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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十章:冒険の前の章
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15・気に入らない3

「うおぉおっ」

「さっさと死ねぇっ」


 芸のない台詞だと思いながらも、さすがにこれだけ人数がいるとキリがない。今度は口元に苦笑を浮かべながら、セイネリアは目の前にやってきた男の肩口から腹にむけて斬りつけると足で後ろに蹴り飛ばす。男がよろけてそのまま後ろへひっくり返り、それを避けてこちらに向かってこようとしていた連中も数歩後退した。


「まったく、よく湧く……」


 呟いて、また唾を飲み込んで息を整える。

 魔槍を呼べばこんな雑魚はさっさと始末出来るが、それでは簡単すぎてつまらない。折角本気で殺しに来てくれてるなら、これを自力でどうにかしてみてこそ生きる意味があると言えるだろう。この程度も生き延びられないなら――この先、きっと自分は簡単に死ぬ、それこそ絶望などする前にだ。


 思っている傍からまた矢が飛んできたからセイネリアは横に飛びのく。どうやら射手は二人いるらしく、角度的に二か所から放たれているのが確認出来た。射手がいるだろう場所の方向を考えて、敵がそちら側に立ってくれるように回り込んでから斬りかかる。今度は珍しくセイネリアより背も幅もあるデカブツだったから盾としては優秀だった……が、その分マシな腕だった事で剣を受けられてセイネリアは舌打ちする。


「流石にすげぇな、だが諦めろっ」


 大口を叩いた後というのは大振りの力技でくるのがこの手の大男のお約束だ。だがこの男はそこまでの馬鹿ではなかったらしく、剣を受けた状態から足を蹴ってきた。セイネリアはそれを躱して後ろに下がる。だが下がって相手から距離を獲り過ぎたせいで矢が飛んでくる。だから更に今度は横に逃げねばならなかった。

 そうすればそちらに回り込んできた別の相手に斬りかかられる。それは躱したが正面からまたデカブツが剣を振り降ろしてきてセイネリアは更に後ろに逃げる事になる。今度は射手がいる方向から敵が来ているから矢は飛んでこなかったが、周囲は完全に囲まれている、逃げる隙がない。


「手ェ出すなよ、俺が仕留めるからよぉっ」


 そこへ嬉々として剣を大きく振り上げたデカブツが突っ込んできた。

 セイネリアは足を広げて腰を落とすと、剣を大きく引いて身構える。そうして振り下ろしてきた相手の剣を、受けるというより引いた分の反動をつけて思い切り叩き返した。


 光るモノが飛び散る。どちらかの刃が欠けたのだろう。

 だがその程度は想定内で、折れなければナマクラになっても構わない。剣の一本程度でここを切り抜けられるなら安いものだ。


 流石に今の勢いを受け止めきれなかった男は、剣を弾かれて剣ごと腕が上にあがる。その空いた腹に剣を刺し、剣を抜く代わりに蹴り飛ばせば男はよろよろと後ろに下がって行く。それに巻き込まれまいと回りの者が騒ぎながら逃げ惑い、密集していた周囲の敵が少し散らばった。


――射線が空いたか。


 だが敵と距離が空けば矢が飛んでくる。だから一旦飛びのいて、矢避けになりそうな敵を探して周囲を見れば……昼間の空に、オレンジ色の光が弾けた。


「なんだ?」


 何が起こったのか分からない連中は困惑して周囲をきょろきょろ見渡す。光は強いものではないから気付かなかったものもいて、そいつらはそのまま突っ込んできた。


 ……勿論、セイネリアにはその光が何の合図かなんて分かっていた。


 遠くで微かに悲鳴が聞こえる、どさりと落ちる音も。ならば恐らく、エーリジャが弓役を一人始末したと考えていいだろう。

 開いていた口を閉じてまた唾を飲む。剣を握る手に力を入れる。地面を踏みしめる。

 突っ込んできた雑魚の剣を受けて弾き飛ばし、そのまま剣で相手の頭を兜の上からぶっ叩いた。刃はかなり痛んでいるが、こういう時の為に出来るだけ重くて厚い刀身の剣を使っているのだ、問題はない。

 頭から吹っ飛んだ男は簡単に地面に転がり、次の敵が突っ込んでくる。それを躱して、その後ろから隠れるようにして飛び込んで来た者の剣も避ける。と同時に、剣を寝かせてその腹を叩いて振り切った。

 がぁっ、と鈍い悲鳴が上がる。斬れないながらも吹っ飛んだ男は無事では済まないだろう。次の敵に備えて大きく息を吸ったセイネリアは、そこでまた何者かの悲鳴を聞いた。……今度は先ほどよりもずっと近い。


「ちっ、仲間かっ」


 聞こえた誰かのセリフと、それに続く喧噪。明らかに少し離れた場所でも戦闘が始まっている。それはつまり――いるのはエーリジャだけではないという事だ。


次回はセイネリアに聞こえた別の場所での喧噪……の方の戦闘シーン。

誰かはいうまでもないですね。


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