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黒の主  作者: 沙々音 凛
第九章:冒険者の章七
352/1202

18・試合……未満1

――ここで試合は望むところだったんだが……。


 ギャラリー付きとは面倒だ、とセイネリアは内心思う。

 セイネリアとオズフェネスの試合なんてやるのなら、ぜひ兵達にも見せてやりたい――そうファダンが言った事で、二人はわざわざ庭から門前の広い場所へ行ってやる事になってしまった。


「術あり、三本か?」

「いや、一本でいいだろ、長く見世物をやる気はない」


 セイネリアの言い方にファダンが苦笑してオズフェネスを見る。それに彼も彼で笑って答えた。


「確かに一本の方が良さそうだ、ここであまり騒ぐのもよくないだろうし」

「……一応あまり騒ぐなとは言っておいたんだがな」

「無理だろ」


 あっさりセイネリアが言い切った事でまたオズフェネスは笑う。

 そこで二人して一度拳を軽く合わせるとそのまま別れて距離を取った。折角広く場所を開けてもらったこともあって少し多めに離れた位置から向き合い、互いに剣を頭の位置へもちあげて剣先を前に出して構える。どうやら向うは術ありでも初っ端に使う気はないらしい。


「はじめっ」


 合図はファダンが、それで二人してゆっくりと動き出す。

 互いに相手の手の内を知らず、けれど互いに相手は強いと分かっている。ならばいきなりぶつかって剣を合わせるのではなく、自然警戒して相手の出方を伺う事になる。

 剣を持つ構え、足運び、そしてなにより持つ空気感。相手の一挙手一投足に注意してその実力を探りながら近づいていけば、相手の息遣いさえ知覚できるところまで来て緊張が高まる。

 ぎりぎりの距離までくればその距離を保ったまま互いに横へと動き、仕掛けるタイミングを見計らう。

 先に仕掛けてきたのはオズフェネスの方だった。

 とはいえ恐らくは誘うための一振りでそこまで力は入っていない。セイネリアはそれを軽く弾くと一歩踏み出しそのまま真っすぐ剣を相手に向けて伸ばした。


――望み通り誘われてやるさ。


 勿論それは剣を軽く当てて逸らしてから避けられる。当然大きな動きをした後には向うがその隙を狙ってくるが、それもまた予想の内だ。

 横から胴を叩いてきた剣はマントの下でセイネリアの剣が受ける。向うにはマントのせいで見えにくかっただろうが突きなら戻すのも早い。来ると分かっている攻撃なら十分間に合う。そのまま体勢を変える事でマントをひっぱれば、オズフェネスは一度引いて距離を取った。


「やはりその偉そうな恰好は見た目の為だけじゃなかったか」

「当然だな」


 肩から腕毎隠しているマントは当然こちらの腕の動きを隠す為で、使えるものなら何でも利用するのがセイネリアの戦闘スタイルだ。姑息といわれても別に構わないが、こちら側も動きにくいというデメリット込みで使っているのだから文句を言う方がただの馬鹿だ。

 ただ、この手のイレギュラー要素は正統派騎士には効果が高い。

 案の定先ほどよりも警戒している顔をしたオズフェネスは、またゆっくりと横に移動し、慎重に距離を縮めようとしてくる。だから今度はセイネリアの方から仕掛けた。


 一歩大きく踏み込んで、頭の右側横に構えていた剣を少し持ち上げてから勢いをつけて右上から左下、右利きの人間なら最大の力が入れられる方向へと振り下ろす。もちろんそんな大振りはあっさり受けられるが、それでも受けたオズフェネスの剣は大きく下がり、驚愕を顔に浮かべて彼は体勢を崩した。


 技術だけを取るなら、オズフェネスの方が上だろう。

 だが力でなら勝てる。


 だからこそ一番力が入る方向から叩いた。初めてマトモに受けたのもあって、思惑通りに彼はこちらの力を見誤ったという訳だ。


「ぐぉっ……かっ」


 それでも流石にここでは英雄と呼ばれるだけの男ではある。

 歯を食いしばって低い体勢になりつつもどうにか押された剣を止めた。


このシーンは全3回、でも戦闘シーンは次回まで。

キリ悪いところで次回へ続くですみません(==;

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