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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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5・グローディ領の問題2

「しかも襲われた場所は丁度スザーナ領に入ったところで、話を公にするにもいろいろと面倒な事になっているんです」

「スザーナ領とここの関係はどうなんだ?」

「別に仲が悪いという事はありませんが交流が多いとは言えませんね。なにせ領都同士を行き来するのに山を2つは越えないとなりませんから。隣領ですから文書でのやりとりは頻繁に行っていますが人同士を送る事はほとんどありません。対してクバンとの行き来は一応ちゃんと隊商の移動経路になっているのもあって多く、領主同士仲が良いというのが伝統です」


 いくら昔から盗賊がよく出る道だと言っても、正規の警備兵付きの役人や、幾人もの護衛を雇っている大所帯の隊商を襲う事はまずなかったという事で、クバンとキエナシェール間の行き来は昔からよくされていたらしい。


「なら、スザーナとザウラの関係は?」


 セイネリアの言葉にザラッツがわずかに眉を寄せて、少し考えるだけの間があってから答えてくる。


「よくは分かりませんが……おそらく、ウチとスザーナよりはずっと交流があるでしょう。スザーナの領都パハラダはクバンからだと行きやすいですから」

「スザーナの第一王女はザウラの新領主と結婚するそうだが?」


 途端、ザラッツの顔色が変わった。


「……こちらでは婚約の話さえ入っていませんが」

「婚約抜きでいきなり結婚らしい。決まったのはザウラの新領主が決まった直後だ」

「何処から聞いた話でしょう、信用出来る情報ですか?」

「完全に真実だと言い切れはしないが、別系統の情報屋2か所からきた話だからそれなりに信用出来ると思うぞ」


 そこでザラッツは額を抑えて暫く考え込む。

 ザウラの新領主と隣国スザーナの第一王女が結婚、その隣のグローディ領の次期領主は不幸な事故で命を落とし――とくれば、最悪の事態を考えれば浮かび上がる答えがある。


「グローディ卿の息子を殺したのが仕組まれたものだとしたら?」


 セイネリアが言えば、ザラッツはこちらを睨んで歯を噛み締めた。


「最悪ですね……」

「こういう時は最悪のパターンを想定して動いたほうがいい」


 それでまたザラッツは黙ってしまったから部屋の中には沈黙が下りる。ただその状態を、状況を分かっているセイネリアはいいとして他の連中は耐えられなかったらしい。


「……悪ィ、つまり、どういう話になってンだ?」


 エルがこそっと聞いてきたから、セイネリアは他の連中の顔をちらと見てから口を開く。


「つまり、ザウラとスザーナが組んでグローディ領を狙っている可能性がある、という事だな」


 それで他の面々の表情にも緊張が浮かぶ。それを確認してからセイネリアはザラッツに向き直って、まだ考え事をしているらしい彼に聞いた。


「で、俺の予想では、グローディ卿の血筋の誰かとザウラ卿の血筋の誰かが婚約関係にあるのではないかというところなんだが?」


 ザラッツは顔を上げる。こちらを睨んで、思いきり顔を顰めてからひどく苦々し気に答えた。


「亡くなられたロスハン様のご息女ディナエ様と、現ザウラ領主の弟レシカが婚約しています」

「……やはりな」


 これでほぼ確定だろうな、とセイネリアは思った。


「ならまずは、依頼通り盗賊退治だな」


 言うと同時にセイネリアが立ち上がったから、他の連中が焦る。


「え? まさか今からか?」

「ちょっとぉ、休憩もなし?」

「いやその……え? 本気で今すぐ?」


 驚いて騒ぎだす彼らを見て、さすがにザラッツが苦笑して言ってくる。


「……いえ、さすがに皆さんここへ来るまでで疲れているでしょう。部屋は用意してありますのでら明日からで構いません」


 それで皆、ほっと息をついた、のだが。

 その面々に、セイネリアはわざと嫌味にも見えるよう笑ってみせた。


「何、全然疲れてはいないだろう? こういうのは早く動いた方がいいからな、今日のウチに現地近くまでには行っておくさ」


 皆の顔は引きつったが、セイネリアの決定にその場で文句を言える者はいなかった。


途中からシーンが変わらないのは番号つけてる段階でサブタイトルつけるのが面倒になっているのが分かりますね。

次回は領境近くの砦へ向かう道中のやりとり。

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