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黒の主  作者: 沙々音 凛
第九章:冒険者の章七
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49・なんでわざわざ2

「くそっ」


 今度は少し大きく踏み込んで彼女のいた場所を薙ぎ払えば、彼女はひょいと跳躍してやはり後ろに下がる。それだけではなく、着地してしゃがんだ体勢から足をそのままバネのように伸ばして即こちらに跳躍してきた。


「うわっ」


 焦ったエルは長棒を回しながら後ろに下がる。辛うじて最初に伸ばされた短剣はそれで叩き落とせたが、もう片方の手にあった短剣の刃がこちらの顔に迫ってくる。必死に倒れる程頭を逸らしてエルはそれを避ける、と同時に棒を地面について体を支え、両足を上げて彼女の体を蹴った。

 手ごたえはあった、が浅い。

 蹴れはしたものの彼女も避けたらしく、相手を蹴り飛ばすまでにはいたらない。エルは勢いのまま後ろに下がると、すぐに棒を回して前面を防御しながら体勢を整えた。

 やはり彼女も下がったらしく、少し距離が空いている。それには少しほっとして、エルは構えを直した。

 とはいえ向うの動きは速い。正直追いきれないとは思う。

 想定していた彼女の動きが槍を持っていた時のモノだからかなりズレがあるのも不味い。


「さすが本気だと強ぇじゃねぇか」


 呟けば、聞こえたのか彼女も唇だけに笑みを乗せる。その直後、横に走り出したから、エルは彼女を目で追った。エルの周囲を回るように走る彼女は足音らしい足音も立てず、気配も殺しているから感覚だけで追うのは難しい。けれども神経を研ぎ澄ませば、ザ、と足を止める音がして、エルは振り向くと同時にそちらに棒を伸ばした。けれど音がした位置から彼女はこちらに向かってきてはいなかった。あの音はそこから後ろに退いた音だったため、エルの棒は何もない空間を突く。しまったと思った時には彼女は既に接近していて、エルは伸ばした棒で地面を突いて、体を押すことで後ろへ飛んだ。

 勿論彼女はすぐにその程度の距離は詰めてくる。

 エルはそこで、地面を足で払って砂を相手に飛ばした。

 彼女の足が一瞬止まる、エルは彼女の足を棒で払う。けれど彼女はそこで跳んで、エルの方へ向かって来た。両手の短剣をクロスさせる形で前に構えた彼女はエルの首を狙っている。すんでのところでしゃがめば彼女の短剣が頭上を払った。


――あっぶねぇ。


 正直背筋がさぁっと冷えたが、エルも当然避けるだけで済ましてはいない。しゃがむと同時に棒を立てて飛び込んできた彼女の体を叩く。彼女は空中で体を捻ってそれを避けたが、さすがに完全には避けられない。叩かれた彼女の体はエルの頭上を通り越すものの着地点が横にずれた。

 エルはすぐに立ち上がって彼女の足を叩く。

 脇腹を抑えながらも、彼女もそれに即反応して後ろへ退いた。


「降参……してはくれねぇよな。こっちは危害を加えたい訳じゃない」


 エリーダはそれににこりと目を細めて笑った。


「まさか」


 言うと同時に彼女はこちらに向かってくる。エルは彼女の体を突いたがそれは寸前で体を落して避けられて、その低い体勢のまま彼女はこちらに突っ込んでくる。

 エルは咄嗟に長棒を立てると、それに体重を掛けて両足ともに上げる。

 彼女の短剣が棒を叩く、上げた足を着地させると同時にエルは彼女を蹴った……がそれは見事に空を切って、一旦後ろに下がった彼女がまたしゃがんでバネのようにこちらに飛び込んで来ようとしているのが見えた。


――やべぇっ。


 けれどそこから彼女がこちらに向かってくることはなかった。

 それどころか何故か、彼女の体は大きく跳躍して離れて行く。直後、彼女がいた場所にナイフが刺さった。


 エルは急いで体勢を直すとナイフが飛んできたろう方向に首を向けた。そこには予想通りカリンがいて、思わずエルは口から大きく息を吐いた。


「武器を収めてください。こちらは貴女を捕まえる気も殺す気もありません。我が主は貴女の主と交渉したいと言っています。そちらの損になる話ではないという事ですので、ボーセリング卿なら必ず応じて下さる筈です」


 言えばエリーダはまた口元だけに笑みを浮かべて、それから武器を腰に戻して手を上げた。エルは今度こそ安堵に大きく息を吐いて、長棒を地面に付いた。


戦闘シーンだけで1話終わり(==;すみません趣味に走り切りました。

次回はまた会議場のセイネリアから見た話。

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