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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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7・シャサバル砦

 もう日は山に落ちて、山から洩れる光でかろうじて真っ暗にまでならない時間、セイネリア達一行はやっとシャサバルの砦の明かりを目にすることが出来た。

 時間が時間だけあってこちらもランプを持っていたから、ある程度まで近づけば向こうの見張りがこちらを見つけて出迎え役の兵が馬に乗ってやってきた。当然こちらの事は連絡が行っていたから砦に着けばすぐに用意されていた部屋へ通された。


「夕食を兼ねてダレンド隊長が今後の予定を話し合いたいそうです。ですので申し訳ないのですが、夕食は一般兵全員分が終わった後となります事をご了承下さい。勿論、準備が出来次第お迎えに参りますので、それまで部屋で旅の疲れを癒していてください」


 それに了承を返せば、砦兵はすぐに礼をして部屋を出ていく。

 こういう場所に仕事でくると、雇われ冒険者というのは正規兵からは見下されることが多いそうだが、ここの兵はそういう事もなくこちらに対する態度は友好的だった。前回の盗賊退治の事を知っているからかもしれないが、ザラッツならこちらを協力者として丁重にもてなせと言っていても不思議ではない。セイネリアに対する彼の個人的な感情はどうあれ、そういう面では真面目で公正な男ではある。


「夕飯で話し合いってことなら酒は抜きか」

「あったり前だろ、明日から即仕事なんだし」

「そらそーだな」


 そんな話をしているのはデルガとラッサで、彼らはアジェリアンと会う前から組んでいたそうだから相方のようなものなのだろう。


「ま、その代わり仕事終わったら宴会の一つもしてくれるだろーよ。そこは期待してていいんじゃねーかね」


 エルがそういえば皆笑う。エーリジャは複雑そうな顔で苦笑いをしていたが、彼としては宴会はいいがまたハメを外し過ぎないように気をつけないとという言葉が浮かんだに違いない。

 ちなみに、男連中は全員まとめて専用の大部屋を自由に使ってくれという事になったが、女性陣――ヴィッチェとレンファンは砦の女性兵と同じ部屋を割り当てられた為ここにはいない。ただそのため鍵は渡せないからと彼女達の荷物だけはこちらに置かれていた。


「とりあえず、確定するのは夕食の話し合いの後だろうが、現在あんたが考えている方針を一度聞かせてもらいたいんだがな」


 そう言ってきたのはエデンスで、マントを壁に掛けていたセイネリアはベッドに座ってから皆に向き直った。


「そうだな。まずは盗賊連中から情報を集めようと思ってる。表向きは盗賊の討伐となるが、最初は捕まえたり殺したりまではしなくてもいい。奴らがどんな連中かを確認するのが先だ」

「どんな連中かってのは?」


 こういう時に皆を代表するように質問をしてくるのはエルの仕事だ。


「一般的な盗賊と同じか、そうでないか。腕や装備の確認、どれくらいの数の盗賊団がいるかなどだ。もしかすると一つの大きい盗賊団が居付いてる可能性もある。だから最初は討伐より、出来るだけ多く連中と会う事を目的としてほしい。現状では二手に別れてそれぞれ盗賊探しをするつもりだ」

「どう分ける気だ?」

「お前たちは慣れた者同士と組んでいた方がいいだろ」


 聞いてきたデルガにそう聞き返せば、彼は隣にいたラッサと顔を合わせて、そうだな、と呟いた。


「ただ戦力的なバランスと連絡の都合を考えて、エーリジャはそっちと行動して貰えるか?」

「了解」


 赤毛の狩人はそれに手を上げる。前回仕事で組んだこともあるし年齢的な部分もあるから、彼なら向こうの連中もうまく引っ張っていってくれるに違いない。


「それと、二手に別れるとは言ったが、基本そこまで離れて行動はしない。エデンスの転送で行き来出来るぎりぎりの距離までだ。こんな調査段階で死人を出す訳にはいかないからな、何かあっても互いにすぐ助けに行ける状況で行動する。そこはあんたに『見て』貰って、離れすぎないように注意してもらいたい」


 最後にエデンスに視線を戻して聞けば、彼も納得したのか、分かった、と返事を返した。


 こちらが予想した最悪のシナリオ通り、ザウラとスザーナが共謀してグローディ領を取り込もうとしてグローディ側の跡取りを始末したというのなら、盗賊はザウラかスザーナのどちらかとつながっている筈ではある。

 まずはその尻尾を掴んでから、そこから辿って操っている連中を探るつもりだった。謀略を崩すには、大本から遠い連中から崩していくのがいい――基本綻びと言うのは端から起こるものであるのだから。


前置きみたいな話ですね。

次回は砦の責任者達との食事を兼ねた会議。状況説明的な話し合いが多くてすみません(==;

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