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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十章:冒険の前の章
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16・選択肢

 敵の数は『見えた』だけで20人以上、そう聞いた時は背筋に冷や汗が落ちたがいかないという選択肢はエルにはなかった。


「あんたは隠れて援護頼む。向うにも弓がいるらしいから出来たらそいつらを優先で始末してくれ。もし万が一の場合は逃げていいからな」

「……了解」


 赤毛の親父は苦笑して下がった。それからエルは大きく息を吸うと、隣にいる剣士であるクーアの女神官に声を掛けた、いくぞ、と。言われた彼女は目隠しを結んでいるところで、それが済んでから了承の返事が返ってきた。

 それで二人は、まだこちらに気づいていない敵に向かって突っ込んで行く。

 同時にエーリジャが放った光玉付きの矢が飛んで、空にオレンジ色の光が弾けた。


――いっくら人数いたとしても、あいつなら大丈夫だとは思うけどよっ。


 セイネリアの出鱈目な強さをエルは知っている。それで油断するような馬鹿ではない事も、どんな状況でも冷静に判断できる男であることもよく分かってる。樹海の化け物相手でも、バージステ砦でも、大勢に囲まれても平気で単身突っ込んでいけるような規格外の強さで、特に彼が魔槍を使っているなら近くに行ったほうが足手まといになるだろう――それが分かっていてもなお、助けにいかないという選択肢はエルにはなかった。

 誰だって、想定外の何かが起こる可能性はある。

 それが今だったら……いかなければ絶対後悔するに決まってるじゃないか。


「おっらぁ、どきやがれっ」


 声を上げて突っ込んでいけば、空の光を見ていた者達の顔が一斉にこちらに向けられる。わっと、自分達よりずっと多い人数の目がこちらを見て、その数の圧力に足が止まりそうになる。けれどそもそも声を上げたのはこちらに注意を向けさせるためだ。それで少しでもセイネリアに向かう者の足を止めさせる事が出来ればあの男が片付けやすくなる。更には声に気づいて彼からこちらに向かってくれる筈でもあった。


「どけどけっっ」


 長棒の攻撃は人数を相手にする場合は都合がいい。ただし殺傷能力は低いから、敵の数をそうそう減らせられない。ただ回り込んできた者はレンファンが倒してくれるから、とにかくエルは敵が集まっていっている方向――セイネリアのいるだろう場所に向けて道をあける事だけを優先して敵を薙ぎ払う。

 強化は2段、セイネリアのところへ行くまで持てば十分だ。

 力任せに長棒で二人まとめて叩き飛ばせば、敵が払われて前が開ける。

 その先に進む前に横にいる筈のレンファンを見て、彼女が敵を倒したのを確認してから突っ込む。その間に斬りかかってきた奴は腹を突けばその場に蹲った。完全に囲まれるとこれだけの長物は使い難くなるから囲まれ切る前に前に進まなければならない。だが少し進めばすぐにまた敵がいる、倒すために足を止めれば囲まれそうになる。それでもまだ大抵の連中はセイネリアの方に向かっている筈で――考えれば考える程、エルは背筋が寒くなった。


――なんだよこの人数は。


 セイネリアは化け物だが、こいつらも本気で殺しに来ている。恐らくは上級冒険者になったばかりの今が一番のチャンスだと思って――あぁそういや、上級冒険者になったばかりで殺されるケースは多いみたいだから――考えながら、エルは嫌な予感に胃がムカついてきた。


「くっそ、どけってんだろがっ、邪魔なんだよっ」


 長棒を回し、敵の攻撃を纏めて防いでからその中の一人の頭を横から叩く。頭に衝撃を食らえば大抵の人間は一時的に戦闘が出来なくなる訳で、頭を押さえてふらついたそいつの足を払って転ばせてからそれを踏みつけて先を行く。

 レンファンもご丁寧にそいつを踏んでから追ってきて、エルは前に向かって走り込むと、こちらに攻撃するかセイネリアの方に向かうか迷って立ち止まっていた連中を棒でまとめてふっ飛ばした。


「おいっ、セイネリアっ、無事かっ」


 叫んでまた一人、前にいる人間の壁を突き飛ばして排除すれば、その傍にいた敵が横に吹っ飛んで黒いマントが広がるシルエットが目に入る。


「……まったく、やかましい奴だな」


 こんな状況でもやはり落ち着き払ったふてぶてしい黒い男の声に、エルは笑った。


次回はセイネリアサイドでこの場面から合流して戦闘。

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