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黒の主  作者: 沙々音 凛
第八章:冒険者の章六
304/1203

47・侵入2

「そっか、そりゃよかった。で、どこ行けばいいのか当たりとかついてンのか?」


 セイネリアの居場所としてこの場所を突き止めて来たのだから、当然もっと詳しく彼がどこにいるか分かっているのだろうと思って聞いたのだが……答えは予想に反したものだった。


「いえ、まったく」

「だーー……」


 思わずその場で盛大にコケてしまったエルだったが、魔法使いは気にした風もなくのんびり笑って言ってきた。


「でも問題ありません、引かれ石を出してみてください」

「あー……あ、そっか」


 今度は別の意味でエルは間の抜けた声を上げて、急いで懐から引かれ石を出す。確かに石は建物の中を指して光っていた。


「とりあえずは石が指す場所を確認しながら小刻みに移動して行きましょう」


 言いながら魔法使いは地面に杖で輪を書いて行く。


「なんだ、地面でいいなら何処でも穴なんて開けられるじゃねぇか」


 今まで魔法使いが何処かへ移動する為、固定した場所に穴を作る場合、主に建物や塀といった壁へ開ける事が多かった。矢を防ぐためなら確かに地面に開けても無意味だが、地面を使えるなら開ける場所に困らない。実質媒体となる『モノ』がなくてもいいじゃないかとエルは思った。

 だが、詠唱を唱えて囲んだ場所が光って穴があくと、魔法使いはのんびりと声を掛けてきた。


「それでは行きましょう、あ、向こうに出る時は十分注意してくださいね」


――何を注意しろって? 敵さんがいるかもしれないとか……。


 考えながら穴に足を踏み入れたエルは、向う側で足の置き場がなくて――そのまま文字通り落ちた、しかも思わぬ方向へ。


「ででで、でっ」


 別に深い穴の下へと落ちた訳ではない、横へと落ちたのだ。つまるところ入ったのは下へだが、出て来たのは壁という横に開いた穴だった為、重力の方向が切り替わってエルは壁から床へと落ちたのである。

 見上げれば壁の穴からエーリジャの足が出て来たから、エルは焦って起き上がって逃げた。ただ、彼はエルよりも慎重だったらしく、片足だけがそうっと伸びて出て来たかと思うと、次の瞬間には全身が出て来てきちんと床に着地した。


「あー……そうやりゃいい訳ね」


 呟けば、エーリジャはエルの事情を全部理解したらしく立ち上がって笑ってくれた。


「エルがちゃんとフロスの話を最後まで聞かなかったのが敗因だと思うけどね」

「そりゃー悪ぅござんしたねっ」


 どうやら自分が入った後で、あの魔法使いは方向が切り替わる事を説明したらしい。早く言えよと思いつつも口に出さないのは、自分が聞くより先に入ったという自覚はあるからだ。


「こうなって面倒なので、下方面に穴をあけたくはないんですよ。今回はへたに移動したくなかったですから仕方なかったですが」


 流石に魔法使いは慣れた様子で着地すると、エルの表情から結果を予想したらしくそう言ってくる。


「あぁはいはい、今回は仕方ねぇよな、気を付けなかった俺が悪ィってことでもう終わりにしてくれ」


 こうなればもうやけくそ気味でそう返して、エルは頭を切り替える為に周囲に注意を向けた。

 とりあえず、屋敷の中な事は間違いない。廊下のようだが窓ははなく、等間隔にあるランプ台だけが周囲を照らす明かりの全てだった。廊下の先は片方は暗くて、片方はどうやら階段になっていて下に行けるらしい。

 魔法使いが事前に確認したからというのもあるだろうが辺りに人の姿はなく、かといってわざわざランプ台を設置してあるんだから人が滅多に通らない場所という事もないだろう。


「石はどちらを指してます?」


 聞かれてエルはそうだったと思いだして引かれ石を取り出した。


「あー……向う、かな?」


 残念ながら廊下のどちらかの方向を指しているものではなく、壁側の方を指している。ただ光り方が妙に中間方面に伸びている気もした。



すいません、中間部分のせいかエルが一人でコケて突っ込んでるだけで終わった気がします(==;

このシーンは次回まで。

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