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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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15・朝の会議で

 翌日も空は雲の多い灰色で、時折日が差す程度の天気だった。


「いい盗賊日和……かな」


 朝起きて空を見た途端、思わず呟いた自分の言葉にエーリジャは反射的に苦笑してしまったものだが。


 今日は護衛予定の隊商はないから前回の帰りの時のように旅人のふりをするしかないのだが、それで盗賊達が上手く引っかかって襲ってくるかは出発前の会議が始まる前から皆疑問に思っていた。なにせ帰り道で一晩明けた後に盗賊達はぱったり出て来なくなった為、盗賊討伐のためにグローディ側が何かしているという情報は彼らの間に出回っている可能性があるからだ。

 セイネリアもそれは指摘していた事だから、エーリジャは最初から彼が同じ手を使うとは思っていなかったが……。


「勿論、奴らも警戒してるだろうからな、昨日と同じことをしても出てこないだろうよ。だがどうみても楽勝だと思える人数相手なら黙ってみていられない奴もいるんじゃないか?」


 そうしてセイネリアが告げた今回の案は――エーリジャとエデンスの二人だけで囮の旅人役をする事で、それをセイネリアが街道ではなく森の中から追うというモノだった。

 その他の者達は姿を隠さずに後から行く事になるが、前回のように転送一回で行ける程度の距離である必要はない。とにかく前の二人に食いついてもらうため、盗賊達が警戒して周囲を見て回っても見つからないくらいに十分な距離を取る事にする。なにせ後からくる面子には砦兵もいる上に人数的にもまず手を出してこないと思われるから、そちらが襲われてピンチになるのはこの際考えなくていいという事だ。


 言うまでもない事だが、エデンスがいる段階で盗賊がきてもエーリジャと彼は即転送で逃げられるから囮とはいえ危険はほぼない。逃げられたら盗賊達はアジトに戻る筈だから、隠れていたセイネリアはその盗賊達を追う。エーリジャとエデンスは転送を繋いで他の連中と合流し、引かれ石を使ってセイネリアを追う……という流れだ。


 囮役にエデンスは仕方ないとして、もう一人にエーリジャが選ばれたのは盗賊の発見役だろう。千里眼を持つエデンスは確かに遠見は出来るが視界が限定されるので、特定の場所を遠くまで見る事は出来ても広く全体的に周囲を警戒する事は出来ない。エーリジャが異常を感知して、エデンスが「見れ」ば敵が手を出してくるよりずっと早く敵の動きが読めるという訳だ。


「奴らが出てきたら転送で逃げるのはいいけど、連絡役は一人いれば十分だよね? なら転送で一旦逃げた後、俺も君に合流して追跡に付き合ったほうがいいんじゃないかな?」


 セイネリアの案を聞いてエーリジャはそう言ったのだが、あっさりそれは否定されていた。


「一人の方が動きやすい」


 それは確かに真実だろうけど、状況的にエーリジャがいたほうがいい事も多い筈だ。いざとなれば例の槍を使うからという理由でも、エーリジャは弓だから邪魔にはならない。それでも彼がついてこいと言わないのは――やっぱりこちらを危険な目に合わせないためなんだろうなとエーリジャは思う。


――年下でどれだけ偉そうに指示してきたって、本人が一番危険な役をやるんだからそりゃ文句のつけようがないよね。


 こういう人間には人はついていく。彼についていったらおもしろいだろうなとやはり思う。


「ったく、まぁたお前ひとりで無茶する役かよ。いいか、俺らが行くまで待ってろよ。一人で突っ込むんじゃねぇぞっ」

「状況によりけりだな」

「よっっっっっっっっぽどじゃねぇ限り待っとけ」

「一応そのつもりでいるさ」

「一応じゃねぇっ」


 お節介焼きのアッテラ神官に笑って返す男を見て、皆笑って場が和らぐ。つくづくいいコンビだとエーリジャは思う。きっとエルは最後まで彼についていく気だろうから、セイネリアのような威圧するタイプの人間のフォロー役としては最適だと思われた。


今回の作戦やら話してたら出発まで行きませんでしたね(==;

次から出発してからの話になります。

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