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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十三章:騎士団の章二
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23・作戦開始3

 偵察部隊に入るのは大抵において風の神マクデータの信徒が多い。あとはカリンのように専用に訓練された者か。ベストはクーア神官だろうが、余程の大規模作戦か指揮官が高位貴族でもない限りはわざわざ貴重な彼らが呼ばれる事はない。

 風の信徒は大抵風の補助で足を速くする事が出来る。巧い使い方が出来る者だとそれで身軽に高い場所に飛び乗ったりもできる。あとは敵に対して匂いを伝えないようにしたり、自分にくる矢を逸らせる程度の術を持つ者もいるから偵察には最適だ。

 今回、偵察に出されたマクデータ信徒の者はとりあえず足だけは相当速くなるようで、姿が見えたと思ったらすぐ皆が待機している場所に来ていて、速すぎてうまく止まれなかったのか足を止めた途端地面に転がった。


 その様子にあっけに取られて固まっている連中の中、セイネリアは外していたヘルムを被る。


「急げ、敵が来るぞ」


 言えば、気付いた連中が焦ってバタバタと準備を始める。

 セイネリアは地面に転がった男のところへ行くと、ベルトを持って持ち上げて起き上がらせた。


「敵は何人くらいだ、構成は?」


 マクデータ信徒の男は、聞かれるといきなり背筋を伸ばして声を張り上げた。


「は、はいっ、敵の数は正確には分かりませんが30以上は確かですっ。恐らくダンデール族だと思いますっ」

「他の連中は?」

「とにかくオ……私が一番速いので先に来ました。他は奴らに見つからないように回り道で帰ってきます」


 それには明らかに砦兵の連中がほっとした顔をする。

 あちこちで声が飛び交い、それぞれの隊毎に集まっていく。マクデータ信徒の男は役目が終わって気が抜けたのか、すこしふらふらしながら仲間である砦兵の隊へと歩いていった。


――事前に大した敵ではないと聞いているから皆、割合落ち着いているな。


 正直ここでセイネリアが思ったのは、この場所で実際に一度敵と戦えるなら丁度良い、という事だった。

 向うが陣を作っているところを攻めるよりここで戦った方が楽な事は確かで、とりあえず実際連中の戦い方を見れるのは有難い。なにせこちらは砦兵と違ってそのダンデール族を見た事がない。彼らから言われた通り本当に原始的な戦い方しか出来ない馬鹿なのか、それとも違うのか、それは実際見て確かめるしかなかった。


「事前に術掛ける奴はさっさと掛けとけよっ」


 バルドーが叫んで隊の連中を並ばせている中にセイネリアも入る。そこへ砦兵側のリーダーらしき男がバルドー目掛けて走ってくる。


「バルドー様っ、まずウチの隊が行きます。そちらはその後からきてくださいっ」

「悪いな、有難くそうさせて貰う」

「いえ、こちらは連中と何度かやりあって慣れてますから」


 そう言ってすぐにその男は自分の隊へと戻って行ったが、それを見送ってからバルドーがセイネリアの方にやってきた。


「お前はどう思う?」


 バルドーの顔は真剣で、少なくとも彼も砦兵のダンデール族を甘くみた発言には引っかかりを覚えているのだろうと分かる。


「どちらにしろ、今までとは違う事を向うがやってきて前が大崩れもあり得ると思っておけばいい。重要なのは何が起こってもパニックに陥らない事だ。なに、幸いこちらは普段のダンデール族を知らない、実際見た連中の動きに合わせて対処を考えればいいだけだからな、どんな意外な手を使われてもいつもと違うなんて驚かなくて済む」


 バルドーは目は笑っていないながらも、唇だけを皮肉げに釣り上げた。


「なーにが『幸い』だよ。結局行き当たりばったりでやれってことか」

「こちらにとっては初めて見る相手だ、行き当たりばったりは仕方ないだろ。それに……その方が緊張感があって集中が持続する」

「……ま、違いない」


 話しながらセイネリアもバルドーも先程偵察の男がやってきた方角に目を向けていた。まだ遠いが人の気配が近づいてくる。セイネリアが剣を抜くと、予備隊の他の連中も剣を抜いた。


敵との接触は次回から。

「作戦開始」4話以上かかるのは確定ですね。

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