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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十七章:傭兵団の章一
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22・誰もいない1

 シェナン村へ来た第一陣の部隊は、トップのトルシェイが現場の人間ではないと言う事で戦闘方面の現場指揮はその下にいるレナッセとワイクナンの2人にまかされていた。

 彼等2人は最初は少し揉めた事もあったのだが、その後話し合って偵察部隊の指揮と村の警備の指揮を交代で受け持つ事にしてうまくいっていた。

 それが、第二陣がやってきて崩れた。

 第二陣の指揮官のバシルマン・グテが今までのやり方を無視して全部を仕切ろうとしたのだ。


 せめて先に来てここで実績があるこちらのやり方を聞いてから、変更したい箇所を指摘して相談の後に新しい方法で……というのならレナッセもワイクナンも反発はしなかった。偵察部隊は戦闘を避けるという方針が決まってから、敵の偵察ルートの予想、逃げやすさや危ない場合の偵察方法など、こちらは状況に合わせて最適化をして今に至っている。それをまったく聞きもせず無視するのはどうしてもレナッセやワイクナンは納得いかなかった。

 だから当然第一陣側の兵は反発し、そうしていろいろあった末に、第一陣はそのまま今まで通りの偵察部隊を出し、それと別に第二陣の方からも偵察隊を出すというカタチになった。


 勿論だからといって、第二陣の連中を完全に無視する訳にはいかない。先に来ていてこの辺りの地理や状況に詳しい者がそれを味方に教えないなんてのは通る訳がない。だからグテの命令で出た偵察部隊には、以前から偵察に出ているレナッセ隊から一人、案内役として彼がついていたのである。


 彼がレナッセ隊と共に襲撃現場まで戻ってくれば、確かにそこは報告通り何もなかった。だが血の跡などはある、だからそこが現場として間違いはない筈だった。


「全滅したというには血の跡が少ないとは思うが……生き残った連中を捕虜として、彼等に死体を運ばせたか」


 レナッセは考え込みつつそうつぶやいたが、その言い方はやたら歯切れが悪い。

 グテ側の偵察部隊の人数からして、大半が死んだのならその死体の片づけには時間が掛かるし、そもそも死体を持っていく理由が分からない。レナッセの言葉通りなら納得出来なくもないが、実際の戦闘を見ていた者からすればそれはあり得ないとしか言えなかった。


「敵は有無を言わさずこちらを殺しに来ていました。降伏勧告もなかった。……それに私が逃げた段階で、少なくとも半数は既に死んでいたと思います」


 捕虜に仲間の死体を運ばせる場合、死体の方が数が多ければ難しい。だがあのペースで殺されていたなら確実に死者の方が多いとしか思えなかった。


「そりゃ、向こうさんも、捕虜に持たせ切れなかった分は自分達で運んだんだろうさ」

「向うはこちらより人数が少なかった」

「でも捕虜も入れればどうにかなるだろ? それにもしかしたらお前が逃げた後、敵が増えた可能性もある」


 他の者達は現場を見ていないからこそ気楽にそんな事を言ってくる。

 可能性だけなら勿論、それを絶対違うとは言えはしない。けれど彼が感じたあの現場での状況からして、味方は全滅かいいところ運よく数名がどうにか逃げられたかもしれない程度の筈だ。そしてあれが黒の剣傭兵団なら上から聞かされていた人数は20人前後、あそこにいた人数から大きく増えるとは思えない。


「可能性ならいろいろあるだろ、化け物が来てもっていったとか、通りすがりの魔法使いが来て隠したとか、たまたまいたクーア神官が転送で飛ばしたとか」

「いやさすがにそれはないだろ」


 ふざけだす馬鹿までいて彼は舌打ちをしたくなった。

 だが彼が助けを求めるようにこの場のトップであるレナッセを見れば、考え中のようでこちらを見ていなかった。


「……確かに、可能性だけないろいろありますが……」


 だから仕方なく口ごもりつつもそう返せば、ずっと黙っていたレナッセがやっと口を開いた。


「可能性の話はおいておいても、まずどうして敵は死体を持って行ったのかだ」


 考えながらであるから声は呟きに近かったが、皆がレナッセに注目する。


このシーンは次回まで。

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