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黒の主  作者: 沙々音 凛
第八章:冒険者の章六
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48・侵入3

「エル、その石、縦にしてみてくれないかな?」


 引かれ石というのは基本的に平べったい。エーリジャに言われて石を縦にしてみて、エルは彼の意図を理解した。


「あぁ成程、下って事か」


 ハッキリ下を示して光る石を見て、エルは廊下の先に目を向ける。


「ならちょっとあの階段下りてみるか?」

「そうですね、魔法は使わない方がいいと言えばいいですから」


 そういう事で決まれば後は早い方がいいと、さっそくエルは階段へと向かう。気配から後ろもついてきているのを確認し、階段を下りて行く。下り階段は長く、深く、終点は遠いが一応明かり用のランプ台がついているから下りきれば扉があるのが見えた。


「あの扉を開けたらイキナリ敵が、なんてこたねぇだろうな」

「えぇ、敵、はいないようですが……」


 クーア神官の場合千里眼と転送はセットだそうだから、転送が出来るフロスも扉の向うが見えるのかもしれない。だからそれを信用して、下り切ってからエルは皆が下り切るのを待って扉に手を掛けた。

 軽く引っ張れば、ガチ、と音を立てて扉が動く。そこで止まった感覚がないからかんぬきとかは掛けられていないだろう。


「開けるぞ」


 だが、開けた先の部屋は真っ暗で、階段からの明かりのおかげで僅かに何もない空間があるのが見えただけだった。


「倉庫か何かかね」


 その呟きが部屋の中に響いて、これは思ったより広そうだと思いながら部屋の中へ入っていく、だがそこで。


「エル、だめだっ」


 聞こえたエーリジャの声に振り向きかけたエルは、そこで気配に気づいて長棒を前に出して回した。手に返る手ごたえと同時に、ウ、と何者かの声が上がる。だがそれに追撃を掛けようとすればそれは影に逃げ込んで姿を消した。


――影に消えるってのはヴィンサンロア信徒だっけか。


 なんでそんなモンがこんなとこにいるんだ、と思えば、当然導き出される答えがある。


――待ち伏せされたか。


「フロスっ、穴作ってくれ、すぐ逃げンぞ。とにかくここはマズイっ」


 叫んでエルは部屋から出ようとしたが、そうすれば当然また影から見えない何者かが攻撃してくる。


「くそっ」


 何せ攻撃者の姿が見えないから防ぐのが精一杯だ。しかも正確に攻撃そのものが見えていないから、防ぐといっても気配のある方向に長棒をぶん回すくらいしかやりようがない。更に言えば攻撃者は一人じゃない。また逃げて影に消えた者に向けて棒を伸ばせば背後から気配を感じて、エルは急いでしゃがむついでに足で床を大きく払った。

 その足が何かを蹴って、何者かが倒れる。すぐに起きあがれないでいるそれの胸に長棒をつきつけながらエルは立ち上がった。


「何でここにいた?」


 だがそこでまた背後に気配を感じて、エルは仕方なく長棒を回して背後を攻撃すると、同時に押さえつけていた男の腹を踏み越えてから振り向いて構えた。とはいえそうして開いた扉の前を見たエルは、そこで舌打ちをする事になる。


 扉の前に見える影は魔法使いとエーリジャの二つ――の筈が、少なくとももっと大勢いるのは分かる。そこから更に扉が大きく開かれて、階段の明かりだけでないランプの明かりが入ってきた事でその場の様子がハッキリ確認出来た。


「くそったれが」


 この屋敷の警備兵らしい者達に拘束されているフロスとエーリジャ。

 そして更にエルに向かって歩いて来るもう一人の影がある。


「状況が分かったら大人しく降参してくれないか、エル」


 レンファンの姿に、エルは長棒を手から落とした。


「成程ね、あんたが『予知』して待ち伏せてたって訳か」


 クーアの女神官は、それににこりと笑ってみせた。


「あぁ、そういう事だ」


お約束展開です(==+

そんな訳で、次回はまたセイネリアサイドのお話。

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