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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十三章:騎士団の章二
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42・想定外3

 セイネリアは小屋のあるさらに先、逃げた3人が向かったろう森の奥を凝視する。

 まだ相当に遠いが何か騒がしい音が聞こえる。木にいた鳥の鳴き声は勿論、それらがこぞって飛び立つ音、小動物の鳴き声――ぞわりと肌が逆立つ感覚にセイネリアは言った。


「グリューナとカトンだったな、あんた達はあの小屋に上がれ。他も、戦える状態じゃないと思う奴は上にあがってろ」


 周囲は訳が分からないといった顔をしていたが、その中でリパの女神官グリューナだけはセイネリアを見て言ってくる。


「まだ治療が終わっていません」

「構わない、あんたはまず上へいけ」

「だめです、あと一人で終わりますから」

「なら血止めだけでいい、すぐに上にあがれ」

「ですが……」


 セイネリアは彼女の横にいたレイぺ信徒の男の方へ顔を向けた。


「あんたはその神官を無理矢理にでも連れて小屋に登れ。それと、あんた弓は使えるか?」

「え? あ、使えなくはないが……いや、それよりどういう事なんだ?」

「なら場合によっては使え」


 弓と矢筒を有無を言わさず男に押し付けて、セイネリアは地面に耳をあてた。まだかなり遠いが地響きがする。確実に何かが近づいてくる。


「とにかく言う事を聞け、軽装の奴は下にいるとヤバイかもしれない」


 その頃には周囲の木々からも危険を察した鳥たちが飛び立つ音が聞こえてきたから、他の連中も不穏な空気は感じたらしく、不安な顔で周囲を見回し出していた。

 セイネリアは魔槍を呼ぶと他の連中にに告げた。


「戦える奴は俺のいる場所より後ろに来い、盾がない奴は木を背にしろ、戦えない奴もだっ、各自自分の身は自分で守れよっ」


 何がくるかまでは分からない。だが何かが集団でやってくる。

 ほどなくして手の中にやってきた槍を握り、試しにぶんと横に一薙ぎすると周囲を見る。グリューナとカトンは木の上にいる。それ以外の連中は皆セイネリアの位置より後ろに来ていた。そのメンツを見てからセイネリアは声を上げる。


「走るのに自信がある奴はいるか?」

「あ、は……お、俺は走れるっ」


 返事をしてきたのは例のクズ連中の一人だが、その顔は強張ってはいるが真剣だった。


「ならあんたは隊に戻って全員急いで敷地から出るように伝えろ。間に合えば貴様らの命令違反を手柄に出来るぞ、さっさと行けっ」

「あ、あ、ぁあ、分かった」


 地響きはまだ遠いが確実に近づいてきている。セイネリア以外でも耳のいいものは音の方を見ていた。セイネリアは言われた男が走っていくのを見てから槍を振り上げ、その大げさな斧刃を傍の大木に叩きつけた。


――流石にこれでも一撃では無理か。


 だが木の半ばまでは刃が入っている。セイネリアは槍から手を離してその木に肩から体当たりをした。メキメキと高い音をたてて木が傾く、更にだめ押しで蹴ってやれば木が裂ける音が派手に鳴り響き倒れていった。

 セイネリアはその場を離れて槍を呼ぶ。槍は即手に戻ってくる。それからすぐに両手で握りしめるともう一本、また同じように別の大木に斧刃を叩き込んだ。今度の木は前の木よりは細かったから刃は深くまで入る。それもまた蹴り飛ばして倒した。

 木が倒れた音が地面を揺らす。2本の木はまるで『何か』がくる方向からこちらを遮る堤防になるように折り重なって倒れていた。

 その倒れた2本の木の間にセイネリアは立つ。


「盾を持ってて迎え撃つ連中は倒した木の後ろに入れ、ただし俺の近くには立つなよ」


 地響きは近づいてくる。さすがに今では全員分かっていて、皆が皆音がくる方向を見ていた。言葉を発する者はだれ一人いない。

 ドドドと走る何かの音、地面への振動もそれに続く。そうしてとうとうソレは姿を現した。セイネリアは槍を持って身構える。


――奴らはこれを待っていたのか?


 やってきたのは一言で言えばデカイ虫の群れだった。一匹のサイズは小型の犬程度で、見た目は表面に多少でこぼこがあるダンゴ虫のような連中だ。やってくる速度は速いとまでは言わないが、人が軽く走る程度はある。


次の敵はダンゴ虫?の集団。実際はダンゴ虫程足が多くない上重いので足音がドタドタしてるんですけどね。


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