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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十六章:真実の章
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2・予定の話し合い1

 冒険者として名を上げると、その人間に勝つ事で名を上げようなんて考える馬鹿に命を狙われる事が出てくる。その手の連中から身を守るため、上級冒険者になった連中はまず単独行動をしなくなる。そこまで有名でもない者なら固定パーティーの連中と常につるんで共同生活をする程度だが、ある程度の名声がある者なら傭兵団を作って集団で仕事を受けるようになる。

 なにせどれだけその上級冒険者が強かったとしても四六時中常に戦闘準備が整っている訳もない。一人でいればおちおち安心して眠れもしない。部下がいれば見張りを任せられるというだけでメリットだ。

 そして所属する下っ端にとってはその上級冒険者の名で仕事を取って貰えるから、仕事が取れずに困る事がなくなるのが大きかった。信用ポイントも評価ポイントもまったくなくても組織に所属すれば仕事を貰える。勿論団に報酬を多少引かれるとしても、特に駆け出し冒険者にとっては有難い事であった。


 冒険者事務局側に上級冒険者が単身ではなく傭兵団を登録しておけばちゃんと団単位での仕事依頼がくるようになるし、その方が様々な依頼が来やすくなる。なにせ雇う側にとっても、仕事内容を投げるだけでそれに見合ったメンバーを団側で揃えてくれるから楽でいいのだ。例え欠員が出ても団内でどうにかしてくれるから問題が起きにくいというのもある。

 あとは特に人数が必要な仕事――例えば、以前受けたバージステ砦の傭兵のような場合は、団単位で1つの隊扱いにしてくれるためある程度自由に動けたり、出している人数によっては作戦会議に出席する事も可能となる。


 とにかく名のある冒険者が傭兵団を設立するのは、その上級冒険者本人的にも、下に付く者にとっても、依頼主にとっても都合がいい。だから、『あの』セイネリアが傭兵団を立ち上げるとなれば――希望者を募ればかなりの人数が集まりそうではある……のだが。


「募集はしないぞ」


 傭兵団を作るから手伝えと声を掛けられ、こうしていつもの酒場に呼び付けられて団の方針についていろいろ話していたエルだったが、あっさりとそう言ってきたセイネリアに思わず顔をひきつらせた。


「え? 知ってる奴だけに声掛けるって事か? それじゃ固定パーティーとあんま変わらねぇじゃねーかよ」

「俺だけじゃなく、俺が知ってる人間からの紹介ならアリだ。実際採用するかどうは一度俺が見てからになるが」

「んじゃ俺に声掛けてきた奴らについては……」

「お前が仲間にしてもいいと思った奴なら会うぞ」


 それなら一応こちらの面子は立つか、とほっとしたエルだったが、それでもセイネリアのお眼鏡にかなうような連中はそうそういないだろうな……とも思う。


「つまり少数精鋭的な感じの傭兵団にする訳か、まぁお前の決めた方針ならそれでもいいけどよ。ただ強くなくても下っ端はいたらいたでいろいろ便利だぞ」

「別に、団員を一切募集しないと言ってる訳じゃない。準備が出来るまではそこまで人数を集めたくないだけだ。……勿論、俺が傭兵団という形で作るならそれなりの規模にはするつもりだ。だがそのためには建物なり資金なり、いろいろ準備がある」


――あぁ成程ね。


 傭兵団についても『決まり』というのがいろいろある。10人前後、もしくはそれ以下の小規模な傭兵団なら特に規制はないが、数十人、百人超え規模の傭兵団となるとさすがに国側が管理のためにいろいろ規制事項を作っている。その中でも厄介なのは団の拠点を作る場合で、所属人数が30人を超えるような規模になったら首都では特定の区画にしか認められていなかった。区画自体はいわゆる西の下区の中央区に近いあたりだが、治安云々はともかく、その辺りにいい場所を確保して皆を収容できるだけの建物を作るとなれば……そら簡単に用意できるものではない。


「そのあたりは……お前が受け継いだっていう情報屋の方からどうにか出来ないのか?」


 詳細まで知らないが、セイネリアが娼館の女ボスに気に入られている、という話は前からエルも知ってはいた。そこで最近そのボスが死んで、指名されたから組織を継ぐことになった……という話まではセイネリア自身からついこの聞いたところだ。


「当然そっちからいろいろ借りるつもりだが、拠点を作れるアテが出来たとしても使えるようになるのはかなり先になる。そこまでは『使える』人間だけしかいらないな」

「使える人間ねぇ……」


 エルはちらっと周囲を見回す。

 現状、こうして話し合いをしているのはテーブルに向かい合って座っているエルとセイネリアだが、セイネリアの隣にフードを被ったカリンがいるのはいいとして、その後方のテーブルに何故かクリムゾンがいるのが気になっていた。


エルとの話し合いは次回まで。

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