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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十二章:騎士団の章一
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19・馬上槍試合

 観客の少ない一日目とは言っても、流石に人気競技となれば剣の試合時と比べて客はかなり入っていた。


「青、ラディ・セルネオ。赤、セイネリア・クロッセス」


 名が告げられてセイネリアは赤側のスタート地点へ向かう。

 馬上槍試合というのは簡単に説明すれば、馬上で槍を持って正面からぶつかり合い相手を馬から落せば勝ちという競技だ。正確にはぶつかり合う、というより馬で突進してすれ違いざまに相手を槍で突き落とすのだが、落馬前提なだけあって当然危険ではある。他国と違ってクリュースの場合はまだ神官達が術の待機をしてくれているから滅多に大事故になる事はないが、それでも事故率は高い。


 ……逆を言えば、だからこそギャラリーには人気があるのだが。


 ただ相手を落せば勝ちとは言っても、安全のため競技用の槍はある程度以上の負荷が掛かると砕けるようになっている。また両方とも落馬しない事が多いから、その場合の勝利条件もルールが設けてあってそれは競技会毎に違う。

 今回の場合、対戦者は赤と青に分けられ、それぞれ槍の先に自分の色の色粉を付けて試合を行う。当然槍の先端は尖ってはいない。互いに相手に槍をぶつけても落ちなかった場合は、鎧についた色粉を見てその位置による得点で勝敗が決まる。一番高得点は胸で、予め鎧の胸には魔法でマーカーが描かれている。そのマーカーのより近くに当てた方が勝ちという訳だ。

 ちなみにここのルールでは盾を持たないから全身甲冑が必須になっているが、盾を持つタイプの槍試合だと当然盾が的になっていて盾に当てないと得点にならない。主に盾ありは全身甲冑持ちの騎士が集まりにくい地方開催の競技会や決闘で多いが事故率は更に高くなる。ある程度名のある競技会だとまず盾なしの全身甲冑必須のルールでやるのが普通だ。


「頼むぞ」


 セイネリアは馬の鼻先を一度撫でてから馬上に上がった。この馬は勿論、例の調査の時から乗っているあの馬だ。気性が荒くて持て余していた馬というのもあって、セイネリアが乗るようになってからはほぼセイネリア専用になっている。気が強いだけあって度胸はあるし、丁度良く前にも馬上槍試合で使われていた事があるという事でそのまま使う事にした。


「ほらよ」


 バルドーが槍の先端に赤い色粉をつけてからこちらに差し出す。この必要があるから馬上槍試合だけは補助役が必要だった。

 セイネリアはそれを受け取って構えを取る。

 正面を見れば向うの相手も準備は出来たようだった。


 開始の風笛が鳴る。同時にセイネリアは馬を走らす。

 ドド、ドド、と蹄の音が響き視界が上下に揺れる。その揺れを下半身で吸収して、脇を締め、体を僅かに前に倒す。

 こちらの馬の蹄の音に、相手の馬の蹄の音が重なってくる。音が大きくなるに合わせて砂埃と共に相手の姿も迫ってくる。

 互いに馬を走らせているから姿がハッキリ見えるようになれば接近は一瞬で、セイネリアは相手の鎧のマーカーを目指して槍を突いた。

 腕に掛かる負荷を握力で止めれば槍が弾ける。

 相手の槍はこちらに当たらなかった。

 馬と馬がすれ違う、それと同時に歓声が上がる。

 飛び散る槍の破片を突っ切ってセイネリアは馬の速度を下げる事なく走りぬけ、相手のスタート地点が見えた辺りで馬に停止の命令をだした。


 前方の審査役が赤い旗を上げる。

 セイネリアは柄だけ残った槍を投げ捨てた。

 それから足を緩めた馬の首を軽く撫で、後ろを振り返れば相手の馬はぶつかった位置から少しコースを離れた位置で止まっていた。その馬上に人影はない。代わりに馬の周囲に兵達とリパ神官が駆け寄っている。

 反対側にいた審査役も同じく赤い旗を上げているのを確認すれば、判定役の声が上がった。


「勝者、赤、セイネリア・クロッセス」


 改めてわっと湧き上がる拍手と歓声に、セイネリアは軽く手を上げて応えた。

 一回戦は一本勝負であるから、これでセイネリアの勝利となる。


馬上槍試合です。今回は競技説明も兼ねているので相手は雑魚ですがわりかしちゃんと試合シーンを書きました。やっぱこういうシーンは書いてて楽しいなぁ。

一日目の試合が終わって、次回はウェイズが話しかけてきます。


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