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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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96・犯人

 グローディ軍がキオ砦前に陣を敷いて3日目、キオ砦からザウラ卿からの文書を持ってきた使者と、荷車を引いた兵4人がグローディ陣営にやってきた。

 キオ砦にはここへきた当日にこちらから使者を送って、ザウラ卿宛でグローディ卿の名が入った正式な抗議文書を送ってある。そこから考えればそれに対する返答だろうが――ザラッツの元へそれを知らせにきた兵士は、青い顔で向こうからの文書を渡してからこう付け加えた。


「それと……ロスハン様を殺した犯人の首を、こちらに引き渡す、と……」


 ザラッツは渡された文面に一度目を通すと、すぐに外へ向かった。

 臨時に作った柵の前で兵達が集まっている。周囲のざわつきと兵士達の顔をみれば、そこに犯人『だったもの』があるのは即分かる。ザラッツが近づいていけば兵達は道を開ける、ソレを見張っていたろう兵士が敬礼をして報告する。


「特に仕掛け等は見当たりませんでした。荷車にあったものはこれだけです」


 そこに並べられていたのはロスハンの遺品と思われるいくつかの小物と少し特徴のある武器達……そして、34人分の人間の頭部だった。


――これが、戦う理由がなくなる、ということか。


 ザラッツは忌々し気に歯を噛みしめた。それから急に思いついて傍の兵に言う。


「例の証人の様子をみてきてくれませんか。今すぐに」


 証言のしようもない死者の首を寄越したのならおそらく――ザラッツのその考えは正しかった。やがて戻ってきた兵がしてきた報告は、部屋に閉じ込めておいた証人の蛮族が死んでいた、という予想通りのものだったのだから。





 グローディへの『犯人』の引き渡しと同時に、ザウラ全土で今回グローディへ送った公式文書の内容が掲示された。

 当然セイネリアはそれをクバンの街で見る事になった。


 ザウラは地理的な問題もあって兼ねてから蛮族がこっそり入ってきては住みついてしまって困っていた。ロスハンを襲ったのはその連中である可能性が高いとしてタチの悪い蛮族集団を片端から調査したところ、犯人と見られる連中を見つけたためその首を引き渡す――まぁ早い話、トカゲの尻尾切りだ。全部実行犯である蛮族のせいにして自分は無実だと言い放つ。しかも死人に口なしだから真相を確かめる手段もない。捕まえようとしたら抵抗されて殺すしかなかった――という言い分も蛮族相手ならさほど非難される事もないとくる。


「間違いないか?」


 何があってもその場で暴れないと約束をさせて、セイネリアはアザ・ナとヨヨ・ミ、そして黒の民の男を処刑広場へと連れてきていた。ザウラがグローディ側に渡したのは実行犯の首で体はそこに晒してある――という事だから彼の仲間か確認してもらうためだ。


「間違い……ない。皆、だ」


 聞くまでもなくそうだろうとは思ったが、ここで彼らの目で見て確定して貰う事が重要だった。


 これはセイネリアの想定した通りの事態だ。


 そもそも実行役に蛮族を使った段階でザウラ側のメリットは2つあった。

 一つは当然、どこにも属していない者だから犯人を見つけようとしても見つけ難いこと。そしてもう一つは邪魔になったら全員始末してしまえばそれで済むこと。つまり最初からグローディがロスハンについて抗議して来た場合、ザウラは雇った蛮族達の死体を差し出して身の潔白を証明するつもりだった――まぁ、ロスハンを招待して暗殺し、幼いスオートさえ殺そうとする男ならその程度は当然やるだろうと思っていた、驚く事は何もない。ここまではスローデンが最初に書いたシナリオ通りに進んでいるというところだろう。


 ただスローデンの計画には大きな誤算があった。それをまだ本人は気づいていない。そしてそれこそが貴様の致命傷になるだろうと、セイネリアは怒りに震える蛮族3人の顔を見て思った。


ちょっと今回は短め、ただ話は動いてるかなと。

次回はザウラ卿サイドのお話。

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