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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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104・会談6

「侵入者だ、応援を呼べっ」


 新しい連中はまだ冷静らしく、連絡役として1人が離れていこうとする。それが分かっていたから、セイネリアは正面に向かってきた連中を素通りして連絡役の人間をまず殺した。槍に背を貫かれ無造作に投げ捨てられた仲間を見れば兵士達には恐怖が広がる。一瞬でも体が恐怖で固まった者達は次の瞬間蛮族達の刃に倒れ、兵達はパニックに陥った。

 逃げ惑う兵士達を蛮族達が追う。追いついては殺す。

 まだ実戦経験がロクになさそうな若い兵士では、迷いなく殺しにくる彼らの相手にはならない。次々と殺されて辺りが静かになっていく。


「う、あ……、痛い……だれ、か」


 一旦足を止めて周囲の様子を見ていたセイネリアは、まだ生きている気配に気づいて足元を見下ろした。そうして表情をピクリとも変える事なく槍をそのまま下に突きさす。それで完全に、人間だった者はただの死体になる。


――運がなかった……か。


 蛮族連中の姿は見られてもいいが、こちらの姿を見られる訳にはいかない。

 セイネリアの姿を見られた者は殺すが、この襲撃が蛮族によるものであることは向うに知らせる必要があった。蛮族の姿を見た者を何人か生かしておかねばならない。

 だからセイネリアはそろそろ殺しまわるのを蛮族達に任せて彼らのフォローにまわる事にする。後は彼らに好きに暴れさせて、調子に乗って深追いし過ぎたり、敵に囲まれて窮地に追い込まれたりしないように気をつけてやるだけだ。

 ただ見たところ上からの石を恐れて篭っている連中がまだ多いせいか、どうやら警備兵が一斉に襲ってくるような事態にはならずに済みそうだった。


「今こっちに向かって来ている連中はいません。大抵の警備兵は怖がって建物や屋根がある場所へ逃げ込んでいます。本館から出てきた警備兵も、仲間から外へ出るのを止められている状態です」


 そこで暗闇から声がする、ネイサーだ。ヴィンサンロア信徒である彼は暗闇の中で姿を消すことができる。だから彼には周囲を偵察してもらって警備兵達の動きを確認してもらっていた。


「引き続き見て回ってもらっていいか? 無理ならいい」

「大丈夫です、了解しました」


 罪人の神ヴィンサンロア信徒が使える術は便利だが、他の神殿魔法と違って術を使っている最中ずっと本人は痛みを感じるというペナルティがある。どの程度の痛みなのかは知らないが、だからこそ信徒でも術を多用出来ないとは言われている。そう考えるとネイサーは問題ないのか、そこはセイネリアでは分からなかった。


「あぁそうだ、もしザラッツ達か、一般兵とは違う恰好をしたザウラ側の人間で蛮族出身ぽく見える男がいたら知らせてくれ」

「はい、分かりました」


 返事と共に彼の気配が遠ざかる。セイネリアは空を見上げた。


――上手く逃げられていれば、そろそろ次が始まる筈だな。


 基本作戦の進行を決めるのはレンファンとエーリジャ達だ。屋敷の中でレンファンが派手にリパの光石を使ったらエーリジャ達が光石の矢を放ちはじめてエデンスが石を落す。彼女達が屋敷外に出られたら一度それを止めて、セイネリア達陽動組みとエデンスが敷地内に侵入するという計画だった。


 一度中に入れれば敷地内での移動は転送が使える。千里眼も敷地内なら見える筈であるからエデンスはレンファン達を見つけてディエナを迎えに行く。レンファンやザラッツは自力で逃げて貰うしかないが、その為にセイネリア達が兵士を引きつけておいているという訳だ。


――まだか。


 エデンスが無事ディエナを外に連れていければ、そこからまた光石の矢と小石の投下が始まる筈だった。そこでセイネリア達陽動組みも撤収予定となっていたが、想定よりも時間が掛かっているようだ。


――どちらにせよ、いい加減連中は退かせた方がいいな。


 思った以上に時間があることで蛮族達が暴れすぎていた。今回は彼らを無事帰す必要があるから、まだ警備兵たちがマトモに動けていない間に彼らだけは先に退かせた方がいいかもしれない。


 仕方なくセイネリアは、暴れている連中を追いかけて走った。


次回はザラッツ達の話。

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