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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十二章:騎士団の章一
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2・騎士団の日常2

「とにかくっ、ここが第三予備隊で間違いはねぇよ。どうせ隊長さんは部屋篭って顔出しゃしねぇし、勝手に時間潰してていいぞ。あ、外廊下から見える位置には行くなよ」


――隊長サマがあの調子じゃこうなるのも当然だろうが……見事にクズだけしかいないな。


 予想通りのありさまとはいえ、10人程度もいれば1人2人はマシなのもいるかと思ったのだが。ただそれも仕方ないとは言える、大半の連中がサボっている中で誰か一人でも真面目にやろうとすればその一人は他の連中から睨まれて袋叩きに合うというのはこういう場合のお約束だ。

 とはいえセイネリアは勿論、こんなところまで来てわざわざ時間をドブに捨てる気はなかった。そいつらから少し離れたところまでいって腰の剣を抜く。


 支給されたばかりの新しい剣はキズ一つなく綺麗なのは当然だが、ここには3年近くいて綺麗な剣のままの連中もいるのだろうと思うと苦笑しか出ない。さすがに安物という訳ではないがセイネリアには軽すぎる上に少々長さも足りない剣は、自分感覚的には『やわそうな剣』というところだが、ここにいる大半の連中は連戦で剣が使い物にならなくなる経験などないのだろうからどうでもいい事だろう。


 軽く体を解してから足場をならす。サボっていた隊の連中は嫌そうな顔でこちらを見ていたが勿論それは無視だ。舌打ちや嘲笑も想定内で、少しは申し訳なさそうな顔をする奴もいるかと思ったがいなかった。つまり全員クズで確定だ。


 ただそいつらも、セイネリアが剣を振り始めると表情が変わる。クズでも平民で騎士にまでなった者ならもとの腕はいい筈だった、ならばセイネリアの腕が笑い飛ばせるものでないくらいは分かっただろう。

 セイネリアは無言でただ剣を振る。

 別に真面目に訓練をしている訳ではない。時間を潰せと言われているのだから、その時間を無駄にしないために鍛錬をしているだけだ。


 暫くは長続きはしないだろうと何もいってこなかった連中だが、セイネリアが無視して鍛錬を続けていれば……どうやらそろそろ耐えられなくなったのか、一人が立ち上がってこちらに向かってきた。


「おい、貴様、いつまでやる気だ」


――思ったよりも早いな。


 それだけ不快感が大きいのだろうが、それはそれでまだ多少は見込みがあるとも言えるか。完全に腐りきっているなら数日は放置してこちらが挫けるのを見ているだけだろうから、まだ少しは負い目を感じる気持ちが残っているのかもしれない。


「いつまでと言われても、今日の訓練時間終了と言われるまでだ」

「は、どんだけ真面目ちゃんだよ。いいか、サボってたって誰も怒りはしねーよ、隊長なんか俺らより酷いのは見てきて分かってんだろ? なぁに一人でいい子ちゃんぶってんだ、無駄な事してんじゃねーよ」


 怒鳴りつけてきた男だが、セイネリアの顔を真っすぐ睨めはしない。やれやれこれが冒険者憧れの騎士様とは酷い話だと思いながら、セイネリアはわざと喉を鳴らして笑ってやった。


「……なんだ、何を笑ってんだ?」


 相手は困惑する、セイネリアは笑う。隊の他の連中はざわついて、こちらを不気味そうに見ている。


「いや、真面目という言葉が的外れ過ぎて笑えただけだ」

「はぁ?」


 男は益々困惑して首を横に倒す。それでもこちらをマトモに睨みつけられない段階で小物確定だが。


「あんたはさっき俺に勝手に時間を潰してろと言ったじゃないか。だから俺はこうして勝手に時間を潰してるだけだ」

「何言ってんだ? どうみてもきちんと訓練してるじゃねーか」

「いや、勝手にしてていいというから自分を鍛えているだけだ。だらだら何もしないで時間をドブに捨てるのは勿体ないから自分のために時間を使ってるだけだな」


 そう言って嘲笑の目を向けてやれば男はぐっと言葉に詰まって目を逸らす。

 そこで男の後ろからもう一人が立ち上がってこちらに向かってきた。


「おい、ごちゃごちゃ何言ってんだ、空気読めって事だよ。他の連中にあわせて貴様もテキトーにやっときゃいいんだよ」


まぁ……いかにも過ぎるお約束展開でここから更にお約束手順を踏みますが、この辺り書いておかないとセイネリアの隊での立ち位置があやふやになるのでお許しを。


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