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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十五章:運命の章
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12・魔法使いの家1

――ったく、本当はこの家が何かも知ってるんじゃねぇのか、あの女は。


 外から家を眺めてエルは思う。

 結局、中に入るのはメルーとセイネリア、そしてサーフェスの3人となり、それ以外はまず外で待機という事にした。

 メルーはアリエラの呼び出し石をもっているから中で何かあった時の連絡役として残ったのもあったが、彼女にはもう一つ、彼女にしか出来ない重要な仕事をしてもらっていた。


「こっちは終わったぞ」


 アリエラとウラハッドが帰ってくる姿を見て、エルは手を上げて返事を返した。何かあった時のために彼女にはこの周囲にすぐ結界を張れる準備をしてもらった。一人で行かせる訳にもいかないからウラハッドは護衛だ。

 ちなみにクリムゾンとラスハルカは今夜の夕飯用の狩りに行って貰っている。ただ待っているだけは時間が勿体ないとか言い出したから行ってもらったが、呼べばすぐ帰ってくる筈だ。


 おそらくエルの予想通りなら……今日はここで泊まりだろう。


 勿論家の中を調査してすぐ離れた方がいいという事になれば別だが、そうでなければ今日はここまでだ。先を急ぐなら明るい内に先へ進めるだけ進むべきだが、中の調査は随分ゆっくりやっているようだし、この分では彼らが出て来た時には日が傾いていそうである。

 となればあの女魔法使いなら今日はここまでと言い出すに違いない。さっきまで急いでいたのがここを見つけたからならまず確定だ。


「まだ中からは出てきていないのか?」


 家の前まできたウラハッドにそう聞かれたから、エルは肩を竦めてみせた。


「あぁ、ゆっくりやってるみたいだぜ」

「中で問題が起きてる可能性は?」

「多分大丈夫だろ。セイネリアがいるんだ、何かあったら派手な音の一つくらい聞こえっと思うぞ。お嬢ちゃんの方も何もないんだろ?」


 アリエラがそれに頷いたから、エルも手に持っている自分の冒険者支援石を一応確認した。


「こっちにも何の連絡もないからな、問題ねぇだろ。むしろ問題ねぇから時間掛かってるんじゃね? 部屋一通り見てンならさ」


 そこでバタンと音がしてエルは急いで上を見た。

 そうすれば家の上の方で窓が開いて、そこからサーフェスが顔を出していた。


「おー、どうだ? 何かあったか?」


 こっちから声を上げれば、紫髪の魔法使いの紫の目がこちらに向いた。


「今のところ問題はなさそうだよ。時間掛かってるのは依頼主さんのせいかな」


 その意味をエルはほぼ正しく理解した。ここが魔法使いの家だというなら、あの女が欲しがっている資料とやらがある可能性が高い。それらをかき集めてる、と思っていいのだろう。


「とりあえず、問題なさそうなのが確認出来たら一度戻ってくれねぇかって言っといてくれ」

「了解。無駄かもしれないけど」


 それに乾いた笑いを返せば窓は閉まる。

 そこから割合すぐクリムゾンとラスハルカが獲物をもって帰ってきたが、メルー達が家から出てくるのは更にまた暫く待って……結局予想通り夕方と言える時間になってからだった。

 正直待ち過ぎてやっとかよ、と思ったエル達だったが、ならさっさと夕飯の支度(勿論最低限の事前準備はしていたが)をしようとしたところでメルーが偉そうに声を上げた。


「これから大事な事を説明するからちゃんと聞きなさい!」


 いやもうホントにいい加減にしてくれ、という気持ちだったが、珍しくそこでセイネリアが『これはちゃんと聞いておいたほうがいいぞ』と言い出したからエルは真面目に彼女の話を聞く事にした。


「これ、出発前に皆に渡したわよね?」


 言って彼女が上に掲げたのは木製の鍵のようなものだった。

 確かにそれはメンバーが集まった時に彼女から渡されていたもので、エルだけでなく皆――正確にはセイネリアとサーフェスとアリエラ以外――それぞれが怪訝そうな顔をしながらも頷いた。


「じゃ、まず見て頂戴、説明はそれからよ」


 言うと彼女はその鍵で何もない空間に大きく円を描いた。するとまるでその軌跡をなぞったように空間に光の円が浮かび上がる。そこですかさず彼女は手の中の鍵を今度はその円の中に挿した。


「ト・ポルー」


 呟けば、光の円が弾けてそこには黒い穴のようなものが出来上がった。よく見ればその中には既に本が積みあがっているのが見える。


「それは……異空間に倉庫を作ったようなものか?」


 言ったのはクリムゾンで、魔法とは縁のなさそうな男だっただけにそれは少々意外だった。メルーはそれにやはり満足そうに笑って返した。


「その通りよ、ようは冒険者の荷袋と理論は近いわね。規模を大きくしてそこへ繋げるための方法が違うだけ。荷袋は本人の魔力波長に合わせて開けられるけど、これはこの鍵を使って開けるのよ。方法は今見せた通り、空間にこれで円を描いてその中に鍵を挿してキーワードを言う事。キーワード―は『ト・ポルー』よ。閉じるか、他の誰かが開くまではこの穴は開いたまま。閉じる時はこの穴に鍵を挿してまた同じキーワードを言えばいいの」

「つまり荷物は持ち歩かずにその中へ入れればいいという事か」

「そう、ちなみにこの空間の中は時間の流れがこちらよりずっと遅いから、痛んだ本とかもこれ以上痛まなくて済むという利点もあるのよ!」


キリ悪いところで終わってすみません。

ってことでここから暫くはこの魔法使いの家でのエピソード。


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