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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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21・森から道へ2

 この槍は大勢を相手にするのに楽ではあるが、殺さないようにするのは難しい。いちいち急所を外して突き刺すか柄で殴らないと、相手が巧くない場合は殺す可能性が高い。たださすがに相手もそれなりの冒険者と見えて、無暗と突っ込んでこない程度の頭と腕はあるようだった。


「どういうことだ、あんたは?」

「やつらは盗賊だ、こっちはグローディ卿に雇われてる」


 そう返せば、逃げてきたらしい二人組は息を切らしながらこちらの後方に入る。この二人を追っていた連中も道には出て来ていたが、エーリジャが足止めをしてくれている為、盾を構えながら慎重にこちらに向かってくる。


――すぐ逃げないのは、仲間がいる所為か。


 今までの彼らの行動からすれば、そろそろ不利を悟って逃げるところだろう。だがここに怪我をして蹲っている人間がいるから逃げられない。一人でも捕まれば同じパーティの連中も疑われる。パーティ全員冒険者資格取り上げは避けたいところだろう。


――現状戦闘不能になったのは二人、残り10人か。


 ただし、エーリジャがけん制程度で怪我を負わせた軽症者もいるから実戦力は10人分はない。

 後方からの弓の援護があるなら、余程いい腕の連中ばかりが相手でないならどうにか出来る自信はあった。とはいえ殺さず捕獲前提だと厳しいか――考えているところで、盗賊達側の後方から声が飛んだ。


「何してンだ、早くそいつを連れて来なっ」


 言われてすぐ、槍の間合いの外で剣を構えていただけの男が、回り込むようにして倒れている仲間の元へ行こうとする。だがそれをセイネリアは槍を回して柄の部分で叩いてふっ飛ばした。

 それを見て、森から出てきた連中が次々こちらへやってくる。大抵の者は今度は顔を隠していて、リーダーらしい女もやはり顔を隠して森の木の傍にいた。


「俺が抑える、早くっ」


 そう声を上げた男が雄たけびを上げて盾を前に出してセイネリアに突っ込んでくる。見ればその男は兜に全身甲冑とあきらかにケチな盗賊に見えないのはいいとして、装備に自信がある分、多少槍を受けてでもこちらの足止めをするつもりなのだろうと分かった。


――ただの派手な槍ならそれでよかったんだろうがな。


 それだけの恰好なら死にはしないだろ、と槍の斧刃で叩けば、槍は盾を叩き割って鎧にもめり込み、鈍い悲鳴と共に男は倒れた。


――盾がなかったらあの恰好でも死んでたな。


 まったくこの槍は厄介なくらい殺傷能力が高いと呆れつつ、セイネリアは周囲を見渡す。

 敵連中は完全にどう動けばいいか分からず止まっていた。倒された甲冑男に合わせてこちらにつっこみ、仲間を助ける予定だった連中もその場で固まるように足を止めていた。それでも思い切って中の一人が甲冑男に近づこうとすれば、エーリジャの矢が飛んでやはり足止めされる。

 セイネリアは連中に向かって声を張り上げた。


「まとめてかかってきてもいいが、加減出来ないから殺すしかなくなる。死ぬか捕まるか好きな方を選べ」


 すると即座に、ピィっと指笛の音が鳴った。この音は一昨日にも聞いていた、盗賊達が逃げる時に使う音だ。それに合わせて動けない連中を振り返りながらも他の者達は森へと向かう。だが、その連中の足もまたすぐ止まる事になる。


「なんだいっ、お前はっ」


 リーダーらしき女の声が聞こえると同時に、彼女の背後に木の影から唐突に大柄な男が現れてその体を押さえつけた。更には森の方からエル、ヴィッチェ、デルガ、ラッサ、レッキオ、レンファン、砦兵二人が現れる。女を押さえつけているのはネイサーだ、恐らくヴィンサンロアの術で姿を消して近づいたのだろう。


 森へ向かっていた連中が、足を止めて森からも一歩離れる。その際、2人程は道の反対側の森へと逃げようとしたが、それはあっさりエーリジャが足を射って転ばせた。

 セイネリアは再び連中に向けて言う。今度は先ほどと違って落ち着いた声で。


「さて、死ぬか捕まるか、どちらを選ぶ?」


 そこで連中は黙ったまま、捕まったリーダー女の方を見る。

 女の声が舌うちと共に聞こえた。


「降参だ、全員武器を捨てな、死ぬよりマシだ」


盗賊捕獲まで。

次回は場面変わってこの盗賊とセイネリアの交渉シーン。

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