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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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114・騎士団襲撃1

 ザイネッグの村は国境村地帯の隣、つまりザウラでは一番北にある村で、この村の北の外れに騎士団北東支部はある。大昔はここが防衛の要だった事もあるそうで塀や建物は当時のモノを利用しているのだが、現在蛮族の攻撃を退けるのはもっと北にある各砦の役割となっていてここはそれらへの指令塔という事になっていた。

 とはいえ頻繁にこの辺りが襲撃にあっていたのは20年以上前の話で、最近では襲撃といえる程の攻撃を受けることはまずなかった。それでも様々な政治的思惑があって騎士団支部の移転も国境村地帯の廃止もなくそのままだったのだが、実質機能していないだけあって中身はどんどんスカスカになっていった、という事情がある。


「結構あちこちから兵をひっぱってきたみたいだな」


 敷地内のいたるところで篝火が焚いてあるせいでセイネリアでもそれなりに様子は分かるが、完全にその中を見る事が出来るのはエデンスしかいない。彼のそのセリフにだからセイネリアは聞き返した。


「外にいるので何人くらいだ?」


 騎士団北東支部の建物自体はほぼ石造りで頑丈だが、小さすぎて篭って戦えるレベルのものではない。そのため兵は基本外にいる。

 敷地自体は昔のままの石塀に囲まれているのだがその高さは人の身長より少し高い程度で、無駄にやたらと広い範囲を囲んでいるから全ての塀前に兵を配置出来はしない。勿論断魔石なんて設置してないから、エデンスには中が丸見えだ。

 ただひらけた丘の上という地理的な有利さと、だだっぴろく何もない敷地は馬で走り回れるという利点もある。あとは櫓の弓兵配置、設置系の魔法が使える点なども考えれば、当然だが守る向う側の方が有利だ。


「そーだなぁ、50……いやもっといるか。天幕の中にもまだいるからなぁ……建物の中は見えないから知らないが、全部あわせていても100ってとこじゃないか」

「建物内には戦える兵は殆どいないだろ。それでも中にいる連中の護衛用に20人程度はいるかもしれないが」

「やっぱ結構人数いるな、どうするんだ?」

「まずは外の連中を蹴散らすしかないさ……とりあえず兵に関しては逃げたのは追うなと言ってある、狙いは建物に篭ってる連中だからな、馬は何頭くらい見える?」

「あー……馬かぁ、んーと……見えるのは10、1、2、……20はいないな」

「専用部隊がいないからそんなとこだろう」


 こちらにいる蛮族の戦士はおおよそ80人。外にいる連中だけが相手なら悪くない数だが、攻める側の数としては全然足りない。

 とはいえ、兵の質という話になると向う側はかなり怪しい。建物内の隊長周りはほぼ非戦闘員と考えていいし、他は正にかき集めの烏合の衆だ。騎馬がいても専用の騎兵部隊ではないからそこまで怖いものではない。それでも傭兵や、雇われ冒険者が混じっている可能性が高いから個人単位では手ごわい連中もいると見たほうがいい。可能性は低いが、もし面倒な魔法職がいたらかなり厄介ではある。

 それでも、そのあたりも一応想定してはいる。

 だからこそ今回は、セイネリア達も蛮族の恰好までして戦うのだから。


「さて、行くぞ」


 日が落ちた直後のこの時間は、丁度偉い連中が夕飯を食べながら会議をしている頃だ。夜に向けた準備をしている兵達も仕事に追われて気が逸れている。攻めるにはいい時間だろう。


 セイネリアがさっと軽く手を上げれば、黒の部族の男は頷いて傍の男に耳打ちをした。現状、こちらは塀から一番近い左右の森に、部隊を二つに分けてそれぞれ隠れて待機させていた。耳打ちされた男が反対側の森へいる部隊へ知らせるための矢を放った。

 それから間もなく、向う側の森から腰をかがめた集団が出ていく。彼らは黒く塗った大盾を背負っているからある程度闇に紛れられるし上からの矢も防げる。塀までの距離はそれなりにあるが、向う側も塀の外にまで見張りを置く余裕はない。上から見ている見張りはいるだろうがこんなところに千里眼のクーア神官などいる筈はないから完全に日が落ちてからだとどうしても発見は遅れる。


 ただ勿論、発見自体はしてもらわないと困るのだが。


 ある程度まで近づいたところで、にわかに塀の向うが騒がしくなった。警戒の鐘が鳴り出し、遠くからでも兵士達の怒号が聞こえてくる。


「見つかったな、連中大騒ぎで向うの部隊が行った方に向かったぞ」

「どれくらいの連中がそっちへ行った?」

「んー、行った連中と、もとから塀の前にいたのを合わせると全体の半数近くになるってとこかね」


 セイネリアとエデンスはまだ森の中にいた。セイネリアはあくまで蛮族達のフォローにまわるつもりだったから、余程の問題が発生しなければこのまま状況を見て、後行部隊と一緒に突入するつもりだった。


 先行部隊の先頭が塀に到着する。

 だが彼らはすぐに塀を登らず塀ぞいに横に広がっていく。


「お前さんが言ってた通りだ、連中は塀の向うで槍を持って待ち構えてる」


 この規模の高さがない石塀では、中で待っていて敵が塀の上に登ってきたところを下から攻撃するのがセオリーだ。だから槍部隊が待ち構えているのは読み通りである。

 蛮族達ならこの程度の高さは一跳びで上に上がり、そこから中に下りればいいだけだが、上に乗ったところを攻撃されればある程度の犠牲は覚悟しなくてはならない。けれど、逆を言えば塀の上にいる一瞬が見逃されればあとは問題ない。


いかにもこれから始まるってところで終わりですみません(==;

ここから数話かけて騎士団襲撃戦になります。

あ、勿論騎士団側の兵は殆どザウラが出したものです。

ザウラもここで食い止めないと、あとはクバンまで小規模な村ばっかで守れそうなとこがないので。


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