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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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106・会談8

「くそっ、早くジェレ様をよべっ」


 当然だが時間が経てば兵が集まってくる。残り4人だった兵士はそこから2人倒したが、その後4人増えたから今は6人いる。しかも向うは2人倒されたせいで慎重になり、こちらに向かってくることを躊躇していた。もしくは、ジェレ様というのを待っているのかもしれない。


――それまでに掛かってきてくれないと減らせないな。


 ザラッツの目的はレンファンが逃げられるように出来るだけここで兵を足止めすること、出来れば兵を減らすこと。両方を狙ってはいたが、足止めだけでも十分といえば十分ではある。

 そうして思い切って斬りかかってきた一人の剣を弾き、勢いでそのまま突っ込んできた相手の脇を刺して3人目の死体を作ったところで、またどこかで何かが崩れたような大きな音が鳴った。

 それを聞いて、周囲の兵達は明らかに動揺して頭を押さえる。ザラッツには当然それが何かは分からなかったが、おそらくはセイネリアが何かしたことだろうと思うので恐れる事はない。むしろ、彼が元気に暴れてくれていると分かれば笑みが湧く。


「誰も掛かってこないのか? 腰抜け達め」


 挑発するように声を上げれば、兵達は互いに顔を見合わせて止まる。だがそこで向うの奥から強い声が上がった。


「どけ、俺が相手をする」


 振り返る兵達の後ろから姿を現したのは、先程の食事会でザウラ卿の傍にいた男だった。ザウラ卿は蛮族出身者でさえ有能であれば重用してくれる――その噂はこの男のことだろうかと思って見ていたから間違いない。

 そして見ただけで……腕は相当だと分かる。勝てない可能性は高いと思われた。


 だがザラッツの顔には笑みだけがあった。


 何故ならそこで、空がまた黄色く光ったからだ。

 あのクーア神官は言っていた、外に出られたら空が光りだしてまた落とし始めると。つまり少なくともディエナは無事外に出られたということだ。






 今回の件はジェレにとって想定外のことが起こり過ぎた。

 まずザラッツの件だが、あの状況で彼がやれる最悪の事態などスローデンの命を狙うくらいだと思っていた。だから例の光が部屋を包んだ時も真っ先にジェレはスローデンを守るために動いて彼の傍についていた。

 ザラッツがディエナのもとに行ったのを確認した時にそれが違ったことを理解したが、それでも警備兵がいる屋敷の中、最上階の部屋から外まで逃げ切れるとは思っていなかった。

 しかも同時に外で騒ぎが起こって、外の警備をしていた連中がロクに使い物にならなくなっていたのもまた計算外だった。


――これはザラッツの仕組んだことか? それともあの男か?


 何が起こったのかをまだ全て把握は出来ていない。けれど現在、ディエナとザラッツを逃がしたというのが現実だ。兵士を集めてスローデンの警備を確認し、外に出てきたジェレは、そうして呼びに来た兵についてきた訳だが。


――最悪、こいつだけでも捕まえておけば。


 人質になるかは分からないが使い道はある。少なくとも向うの兵士を動揺させる材料には出来るだろう。


「どけ、俺が相手をする」


 言えば、周りの兵達はほっとした顔をしてジェレの為に道を開ける。それでこちらと目があった騎士ザラッツは、静かに構えた。


――確かに、腕は良さそうだ。


 けれどあの男のような不気味さはない。せいぜい腕のいい騎士という程度の男だ。ジェレは両手に剣を抜いてザラッツに近づいていく。湾曲した対の短剣、短剣と言っても通常片手剣より僅かに短い程度の刀身はある。あの男の時は不気味すぎて左は防御用の短剣にしたが、今回はそこまで慎重になる必要もない。腰を低くして相手に向かう……が、そこで空が光った。


「まただ!」

「まさか、また石が降ってくるのか?」


 兵士達が慌てて頭を守る。壁の傍に張り付いたり、木の影にいこうとする。

 ジェレも石が落ちてきていたという報告だけは聞いていたが、今ここで目の前にいる男を逃がすわけにもいかない。そのまま剣を前に出して崩れた壁の向うにいる騎士に向かった。もちろん相手も構えてこちらを睨んだままだが、その唇には笑みがあった。


――何を笑っている?


次回、二人の戦いが軽く入って、『会談』は終わり。

その後にまだちょっとこの件の後始末的な話が入りますが。

でもセイネリアの反撃はこの後からが本番です。


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