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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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3・出発前に2

「あの……レンファン、さん。予知の出来るクーア神官で剣士って、その……予知で何か特殊な事が出来たりするんですか?」


 エデンスとの挨拶が一通り終わると、ヴィッチェがレンファンに近づいていくのが見えた。前回の顔合わせの時では席も遠かったし自己紹介はさらりと流したのもあってか、どうやらずっとヴィッチェはそれを聞きたかったらしい。


「あぁ、私は一瞬先の相手の動きを予知して戦うんだ」

「えぇっ、そんな事って出来るんですか?!」

「……私の力はそう使うのが一番有用だと思って、鍛えた」

「すごいっ」


 ヴィッチェは尊敬と憧れの眼差しを向けてレンファンを見る。現状のヴィッチェの腕は分からないが、セイネリアの知っているところではレンファンの方が予知の能力を含めてずっと上であるのは確かだ。年齢的にもレンファンの方が上ではあるし、ヴィッチェのやけに丁寧な言葉遣いはまだ慣れていないからだとしても、この分ならヴィッチェに何か面倒な事を話す時にはレンファンを通せば楽かとセイネリアは思う。


「えー……で、そろそろ出発でいいのか? 俺も忙しいんだが」


 そこで声を掛けてきたのはケサランで、不機嫌そうに腕を組んだ彼は苛立ちを隠す事もなくセイネリアを睨んできた。


「あぁいいぞ、悪かったな」

「まぁ、貴様にはいろいろ借りがあるしな」


 嫌味の笑顔でそう言った彼だが、一応今回、だめもとで急ぎの仕事だからグローディ領まで飛ばしてくれと言ったのには割合すんなりと了承はしてくれていた。――勿論、秘密は守れる面子だろうな、と念を押されはしたが。


「じゃぁいくぞ。各自その輪の中に入ってくれ」


 そのケサランの声に、こちらのパーティとレンファンはさっと輪の中に入ったが、他の人間は不審そうな顔をしてやってくる。流石にこの人数だと送る人間の範囲を指定する必要があるとかで、今回は事前に簡易魔法陣を書いておいたとここへ来た途端セイネリアは説明されていた。

 忙しい、というのは恐らく嘘ではないだろうケサランは、全員が輪の中に入るとさっさと杖を掲げて術を唱える。だから当然――騒ぎになったのは、向こうに着いた直後だった。


「え? 何、何が起こったの?」

「ってここは何処なんだ?」

「もしかして転送されたのか? 何処へ?」


 分かっているメンツは黙っているが、知らないアジェリアンのメンバー達は訳が分からないという事で軽くパニックに陥っていた。だが恐らく、一番驚いたろう人物は青い顔でセイネリアの方にやってきた。


「どういう事だ? 少なくとも普通に飛べる距離じゃないだろ」


 転送能力のあるクーア神官は必ず千里眼も持っている。だから彼には少なくともここがもといた場所――首都セニエティの近くではないとは分かったのだろう。


「魔法使いの転送だ、奴らは記録してあるポイントにはこうして手軽に飛べるらしい。……勿論、これは秘密だ。喋ったら魔法使いから追われる身になるから気をつけてくれ」


 他の者にも聞こえるように言えば、驚いて騒いでいた連中も静かになる。青い顔のままのエデンスはこちらを睨むように見上げた後、大きくため息をついて額を抑えた。


「奴らの転送は距離も人数の制限もなしなのか……まったく、神殿の街間転送がどれだけ手間が掛かってると……馬鹿らしくなるな」


 まぁ彼が一番ショックを受けるだろう事は予想していた。だがだからこそ彼が他言しないだろう事も分かっていた訳であるが。


「魔法使い連中は一般人とは別の常識の中で生きてる。あいつらの事はこっちの感覚で考えないほうがいいぞ」

「そういうものだとは思ってはいたがな……なんでお前は奴らにこんな事が頼めるんだ」

「少しばかり貸しがあるからだ。それでもあまり踏み込むと俺もマズくてな。……黙っていてはくれるんだろ?」


 笑って聞けば、クーア神官の男はこちらをちらと睨んだ後にまたため息をついて言い捨てた。


「当たり前だ、わざわざ自分がみじめになるような話を広めるかっ」

「ならいい」


 それでその話は終わりになった。後は地図を出して現在位置を確認してから、グローディ領の領都であるキエナシェールの街に向かって一行は歩きだした。


グローディ領の話は何度か出ていても領都の名前は今回初……ですよね?(一応確認したのですが自信がなくなってきた(==;)

次回はグローディ卿の屋敷で仕事の話です。


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