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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十章:冒険の前の章
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11・魔女の秘密1

 丁度良く娼館街とはいっても昼間はその手用の部屋を貸してるところも開いていないし、知り合いの娼婦にベッドを貸してもらう訳にもいかない。と、いう事でセイネリアはレンファンに誘われるまま、彼女が取っている宿へと向かった。

 基本的に宿屋街と娼館街は近くはあるから、さほど歩く必要はない。

 魔法使いケサランには正直もう少し話があったのだが、今回は彼女から話を聞くだけでいい事にした。どうせ後でまた呼び付ける事になるだろうし、彼とは他に邪魔がいないところで話した方がいい。




「さて……そろそろ、本題に入ろうか」


 裸のまま椅子に座って髪を梳かしていたレンファンは、髪を縛るとそう言って足を組んだ。たとえ情報のやりとりが目的であっても、楽しむ時は楽しんで事後までそれについて一切話さないというのはこの手の関係では暗黙の了解というものだ。


「確かお前は娼館の生まれだと言っていたな。……なら、魔法使いには合法的に人間一人分の命を貰える方法がある、といえばピンとくるのではないか?」


 セイネリアは目を細めた。成程、それに今まで気づかなかった自分が間抜けだと呆れるくらいではある。


「私はな、前に身ごもった事があって……だがまだ冒険者として身軽でいたかったから魔法使いに頼んで下ろしてもらう事にしたんだ。だが自分の子だったものがどうなるのか気になってしまって……つい、先を『見て』しまった」

「それで、その子供の命が奴らに食われたのを見たのか」


 考えれば当然思いつく内容だ。確かに、殺すだけの命なら丸々魔法使いが貰ったところで問題となる事はない……少なくとも文句を言える者はいない。とはいえ、元からあった彼らに対する嫌悪感が更に増すのは当然の事で、セイネリアは思わず舌打ちした。


「あぁ。それで少し取り乱して魔法使いに駆け寄ってしまって……」

「奴らの『秘密』を知ったものとして監視されるようになったという訳だな」

「まぁな。秘密にしていられるなら記憶を消さなくていいと言われたから……さすがにな、いくら何でも覚えていてやらないと無責任すぎるだろ」


 彼女が予知で見る事が出来たのは幸運だったのか、不運だったのか。彼女のように見えなかった女達は大抵忘れたふりをする。彼女は見えてしまったからこそ忘れてはならないと思ったのだろう。


「成程、だから奴らは嬉々として無償で娼婦達の堕胎を請け負っているのか」


 考えれば、自分もそうして生きる事さえできなかった子供となって魔法使いのエサになっていたかもしれない訳だ――セイネリアは皮肉げに笑う。頭のおかしくなった娼婦に出来た子供を周囲が無理におろさせようとしなかったのは、おそらくおかしくなった原因が原因であるから新しい子供がいれば落ち着くと思ったからだろう。


「あぁ、そしてそれで命を吸えるというなら、女に魔女が多い理由もわかるだろ?」


 確かに、それなら当然出る答えがある。


「自分の子供を自ら食ってるのか?」


 セイネリアが即答すれば、彼女は嫌悪感を顔に浮かべて苦笑する。


「まぁそうと言えばそうだが、わざわざ身ごもってから子供の命を取っているのではない。体内の子供を作る機関に命の元が生まれる都度、自分の魔力として取り込むようにするのだそうだ。つまり魔法使いの女は子供を産めなくなる代わりに自分の寿命を延ばす事が出来るという訳だ」

「それが魔女と言われる程、女に魔女落ちする者が多い理由か」

「そういう事だ。ただでさえ女は自分の外見を気にする生き物だからな、若いままをずっと保つ事が可能でそれがある日保てなくなったら――他の手段を知っていればそれに手を出したくなるだろう?」

「最初から出来ない事なら諦められるが、出来ていたことなら諦められない――か」

「そういう事だ」


 確かに人の心理としてそれは理にかなっている。なまじ若さや美しさを保てたものだから、それが出来なくなることに耐えられないという話だ。


「男女関係なく魔法使いは歳をとってくると魔法を極力使わずに自分の体の維持に回して寿命を延ばすものらしいが……一般的に魔法使いが見た目通りの年齢ではないと言われるのは魔法使いの女達のほとんどがある程度の年齢までは若い姿を保てるからだ」

「成程、ある意味若く見える魔法使いはすべて『魔女』ではあるんだな」

「まぁな。……だが、それを責められはしないだろ」


 どうせ生まれてはならない命を貰っているだけ――そう言われれば文句は言えない。もちろんそれが広く知られるようになれば、その命を貰う手段のない一般人からは嫉妬込みで非難されるのは確実だろうが。


倫理的にはちょっと……かなり黒に近いグレーゾーンという話です(==;;ちなみにレンファンの年齢は25くらいを想定。

このシーンも次回まで。


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