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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十二章:騎士団の章一
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3・騎士団の日常3

 セイネリアはその男に楽しそうな笑みをわざと見せて言った。


「生憎周囲がクズだからといって俺もクズになる気はないんだ。あぁだが別にクズがクズのままでありたいというのをどうこうしようとは思わないからあんた達は勝手にやってくれてて構わないぞ」

「おいてめぇっ、クズってのは俺たちの事か?」


 男がセイネリアの腕を掴んでくる。だがいくら引っ張ってもセイネリアは少しも動く事はない。あまりにもびくともしなくて焦ってこちらを見上げた男に、セイネリアは冷たく笑って見下してやる。


「怒ったという事はあんた自身がそう思ってるということか。自覚があるなら結構だ」


 カッとなった男が腕から手を離して剣を抜く。けれど剣を振り上げた段階で腹をセイネリアに蹴られて無様に後ろへと吹っ飛んだ。そうすれば残りの連中が立ち上がる。最初にセイネリアに話しかけてきた男も一歩下がって剣を抜いた。


「これは先輩方が稽古をつけてくれるという事かな? それは助かる、一人でただ剣を振っているだけよりその方が面白い」


 嘲笑うように見下して、セイネリアは殊更楽しそうに言ってやる。

 一部の人間がそれに思わず後ずさったが、一番傍にいた男を含め3人がかっとなってこちらに向かってきた。


「この若造がぁっ」


 確かにそれは間違っていないな――と冷静に心の中で思いながら、突き出された剣をセイネリアはかわして踏み込み、剣の柄頭で相手の腹を殴る。それをついでに横へ蹴り飛ばしてやれば、その後ろから掛かってこようとしていた男にぶつかっていって二人そろって地面に倒れた。


「馬鹿めっ」


 最後の一人はセイネリアの後ろに回り込んで剣を振り下ろしてきたが、当然その動きは見て分かっていたから避けられる。向うは大振りを避けられて隙だらけだから、振り返りざまに蹴り飛ばせばやはり簡単に吹っ飛んだ。

 突っ込んだ3人があっさり転がされたせいか、さすがに残りの連中は慎重にこちらを見ていた。その中の一人が剣の柄に手を置きながらセイネリアに言ってくる。


「入った初日から全員に喧嘩をふっかけるとは、随分度胸の据わったガキだな」


 見たところ、その男はかなりデキそうだった。少なくとも突っ込んできた連中より腕はいいだろう。歳も上の方なところを見れば、ここのリーダー格の可能性が高い。


「喧嘩? 喧嘩などする気はないな。俺は先輩方に手合わせをしてもらっているだけだ」

「は……どこまでも物騒な奴め」


 言いながらじりじりと大回りで横にずれながらこちらに近づいてくる。セイネリアは笑って剣を肩に置いてみせると、その男を含めた残り全員に向かって言った。


「なんなら残り全員で一度に来てくれても構わないぞ。……ただ一つ言っておくと、手加減する余裕がなければ殺すしかないのでその覚悟で頼む」


 言って軽く殺気を出して剣を構えて見せれば、全員の動きがその場で止まる。それから暫くして、例のリーダー格らしき男が舌打ちをして剣から手を離した。


「分かった分かった、訓練で死人を出す訳にはいかないからな、手合わせはここまでだ。以後こっちはお前のやる事に口を出さない、それでいいな?」

「あぁ、それでいい」


 セイネリアも納得したのを見せるために剣を下ろす。


「ただ隊としての命令には従ってもらう、それは構わないな?」

「あぁ、正式な命令なら従うさ」

「ならいい。……おら、さっさと戻ってこい。そいつは放っておけ」


 言って彼は近くに座り込んでいた男を引っ張り上げると、地面に転がっている連中に向かって声を掛けた。他の連中もそれで大人しく先ほどまでいた場所へと戻っていく。やはりこの男が現状この隊のリーダーと見て良さそうだった。


――クズの集団だが救いようがないという程でもないか。


 こんな連中でもオツトメ期間が終われば、晴れて騎士様として皆から一目置かれる状態で冒険者復帰となる。そうすればマトモにやる気が戻るのかもしれないが、その我慢してここにいる間を怠惰に過ごして腕を落すのは愚か過ぎると思うところだ。


 そこでふと、セイネリアはあの真面目なアジェリアンがこの騎士団でどう過ごしたのか気になったが――まぁその辺りは次に会った時にでも聞けばいい事だと思った。


初日のシーンはこれで終わり。

次回も出る杭は打たれる……的なお約束展開です(==; いやまぁ打たれたところで引っ込むどころか打った方が壊れる杭ではありますが。


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