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黒の主  作者: 沙々音 凛
第八章:冒険者の章六
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20・何者だ

 広げたマントの範囲外では矢が飛んで来て実際刺さっているから、偶然矢が来ないのではなく矢がこのマントにあけられた穴から異空間へと飛ばされてしまったのだと分かる。

 向こうは何かおかしいと分かっているのかいないのか、構わずどんどん矢を放ってきている。こちらはマントの後ろ――正確にはマントを支えているエルの後ろに固まって様子を伺っていた。ただセイネリアとエーリジャだけはマントの左右端に陣取って、弓を構えつつも時折顔を少しだしては矢が飛んでくる方向を見ていた。


「かなり遠いな」


 セイネリアは舌打ちをした。この距離ではセイネリアの弓では届かない。


「そうだね、しかも結構高い位置から撃ってきてる。腕も悪くない」


 エーリジャは弓を構えて狙いをつけていたが、相手の居場所が相当に撃ち難いのもあってそうそうに矢を放たない。

 矢のくるペースを見れば、向うの射手は3人はいると見ていいだろう。

 向うがどれだけ矢を用意しているかはわからないが、このままだと向うが撃つのを止めるまで身動きが取れず、何も出来ないのは確かだった。


「エーリジャ、例の光石付きの矢はあるか?」


 ふと思い立ってセイネリアが聞く。


「あぁ、あるけど。彼らの姿が見えたからといっても……」


 ワネル家パーティの仕事で使った照明代わりの光石付きの矢。だが今回は、明るくする程度のハンパな光石では意味がない。


「リパの光石がついたのは?」

「あぁ……一本だけ」


 エーリジャはまだ意図が分かっていなかった。


「ならそれを奴らのところへ撃ち込め。奴らに当てなくてもいいが傍にある何かに当てろ、そこで石が光ればいいだけだ」


 そこまで言えば彼も理解する。ははっと軽く彼は笑って、それから目的の矢を取ろうと指で矢筒を探った。


「確かに、当てるより余程効果的だね」


 エーリジャがマントの影から弓を構えた。そうして敵の矢が途切れるタイミングを見計らい、放つと同時にマントの中に隠れる。同じくセイネリアもマントの中に隠れた。

 敵のいる方向から、白い光が辺りを照らす。同時に遠くで数人の悲鳴が聞こえた。

 こちらはセイネリアのマントが黒かったことも幸いして、丁度良い光避けになって全員光を見ずに済んだ。


「……こんなの、普通想定してないよなぁ。血も流れないしいい手だね」


 エーリジャが笑いながらこちらの顔を見て言ってきたから、セイネリアも笑みを返した。

 こちらを狙う事に集中していた連中は、まさか自分たちのすぐ傍で目を潰す程の光が弾けるなんて想像してもいないだろう。予想通りその後からこちらに向かってくる矢はなくなって、マントの裾からセイネリアは飛び出した。

 すぐにレンファンもそれに続く。

 それでもやはり矢が飛んでくる事はなかった。どうやら射手は全員、うまく光で目をやられてくれたらしい。


 マントに隠れていた時に彼らの居場所にあたりはつけてあったから、セイネリアはそれに向かって走る。時折レンファンが後ろから道順を示す声を上げてきたから、それに従っていけば行き止まりにぶつかる事もなく、最短距離で向かう事が出来た。

 彼らが未だに同じ場所にいるかまでは分からなかったが、こちらとしては急いで行ってみるしか手はない。既にいなくても何か手がかりを残していてくれれば成果はある。


 老朽化して誰も住んでいないだろう建物を駆けあがって、窓から彼らのいただろう向かいの家の屋根に飛び降りる。まぬけな事に未だにもがいている連中を見つけて、セイネリアは剣を抜いた。


「さて、お前達は何者だ。何故、俺たちを狙った」


 だが、目を抑えながらやっとの事でこちらを見た男は、つきつけられた剣に向かって怯えながら言ったのだ。


「何言ってる……お前達こそ、何者だ?」


 セイネリアは思わずレンファンと顔を見合わせた。


次回は場面変わってまた酒場。

魔法使いからちょいっと情報が。


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