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黒の主  作者: 沙々音 凛
第九章:冒険者の章七
363/1203

29・シシェーレの街にて3

「でも逃げたら仕事失敗なんでしょ?」


 それでもボネリオの顔は真剣だった。


「まぁな。でも無事帰ってきて、少しでも不明だった部分が判明するような情報をもってきてくれっとな、実はそれなりに評価ポイントは貰えんだよ」

「そうなんだ! 失敗したら評価が落ちるかと思った」

「んー失敗して評価が落ちるのは、仲間見捨てたとかいろいろ違反があった場合かな」

「へーでも報酬は貰えないんでしょ」

「そこは仕方ねぇよ」

「じゃぁさ、難易度が上がったら報酬も上がるの?」

「報酬は上がらねぇよ、けど貰える評価ポイントは上がる。国からすりゃ評価はいくらくれてもタダだからな、報酬は労力に見合ってねぇ事も多いけどポイントは労力に見合ったモンがちゃんと貰える。難易度の割に報酬が安すぎる仕事は評価ポイントを割り増しにしてバランス取ってあったり、仕事終わった後にどう考えてもこの評価じゃ見合わねぇって事になれば証明出来りゃ後からポイント追加もしてくれる。そりゃ金はいくらでも欲しいけどよ、評価を上げればいい仕事が取りやすくなるからお前みたく金に困ってないような奴はまず評価を上げる事に専念するといいぜ」


 エルの話に頷きながらも冒険者達からは、何だ坊主は金持ちかぁ、というつっこみが入る。そこですかさずエルが頭を掻きながら気まずそうに彼らに言った。


「この坊主はデルエン卿ンとこの三男坊だよ。ただ冒険者目指してるっていうからさ、こうして冒険者の俺らがいろいろ教えてやってる訳だ」


 それに口々に上がる驚きの声と、立ち上がって近づいてこようとする者達。ただセイネリアが彼らを一瞥すると、そこで足を止めてそれ以上近づいてくる事はなかった。


「まぁ……そっか、てかデルエン卿っていや大変だ、いや、ですね……」


――こんな連中にももう話は伝わっているのか。


 言われたボネリオは途端悲しそうに表情を沈ませる。だがエルがその背を軽く叩くと、少年は顔を上げて周りの者に笑ってみせた。


「うん、父上がそんな事になったのは悲しいけど……落ち込んでても何も始まらないしね。俺は兄上のどちらかが領主になったら邪魔になるしさ、ちゃんと冒険者として生きていけるようにならなきゃって思ったんだ」

「おぅ、がんばれ! ……いや、がんばってください」

「あはは、そんな畏まらなくていいよ、どうせ俺は皆と同じただの冒険者になるんだし」


 領主の息子と聞いて同情と緊張を纏っていた冒険者達は、それで表情が解れて皆でまた笑いあう。


「ボネリオ、こいつらにちょっと顔売っとけ、うまくしたらお前が冒険者になった時に仕事で組んでくれっかもだぞ。この時期にこんなとこにいるんだ、この辺りの情報通で信用出来る奴らに間違いねぇ」

「そうだね、冒険者になったらよろしくお願いしますっ」


 エルに言われてボネリオが頭を下げれば、彼らは焦りながらも嬉しそうに笑う。これですっかりこの少年は地元冒険者達にとっては可愛い後輩扱いだろう。


「よし、坊主、俺も教えてやるぞ、なんでも聞いてくれ」

「え、じゃあ貴方の持ってるその武器は何ていうの、見た事ないっ」

「お、これか、これはなー……」


 この時期暇な事務局の連中と、同じく暇でこんなところにいる冒険者達は、その後はエルが説明する前に我先にと争ってボネリオに話しかけていた。


 そうして夢中で話を聞いていたボネリオだが、宵入りの鐘が鳴って慌てて皆に別れを告げる事になる。エルとボネリオ、冒険者達はすっかり意気投合して盛り上がっていたから、彼らに惜しまれつつ見送られながらセイネリア達は事務局を後にした。帰る道中もボネリオは上機嫌で何度も楽しかったとエルに言っていて、夕飯の最中も街での話や冒険者の質問で盛り上がり、ずっと楽しそうに笑っていた。


 けれど、食事が終わってデナンに呼ばれて奥の間に行ったボネリオは、そこでその日の楽しい出来事が吹き飛ぶような光景を見せられる。


「ボネリオ様、どうぞ、お父上にお会いください」


 廃人になった現デルエン卿、つまり父親が屋敷に帰ってきていて、その変わり切った姿と対面する事になったのだ。


依頼人が冒険者事務局を通して依頼すると、報酬から事務局が手数料をもってく代わりにポイントをつけてくれるってシステムですね。事務局を通さずに仕事を依頼すれば報酬の中抜きはないけどポイントが貰えないから受けて貰い難い、と。

最悪失敗したりした場合も何かちょっとでも成果があれば事務局でポイントが貰えるのはエルの説明の通り。

そんな訳で事務局、つまり国の財政は潤ってる訳です。


次回はボネリオが父親と会うシーンです。


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