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黒の主  作者: 沙々音 凛
第八章:冒険者の章六
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32・気になる事

 ただ一つ、これも聞きはしなかったが魔法使い達の行動で気になった事があった。


 魔法使い達は例の操られた連中を連れて行く時、意識のない者はそのまま、意識のあるものは術で気絶させてから一か所に集めて転送で一気に連れて行ったのだが……運ぶ前に腕や足等、袖をまくってまで何かを探していたように見えた。


 女魔法使いが『お守り』として渡していたという例の石を探していたなら足や腕を見るとは思い難い。だから別の何かだとは思うが、こちらに何も聞いてこない時点で言う気がないという事だろう。

 今回の件で、基本的に魔法使いは信用していいとセイネリアは判断している。ただ彼らには『言えない事』が多々あって、知っていれば有利になるだろう情報も明かされない可能性は高い。その分彼らの態度や行動に注意しておいてこちらで自衛するしかない。


――何かを隠している、と言ってもそれは最初から分かっている事ではあるしな。


 ムカつきはするが依頼主は彼らで彼らの目的の為に動いている以上、基本は彼らの意向道りに動くだけだ。こちらとしては隠し事をするメリットがない段階で、この件について分かった事は彼らに全部言っている。

 だから当然こちらで推測した流れも話してあるので、連れて行った連中――特に追加で直接指示を与えられたと思われる者と警備隊員は向うで念入りに調べてはくれるだろう。何も手がかりがなかった時分からすれば、これだけの手がかりになりそうな材料を確保させてやったんだからいい加減何か掴めと言いたいところだ。

 とりあえずは現在、ここに残っている魔法使い連中は現場を調べている最中で、それについての話はセイネリアだけが聞くという事になっていた。魔法使いとしては魔槍の主であるセイネリアと、それ以外の者達では話せる範囲が違う。それは最初から言ってあるから、エルとエーリジャには納得して離れて待機してもらっていた。


「もし、最後の光石を投げたのも術士本人だとすれば、カリンかレンファンを連れて一緒に落ちたのが本人かもしれないな」


 セイネリアの見たところでは、カリンが落ちた後から光石が投げられるまで、他に飛び降りた者は見当たらなかった。それを聞いた途端、魔法使い達の顔色が変わる。


「それは、女でしたか?」


 すかさず聞かれてセイネリアは眉を寄せた。


「あぁ、どちらも女だったとは思う」


 フロスと、今術を使っていた魔法使いが顔を見合わせてため息をついた。


「魔女だな」

「あぁ、おそらく」


 互いに呟いた声は小さく、セイネリアは聞き返した。

 ここでさらっと出てくる程度の単語なら、聞いても答えるだろうという判断だ。


「魔女とはどういう意味だ?」


 一般的に、魔法使いの女を魔女とは言わない。女魔法使い、もしくは女術士と呼ぶ。魔女というのは子供に聞かせる昔話や、詩人の歌に出てくる悪い魔法使いの事で基本は蔑称だ。


「魔法使いには独自のルールがあります。そのルールを破った者――その中でも禁忌を犯した者を『魔女』と呼ぶのですよ」

「何故『魔女』と女確定なんだ」

「男の場合でも『魔女』と呼ぶんです。……ただ『魔女』になるのは圧倒的に女性が多いためそう呼ばれるようになっただけです」


 セイネリアがそれに不快そうに眉を寄せれば、フロスが肩を竦めて言ってくる。


「その理由は貴方になら教えられない程ではないのですが……今はそれより優先すべき事があると思いませんか?」

「……そうだな」


 カリンとレンファンが連れ去られた時点で、セイネリアも時間が惜しい。女を狙っていると言っても予想通り下僕にするつもりなら、すぐに命が危険、という事はないだろう。ただ時間が経てば経つ程不味い事態になるのは確実だった。


「それで、その残留魔力から何か分かった事はあったのか?」


 魔法使いは首を振った。


次回はこのシーンの続きと、カリンの様子をまたちょっとだけ。

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