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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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84・退場1

 予想通りの内容だ、とカリンは思った。

 予想通り過ぎて主に報告するまでもない。だからここからどう動くかも全て予定通りでいい。

 現在、ザウラ側の間者だと分かっていて放っておいているのは二人。顔も所属も分かっているからわざわざ追いかけて正体を掴む必要もない。セイネリアからの指示ではザラッツと接触するまでは好きにさせろ――だが、接触したら即座に退場させろとも言われている。ただしそれは接触した翌日以降、つまり明日決行で構わない。


 だから彼女はザラッツを追った。


 主の指示ではザラッツは放置しておいていいとの事であるから、これは命令外の行動ではある。主があの男を信用しているのかそれとも裏切っても構わないと思っているのか、それは分からないがザラッツが裏切りそうかそうでないのか、その様子をカリンは出来れば確認したかった。


 騎士ザラッツは真っすぐ自室に帰ると暫く起きて何か作業をした後に就寝した。

 そうして翌日は何事もないように同じ時間に起き、日課通りの早朝鍛錬をし、グローディ卿にも、その家族にも普段通り接していたのをカリンは確認した。


「おはようございます」


 そうして最後に、執務室に一人で向かうザラッツに、わざとカリンは一人で挨拶の声を掛けてみた。

 周囲に人はいない、こちらにザウラの者との話を相談するなら丁度良い状況だ。


「あぁ、おはよう」


 けれど彼はただ笑ってそう返すとカリンとすれ違って去って行く。

 カリンは溜息をつくと彼とは逆の方へ歩き出した。


 どちらにしろ、こちらの今日の予定は変わらない。






 さて、そろそろ頃合いかな、とエルは背伸びをした。

 部屋を出る前に鏡を見て、ちょっと表情の確認をしてから両肩を軽く回す。さって、行くかと自分の得物の長棒をくるりと回し、肩に置く。これから使うのだからいつも通り背に差す必要はない。


 中庭に出ると兵士達が訓練をしていた。

 カリンからの情報通りだと例の男がいる筈で――見つけてエルはにんまりと口元を緩ませる。やはり人の間を取り持って精神的にイライラするよりこういう仕事の方がいい。いくらパーティの仲裁役で重宝されてきたとはいっても、本来のエルは戦神アッテラの神官だ、うだうだ考えて疲れるより体を動かした方がやる気が出るし、やり遂げた達成感がお手軽に味わえるような分かりやすい仕事の方が楽しいに決まっている。


「おー、皆がんばってンなぁ」

「おや、これはエル様」


 そういって振り返ったのはこの隊の隊長である騎士の男だ。

 彼はアッテラ信徒であるからエルにはいつも敬意を払ってくれる。ついでに平民出だから話も分かる。平民は重要な地位につけないとされてはいてもそれはあくまで国の機関の話で、地方領主の権限内での人事は勿論領主が好きにしている。グローディ卿はそこまで権威主義者ではなく、ついでに若い頃は割合やんちゃだったらしいのもあって、特に軍部関係の役職については余程上でない限りは平民出の人間の方が多い。


「邪魔して悪いな。いやー、このところ部屋に篭る事が多くて俺も体動かしたくてさ、丁度訓練中みたいだから俺も混ぜて貰おうかなと」


 言ってウインクすれば隊長である男はにやりと笑う。ザラッツの下にいるだけあって彼も基本真面目なのだが、アッテラ信徒であるからには考えるより思いきり体を動かしたいという気持ちは分かってくれる。


「それは勿論歓迎です。ですが折角エル様が混じってくれるなら……普段通りの訓練より、やはり軽く試合をしたいところですね」


――おう、そう言ってくれると思ってたぜ。


「いいねぇ、やっぱ訓練より実践だよな! ……それに折角俺がいンだからさ、今回は試合前に両方に強化入れるってのはどうだ?」


 今度は整列している兵達に向かっていえば、彼らからわっと歓声が上がる。


「それは面白いですね。アッテラ信徒でない者にとっては強化を貰った場合の訓練にもなりますし」


 そこで兵達の更に大きな歓声が上がる。真面目でもお堅くないのはアッテラを信奉する者共通であるから、この隊長もこういうお祭り的なノリが基本は好きなのだろう。


――さて、ここまでは予定通り、と。


ここからエル側・カリン側・ザウラの人間、とシーンは割と切り替わりますが繋がった部分なのでサブタイトルは同じで行きます。いやもうサブタイトル考えるの面倒なんで(==;;

次回はカリン側が動きます。


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