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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十三章:騎士団の章二
644/1203

27・作戦開始7

「術が掛かった人から行ってくださいっ」

「こっちの術欲しい時は呼んでくれっ」


 傭兵部隊のリパ神官が、手あたり次第に味方に『盾』の術を掛けている。火の神レイペの信徒が味方の剣に加護を入れていけば、剣で相手の槍を叩き斬る者もいる。傭兵部隊の連中はかなり動きの良い者がいるのが目立つ、これはかなりの『当たり』だろう。

 ちなみにクリュースの傭兵や騎士があまり槍をメインに使わないのは、レイぺの加護の術を掛けるのに刃に直接触れなくてはいけないため槍だと掛けなおしが面倒なのと、『盾』の術等の防御系の術や光石で無理矢理距離を詰めたりする事が出来るからである。

 だから戦闘職の連中の間では、槍を使っているのはどちらかと言えばあまり腕に自信がない者――という認識になっていた。砦兵もそうだが、下っ端兵等の数だけ揃えたような連中に槍を使わせる事が多いのもその認識の原因だ。


「もう後は見てるだけですか?」


 先程の弓使いの女が近づいて来て言ってくる。


「あぁ、俺がいかなくてももう終わるだろ」

「少しでも戦績を上げておこうとは思わないのですか?」

「興味がない。だからさっきのも、最後の奴は勿論あんたが片づけたと報告していい」

「やはりわざとですか」

「まぁな」


 女は黙る。傭兵の場合は特に殺した敵の数で特別報酬分が変わるから、最後の1人は礼のようなものだ。

 ただふと思いついて、セイネリアは戦場を見ながらいかにも関心したように言ってみる。


「傭兵部隊の連中は動きがいいな、特にあのリパ神官とレイペの術を掛けてる男、あとはあの大きな盾を持ってる奴もだ、自分の役目がよく分かってる」


 そうすれば、即座に誇らしげな女の声が返ってくる。


「リパ神官はグリューナ・ファンセ。レイペ信徒の男はカトン・パダパカ、盾の男はアグラック・ソトディット・ラクです。皆、まだ上級冒険者ではありませんが、評価はかなり高いです」


 思った通り、この女と彼らは知り合いらしい。というより、パーティメンバーの可能性も高いとセイネリアは思っている。名をあげた連中は腕もよさそうだが、何より状況を冷静に見て役目に徹しているのがいい。傭兵として、パーティとしてかなり長く組んで連携が取れてる連中だというのが分かる。

 セイネリアが思わず笑みを漏らして彼女に視線を向ければ、狩人の女は含みのありそうな目で言って来た。


「彼らの名前は憶えて頂けましたか?」

「まぁな」


 それに女は、まるでこちらに見せつけるようにゆっくり口元を釣り上げて笑った。


「それは良かったです、彼らは覚える価値のある人物ですから」


 その笑みの意味が分かってセイネリアは喉を鳴らす、それから。


「あんたのパーティメンバーか」

「そうです」


 さらりと聞けば思った通りの返事が来て、セイネリアはまた笑う。相手も少々わざとらしさはあるが、見せつけるような満面の笑みを浮かべていた。


「……いいパーティだな」

「はい」


 だが。


「で、あんたがパーティーリーダーか」


 そう聞けば、彼女は少し訝し気に眉を寄せてセイネリアの顔を睨んだ。


「……何故、そう思ったのですか?」

「バルドーから聞いたんだろ、俺がどうでもいい奴は名前を聞く必要もないと言ってた事を。奴と会議で話す機会があった者ならパーティーリーダーだ」

「成程、そうですね」


 今回の傭兵部隊は20人だが、内訳としては3パーティだと聞いていた。いつもバルドーと連絡を取り合っている傭兵部隊の代表は別の男だから、彼女の今の発言がなければ正直セイネリアも分からなかったが。


「パーティーリーダーが単独行動をしててもいいのか?」

「問題ありません、アグラックに任せてあります」


 まぁリーダーが狩人なら、前衛と離れて後方にいる事も多い分、普段から前衛役のサブリーダーに任せる事もよくあるのだろうとは思える。メンバーが各自自分の役目を分かって動けるのなら猶更だ。とにかく少なくとも彼女のパーティーは、かなり使える味方だと思っていいだろう。


このシーンがあともうちょいあるので次回までを「作戦開始」にしようかな。


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