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黒の主  作者: 沙々音 凛
第八章:冒険者の章六
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39・兵士達1

「せめて力を見たいなら、正気の連中をぶつけて欲しいんだがな」


 言いながら立ち上がれば、一番近くにいた男が急に襲ってきてセイネリアはその剣を受けてから腹を思い切り蹴ってふっ飛ばした。


「でないと、殺す訳にいかないじゃないか」


 倒れたまま動かない男に近づき足で軽く蹴り転がせば、男は呻いたまま起き上がらない。起き上がられても面倒だからあまり加減をしなかったが、死にはしないだろうと判断して直後、後ろから襲ってきた男の剣をしゃがんで避け、そのまま足を引っかけて倒す、だが。


――この間の連中と同じような術が掛かっているのか。


 ただ倒しただけ、その程度でも倒れて動かなくなった相手を見てセイネリアはそう考えた。つまるところ、前回の連中のように暗示が解けるような衝撃を受けたら気を失え、という暗示がこちらを襲う暗示とセットで掛かっているという事だ。

 試しに次に剣を振り上げてきた男の横に回って、今度は加減して蹴り転がしてみると、やはり男は動かなくなってセイネリアは呆れる。


「これで力を見せてみろはないだろ」


 術が解けるくらいの衝撃を受ければ倒れる、それが分かってしまえば手ごたえがないどころではない。今度はまとめて剣を突きだしてきた3人を避け、その内の一人の後ろに回り込んで柄で殴る。男の体が崩れていくのを認めてすぐその場を離れれば、その場にまた三本の剣が突き刺さった。

 下がると同時に、セイネリアはマントの裾を持つと連中に向けて派手にぶん回す。声が上がって、こちらの後ろへ回り込もうとしていた連中が怯んだのを見てしゃがみ、二人一遍に足を引っ掛ければそいつらも倒れたあと動かなくなる。ただそこへまたやってきた剣は、避ければ倒れた連中に行きそうだったから仕方なく剣で受けてそのまま力ずくで弾き飛ばした。


 セイネリアは舌打ちをしながら立ち上がる――いくら雑魚でもこれだけ多いと面倒だ。


 この連中は基本が皆同じ格好だから同じ何処かの兵である事は確定だろう。シシェーレの兵だとは思うが街の紋章も兵の恰好も知らないから確定までは出来ないし、彼らが操られている事情もハッキリしていない。とりあえず今言えるのは何も考えず殺せば後でどんな面倒事になるか分からないという事で、殺したら『無かった事』にするのが無理な段階で慎重にならざるを得ない。

 勿論こちらの命にかかわる状態なら殺すが――この人数でも死ぬ気がしない程度の連中だからこそ、面倒だが生かす方向で戦うしかなかった。


 そこで4人、一斉に飛びかかってきた連中は、一番弱そうな者に向かいつつまたマントで振り払う。このマントがやたら大きく前止めで腕を隠しているのは当然腕の動きを見せないためだが、重いのはこういう使い道のためでもある。目の前の兵はすれ違い様に腹を柄で殴りつけ、もう一度マントを大きく広げるよう払ってから振り返って一番近い男の背後に回って頭を殴りつけた。


 殺していいなら槍を呼べばこんな雑魚は即かたづけられるが、そういう訳にいかないなら地道に倒していくしかない。殴るか蹴るかが必要だからどうしても相手の懐に入る必要があって、折角の剣のリーチを使えないのが面倒だった。


――こういう時、エルの武器なら楽なんだろうがな。


 アレなら纏めて数人単位で吹っ飛ばせる。実際あの高台の連中を迎え撃った時はエルが一番倒した人数が多かった。

 薄暗くて見えていなかったが思った以上に人数がいたらしく、一発で倒れてくれるとはいえさすがにセイネリアも休む間がない。


「くそっ」


 9人目を転がしたところで、開いた人の壁をセイネリアは突っ切るとそのまま走って最初の場所から距離を取る。そうすればわらわらと集まっていた連中の一部はセイネリアの姿を見失い、その辺りをうろうろし始める。セイネリアが見えていた連中は当然追いかけてきているが、その足はそこまで速くないからこちらも息を整えるくらいの時間が稼げそうだった。


このわらわら兵士さんとの戦闘自体は次回まで、かな。


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