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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十一章:冒険者の章八
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2・出発前に1

 今回の仕事をするにあたって、人数が必要という事からセイネリアはバージステ砦の時同様まずアジェリアンに声を掛けた。

 とはいえ予想していたが彼は現在リハビリ中で、やはりまだ仕事をする程の自信はないと謝りながらも断ってきた。ただ出来れば、自分が抜けた事で仕事が減っているパーティの連中を誘ってほしいと言われてヴィッチェ、デルガ、ラッサ、ネイサーの4人が参加する事になった。

 ちなみにリパ神官のフォロはアジェリアンのリハビリを手伝っているからいけないという返事で、アッテラ神官のクトゥローフは既にアッテラ神官のエルがいることと長期の仕事はきついという事で断られた。

 後はレンファンにも声を掛けていたからそれで9人となったのだがもう一人、どうにか間に合って参加が決まり、出発当日待ち合わせの場所には10人が集まった。

 ……のだが。

 当然の事ながら、最後の一人は事前の打ち合わせにも出ておらず、セイネリア以外誰も面識がないから『彼』に皆の不審な目がいくのは仕方がない。

 本人もすぐそれを察したらしく、言われる前に自ら自己紹介をした。


「俺の名はエデンスだ。クーア神官って事で見張りと転送役と思ってくれ」


 それには面々の顔に驚きの表情が広がる。なにせ転送が出来るクーア神官でフリーの冒険者をしている者はほとんどいない。彼らは神殿勤めか力ある貴族に専属で雇われていたほうが安全で安定した生活が送れる、わざわざ危険な目に会う必要がないのだ。


 そのクーア神官エデンスだが――彼は元はシェリザ卿に雇われていた。セイネリアがシェリザ卿のもとへ行く事になった件の時、ラドラグスにアガネルを迎えに来た時の人物だ。

 シェリザ卿の羽振りがいい時にさんざん彼に重用されていたせいでいろいろ裏の事情を知っていた彼は、シェリザ卿の死後行方をくらましボーセリング卿に追われる身となった。とはいえいくらボーセリング卿でも転送が使えるクーア神官を捕まえるのは簡単な事ではない。元から口止めと脅して利用するのが目的であったのもあって、彼がその秘密を他に流している様子がない事から最近では積極的に探してはいなかった――という状況だった。


 転送能力者というのは、仕事に困らないというだけあってやはり役に立つし出来れば手駒に欲しいところだ。魔法使いと常時組むというのはあり得ないし出来れば奴らとは関わり過ぎないようにはしたいから、セイネリアはその男に目をつけた。なにせ彼が表に出てこれない原因がボーセリング卿絡みであるなら、セイネリアなら間に入ってどうにかしてやる事が出来る。追われる身からの解放という手札があれば有利に交渉が出来る。


 だからセイネリアは密かに情報屋を使ってずっと彼の居場所を探させていた。それでつい最近、やっと居場所に当たりを付けられて――仕事を受けてから皆に話を集めるまでの4日は、この男と交渉するために掛かったようなものだった。


「お前の知り合いか?」

「まぁな」


 転送持ちのクーア神官がどれだけ待遇良く生きられるか、それを一番よくわかっているレンファンがセイネリアに聞いてくる。それを見て、エデンスも彼女の服にあるクーアの印に気がついた。


「なんだ、クーア神官がもう一人いるのか?」

「私が使えるのは予知だけだ」

「……成程」


 レンファンは堂々と答えたが、声には妙な緊張感がある。それに気づいたのか、エデンスは肩を竦めて首を振った。


「あー……俺は別にあんたを馬鹿にする気はないぞ、なにせ俺は神殿勤めをしたことがないからな、予知の連中にもそういう奴がいるんだなくらいの認識しかない」


 それでレンファンの表情から緊張が取れる。


「そうか。私はクーア神官だが、冒険者登録では剣士となっている、よろしく頼む」

「ならあんたは俺を守ってくれる訳だな、こちらこそよろしく」


 それで握手をしたことで、他の連中も次々とエデンスに声を掛けていく。もともとシェリザ卿の下ではたまに交渉役もやっていた男は、とりあえず問題なく他の連中ともやっていけそうではあった。


忘れられてるだろーなーな人ですが、実はセイネリアがこっそり探していました。

交渉に関する事はまた後で。

このシーンは次回まで掛かります。


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