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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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88・見えるもの

「なら、そいつから受けた仕事で、兵士を連れたいかにも身分が高そうな連中を襲った事があるか?」

「……あぁあるぞ、あれは素晴らしい勝利だった。報酬も最高だった」


――これは……確定としてもいいだろうな。


 ロスハンの襲われた現場を見せて確認が取れれば、襲撃犯は彼らと確定出来る。あとはそのジェレが誰かだが……。


「ジェレ? xxx ジェレ・サグ? xxx?!」


 だがそこで、後ろで話を聞いていたヨヨ・ミが声を上げて何かを言い出した。セイネリアの口元が笑みを作る。そこから暫くヨヨ・ミと爪の民の男が言い合っていたが、ある程度話が終わった段階でヨヨ・ミが黒の部族の男を呼んで何かを言った。それから黒の部族の男がセイネリアに説明してくる。


「ジェレ・サグは牙の民の戦士。6年前に出ていった。爪の民、そいつから仕事貰ってたらしい」


 セイネリアは笑い声をあげないように気をつけなければならなかった。まだ確定出来ないがこれでそのジェレ・サグがセイネリアに接触してきたあの男だという可能性があがった。もし本人でなくとも、あの男と直接つながっている誰かの可能性は高いと思われる。

 なにせ、エーリジャがあの男を見てあげた部族の候補の中にはセセローダ族の名前もあったのだ。だからこそ可能性的にこの爪の民の男に会って直接話したかったというのがある。ここまで材料が揃えばあとは確定するだけだ。


「こちらはさっきの仕事があんた達の仕業だというのを確認したい。それと例のジェレという人間がこちらの知っている奴であるかどうかも確認したい。そのためにお前をクリュースに連れて行きたいんだが……」


 セイネリアの言葉に、言われた男の目が見開かれる。ここから出られるかもしれないという状況に、男の表情に生気が宿った。


「本当にクリュースに連れていってくれるのか?」

「あぁ、俺と一緒なら安全にザウラまでいける」

「分かった、少し待て」


 そこから今度は爪の民の男がヨヨ・ミ相手に交渉を始める。その経過は例の黒の民の男から聞く事が出来て、セイネリアも途中で多少口を出した


 そうして結局、爪の民の男――アザ・ナというらしい――の身柄を一時的にセイネリアが預かってクリュースに連れていく事には了承が得られた。ただし代わりにその見張りとしてヨヨ・ミも連れて行く事と、彼がクリュースにいる他の爪の民に警告をしにいくのに協力する事を誓わされた。とはいえそれは逆にこちらにとっても願ってもいない事であった。






 レンファンはザウラに来てから少し不思議な気分を味わっていた。

 なにせ、この領主の館に住む人間達の未来が綺麗に二分されるからだ。雑用をする女官や侍女達、いわゆる下っ端連中や文官などは未来を見ても別段変わった事はなく、同じ仕事をしているようなモノが見えるだけだ。

 けれど領主であるザウラ卿は言うまでもなく、一部の兵士や彼の側近らしい人間達の未来は見る度に違っていて予知としてはアテにならない。だが考えれば……未来が変わらない連中は領主に何があっても仕事が変わる訳ではない立場の人間で、未来がコロコロ変わるような連中は領主がどうなるかによって運命が変わる者だと言える。


 つまり、未来が変わる連中は領主の直属の部下と考えて構わないのではないか?


 そう考えれば一見、ただの下っ端警備兵に見えて『怪しい』と思える人間が分かる。例えばディエナの部屋前の警備は二人付くのだが、一人は必ず領主の直属らしい人間で、もう一人は本当にただの一般兵という組み合わせになっている。

 更には先日、商人らしい恰好をした二人組が廊下を歩いていたが、その二人もその基準でいえばスローデンと直で繋がっていると考えられた。恰好からすれば情報屋あたりだろうか。それもあってレンファンは、出来るだけここの人間を見るために洗濯やゴミ捨てなどの館を歩き回れる仕事をあえて引き受けていた。


 そうして今も一人……向こうから歩いてくる男をみてレンファンは考えた。

 レンファンが見ている範囲でこの男がザウラ卿の傍にいるのは見た事がないが、この男は確実に彼の直属の部下だ。しかも相当に近い――なにせザウラ卿の後ろに立つ姿と、ザウラ卿に剣を向ける姿が見えたのだから。


――この男がザウラ卿を始末する未来もあり得るというなら……少し揺らしてみるのはありかもな。


次回はレンファンとこの男の会話シーン。


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