦闘終了から6日後に村を出た。ただし次の目的地はシェナン村からちょっと進んだアイネイク村で、そこで村長の歓待を受ける事になっているからまた数日はそこにいる事になる筈だった。


 勿論、ゼーリエン軍自体はのんびり進んでいるだけとは言っても、その下ではメイゼリンが各地に使者を送ったり、逆にやってきた使者の話を聞いたりして政治的にいろいろ動いていた。

 なにせセウルズが負けてその下にいた兵が散り散りになっている段階で、もうサウディン側にはこちらの軍と真っ向勝負できるような兵数は準備出来ない。こちらの思惑通り解放した兵士達の大半は軍への復帰を拒絶して行方をくらましたままで、戻った者は者でゼーリエン軍の恐ろしさを説き、戦うより逃げるべきだと味方に話して回っているらしい。実際そのせいで逃げた者も多くいたようで、西軍は中々軍の再編成が出来ていないという報告を受けている。……あるいは出来ていないのではなく、わざとしていない可能性もあるが。


 ただもうこうなれば、後はこのままこちらはゆっくり進軍するだけで向こうが勝手に崩壊してくれる段階だ。現状はすべてセイネリアの思惑通りに進んでいると言っていい。

 セイネリアとしての目的も一応は果たしたのもあって、以後は何もしなくてもいい、というより本音を言えばもうやる気はないのだが。


――約束を、したからな。


 ゼーリエン派を勝たせて次男のゼーリエンを領主とする、それだけなら何もやらなくてももういいだろう。けれど、出来るだけ犠牲を減らすという点と、長子サウディンを助けてやる――その約束を果たすにはまだ動かなくてはならない。


 現状のセイネリアには自発的に何かやりたいと思う事がなかった。

 というか、何をやるにしても剣の力で楽に出来ると考えればやる気が起こらない。だから自分の事に関してなら現状望みなんて何もないのだ。


 だが、他人に関してなら、思うところはある。


 自分の望みのために相応の行動と覚悟をしている人間を見れば、彼等の望みが叶えばいいとは思う。怠惰と欲に塗れた連中が報いを受けて、覚悟と努力の出来る人間が報われるほうが見ていて気分がいい。別に高尚な考えなどはなく、単に気に入った人間が成功して、気に入らない奴が痛い目を見て目の前から消えればいいというだけの話だ。


 だからゼーリエンの覚悟のために動いてやる気はある。あの少年はセイネリアから見て報われるべき者だと思える。だがかといって彼の望みをこちらの力で簡単に叶える気はない。彼が諦めずに望みを果たそうと努力をするなら、相応の結果が得られるようにそれに見合った手助けをしてやる――その程度の話だ。


 そう、望みは自分で叶えるものだ。

 それでこそ心を満たすものが得られる。

 人に叶えて貰った望みなど、叶った瞬間に価値がなくなる。

 自分で手に入れてこそ、その望みが叶った後でもそれに対する喜びと執着が残るのだ。


ちょっと短めでしたが、臨時更新分だったのでよいかなと。

次回はサウディン周りの話。

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